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そのきゅうじゅうはち
サキト様、ハトに完敗する
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放課後。
またもや校舎前に横付けされた真っ白なリムジンから、これもまた真っ白い制服に身を包んだ美少年が軽やかに降りてきた。
「ふふ。今日こそスティレンを奪ってあげるんだからね。あの子に相応しい真っ赤な薔薇も持ってきたし」
鬱陶しいとあしらわれたり、いい加減しつこいと罵られようとも、シャンクレイス学院の生徒会長のサキトは決して諦めない。やめろと言われて、はいそうですかなんて言う性格ではないのだ。
とにかく自分が欲しいと思ったものはどんな手段を使ってでも手に入れなければ気が済まない。
「さ、サキト様」
「ん?なあに、クロスレイ」
彼の後を追うようにして、運転手兼ボディーガードの大男は車から降りるなり自信無さそうな顔で「仰る通りにまたここに来ましたが…」と前置きする。
「この学校に来るたびに、必ずハトにフンを引っ掛けられてしまいます、車に」
「ハト?飼ってるのかな、学校で」
「さあ…」
「ま、庶民レベルの場所なら仕方無いだろうね。僕達みたいに見目麗しく由緒正しい育ちの選ばれた人間には、こんな辛気臭い学校は似合わないのさ。だから今日こそスティレンを連れ戻して、僕の玩具として躾けてあげないと!」
甘すぎるマスクからは想像もつかない過激な言葉を放ちながら、サキトは鼻息を荒くスティレンを待つ。
余程好きなのだろう。主人の張り切りっぷりを受け、クロスレイは「はあ」と溜息を吐いた。
下校する生徒達はあまりにも目立つ二人をちらっと見ては何なんだろうと口々に言い合っている。
「ふう…そんなに珍しいものなのかな。これだから庶民は困るよ。普段僕の美貌を見慣れない可哀想な人達なのは心から同情しちゃうけどね」
純粋にそう思っているのかもしれないが、彼の口振りは聞き手側にとっては心底馬鹿にしていそうな印象にも受け取れる。
生まれながら恵まれた環境に置かれてきたので、それは仕方が無いのかもしれない。
初っ端から見下す性質の為か、サキトには友達らしいものは今まで出来た事が無かったのだ。それなのに、スティレンに関しては自ら欲しいと願っている。
彼の事になれば、サキトはほわあっと頰をピンクに染めながら自分勝手な妄想をしてしまうのだ。嫌がる彼を自分の部屋に閉じ込めて悪戯をしたい、とか彼の顔に爬虫類の顔面を近付けてみたいとか、ぬるぬるしたローションを体に塗りつけてみたいとか、どう考えてもおかしい欲求をクロスレイに訴えてくる。
それを聞かされても自分にはどうする事も出来ないから、せめて主人が命ずるままアストレーゼン学園まで車を走らせているのだ。
ハトにフンを飛ばされようとも。
ただ、今回はなかなか目的の少年が姿を見せない。あまりにも来ないので、今日は休みなのかなあと困った顔をした。
「もう、スティレンったら。そんなにまで僕といやらしい事をしたくないってのー?待ちくたびれちゃうんだけど!」
柔らかそうな頰をぷくーっと膨らませていると、校舎の奥から変な音が聞こえてきた。
大量の羽音。
サキトは「え?何?」と眉を寄せていると、同時に悲鳴紛いの叫び声が響く。
「うわあああ!!何だこいつら!?近寄るな!!」
「わあああ!大丈夫ですか先輩!!先輩!!」
「大丈夫なものか!邪魔だ、寄るなああ!痛いっ、突くな!!何だよこのハトは!!」
…ハト?
サキトはやけに黒みがかっている塊がこちらに向かってやってくるのに気付くとじっと目を凝らしてみる。そしてそれが何なのかを理解すると、ええっと声を上げていた。
リシェが何故か大量のハトに攻撃されている。
それは塊となり、彼が進むと同時にハトも移動していた。
「うわああああいやだああああ」
「せ、先輩!?もしかしてパンとか持ってないですか!?食べられそうなやつを嗅ぎ付けてきたのかもしれない!」
「あ!?ぱ、パン!?食えなかったパンが」
「それだ!先輩、パンを離して下さい!!」
ハトに懐かれているリシェと、彼を追いかけるラスは校舎前に停めたリムジンの前を通過する。同時にハトの大群も。
とにかくハト臭い。
「もう、あっちに行け!!」
リシェが鞄の中から食べかけだったパンを放った。
「ああ!!は、ハト!!」
同時にクロスレイが悲鳴を上げる。リシェが放ったパンはリムジンのボンネットにぽふんと落下し、それ目掛けてハト達が群がってしまった。
カツンカツンカツン!!ゴン、ゴン!と金属を激しく突く音が周囲に響いた。
「サキト様!ハトが私達の車に!!」
「えええ…嘘ぉお」
慌てたクロスレイはボンネット上のパンを払い退けると、ハトは一斉に車から離れる。しかし数羽はボンネットを突いていた。
「サキト様、日を改めましょう!今日はいけませんよ、車が危険です!」
もう…!とサキトは悔しそうに指の爪を噛むと、仕方無いねと了承した。
まさかのハト攻撃。
だから田舎の庶民が入るような学校は嫌なんだ、と彼はリムジンの後部座席に戻る。
…この僕がハトごときで退散するなんて!
