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そのななじゅうろく
肥大化
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図書室で調べ物をしているオーギュスティンは、書物に夢中になる余り周囲の変化に全く気付かなかった。その為にいきなり隣の席に着いた人物に話しかけられ、つい「うわ!」と飛び退きそうになってしまう。
「そ、そこまで驚く事かい?オーギュスティン先生」
「いつの間にそこに居たんです」
驚かれたカティルはいつもの笑顔を向けながら今さっきだよと戯けるように言った。
「相当集中するタイプなんだねえ」
そう言いながら、彼はオーギュスティンが開いている分厚い書物に目を向けた。
「何を調べているのかな?」
「ああ、これですか?室内で育てられる植物を探しているんですよ」
彼の手元には観葉植物の図鑑が広げられていた。
へえ、とカティルはそれを覗き込む。様々な種類の植物が写真やイラスト入りで解説されていた。生徒向けの書物だが、その分詳しく記されているようだ。
「何でまた植物を?」
「ペットもいいなと思っていたんですけど、帰宅が遅かったりするので可哀想かなと…それなら植物の方が育てやすいかもしれないと思いまして」
「ははぁ…なるほど。それがいい。大きな角が生えた巨大な魔物を飼うよりは大人しい植物の方が落ち着いて育てられそうですからね」
理解を示してくれるが、カティルの例え方が良く分からないオーギュスティンは眉を寄せて首を傾げた。
「何の話ですか?」
「いやいや…何となく思い浮かんだだけさ。でも植物はとてもいいと思うよ」
「部屋に緑色があればいいなとも思いましたし」
まぁ、確かに…と頷く。
その後もオーギュスティンは読み物を続けた。
「ああ、そうだ」
「?」
「君がお勧めしていたアロエ、順調に育っているよ」
「そうなんですか。良かったですね」
勧めた記憶はあまり無いのだが、彼の為になっているのなら良かった。枯らす事無く育っているのなら何も言う事は無い。
「でもねえ、順調に育ち過ぎてね」
「はあ」
「部屋の天井にまで届く勢いなんだ。あれ、どうにかならないものかなぁ…思った以上に育