苛々と悔しさを滲ませる。
次は絶対スティレンを奪うんだからね!とクロスレイに怒鳴っていた。
またもや校舎前に横付けされた真っ白なリムジンから、これもまた真っ白い制服に身を包んだ美少年が軽やかに降りてきた。
「ふふ。今日こそスティレンを奪ってあげるんだからね。あの子に相応しい真っ赤な薔薇も持ってきたし」
鬱陶しいとあしらわれたり、いい加減しつこいと罵られようとも、シャンクレイス学院の生徒会長のサキトは決して諦めない。やめろと言われて、はいそうですかなんて言う性格ではないのだ。
とにかく自分が欲しいと思ったものはどんな手段を使ってでも手に入れなければ気が済まない。
「さ、サキト様」
「ん?なあに、クロスレイ」
彼の後を追うようにして、運転手兼ボディーガードの大男は車から降りるなり自信無さそうな顔で「仰る通りにまたここに来ましたが…」と前置きする。
「この学校に来るたびに、必ずハトにフンを引っ掛けられてしまいます、車に」
「ハト?飼ってるのかな、学校で」
「さあ…」
「ま、庶民レベルの場所なら仕方無いだろうね。僕達みたいに見目麗しく由緒正しい育ちの選ばれた人間には、こんな辛気臭い学校は似合わないのさ。だから今日こそスティレンを連れ戻して、僕の玩具として躾けてあげないと!」
甘すぎるマスクからは想像もつかない過激な言葉を放ちながら、サキトは鼻息を荒くスティレンを待つ。
余程好きなのだろう。主人の張り切りっぷりを受け、クロスレイは「はあ」と溜息を吐いた。
下校する生徒達はあまりにも目立つ二人をちらっと見ては何なんだろうと口々に言い合っている。
「ふう…そんなに珍しいものなのかな。これだから庶民は困るよ。普段僕の美貌を見慣れない可哀想な人達なのは心から同情しちゃうけどね」
純粋にそう思っているのかもしれないが、彼の口振りは聞き手側にとっては心底馬鹿にしていそうな印象にも受け取れる。
生まれながら恵まれた環境に置かれてきたので、それは仕方が無いのかもしれない。
初っ端から見下す性質の為か、サキトには友達らしいものは今まで出来た事が無かったのだ。それなのに、スティレンに関しては自ら欲しいと願っている。
彼の事になれば、サキトはほわあっと頰をピンクに染めながら自分勝手な妄想をしてしまうのだ。嫌がる彼を自分の部屋に閉じ込めて悪戯をしたい、とか彼の顔に爬虫類の顔面を近付けてみたいとか、ぬるぬるしたローションを体に塗りつけてみたいとか、どう考えてもおかしい欲求をクロスレイに訴えてくる。
それを聞かされても自分にはどうする事も出来ないから、せめて主人が命ずるままアストレーゼン学園まで車を走らせているのだ。
ハトにフンを飛ばされようとも。
ただ、今回はなかなか目的の少年が姿を見せない。あまりにも来ないので、今日は休みなのかなあと困った顔をした。
「もう、スティレンったら。そんなにまで僕といやらしい事をしたくないってのー?待ちくたびれちゃうんだけど!」
柔らかそうな頰をぷくーっと膨らませていると、校舎の奥から変な音が聞こえてきた。
大量の羽音。
サキトは「え?何?」と眉を寄せていると、同時に悲鳴紛いの叫び声が響く。
「うわあああ!!何だこいつら!?近寄るな!!」
「わあああ!大丈夫ですか先輩!!先輩!!」
「大丈夫なものか!邪魔だ、寄るなああ!痛いっ、突くな!!何だよこのハトは!!」
…ハト?
サキトはやけに黒みがかっている塊がこちらに向かってやってくるのに気付くとじっと目を凝らしてみる。そしてそれが何なのかを理解すると、ええっと声を上げていた。
リシェが何故か大量のハトに攻撃されている。
それは塊となり、彼が進むと同時にハトも移動していた。
「うわああああいやだああああ」
「せ、先輩!?もしかしてパンとか持ってないですか!?食べられそうなやつを嗅ぎ付けてきたのかもしれない!」
「あ!?ぱ、パン!?食えなかったパンが」
「それだ!先輩、パンを離して下さい!!」
ハトに懐かれているリシェと、彼を追いかけるラスは校舎前に停めたリムジンの前を通過する。同時にハトの大群も。
とにかくハト臭い。
「もう、あっちに行け!!」
リシェが鞄の中から食べかけだったパンを放った。
「ああ!!は、ハト!!」
同時にクロスレイが悲鳴を上げる。リシェが放ったパンはリムジンのボンネットにぽふんと落下し、それ目掛けてハト達が群がってしまった。
カツンカツンカツン!!ゴン、ゴン!と金属を激しく突く音が周囲に響いた。
「サキト様!ハトが私達の車に!!」
「えええ…嘘ぉお」
慌てたクロスレイはボンネット上のパンを払い退けると、ハトは一斉に車から離れる。しかし数羽はボンネットを突いていた。
「サキト様、日を改めましょう!今日はいけませんよ、車が危険です!」
もう…!とサキトは悔しそうに指の爪を噛むと、仕方無いねと了承した。
まさかのハト攻撃。
だから田舎の庶民が入るような学校は嫌なんだ、と彼はリムジンの後部座席に戻る。
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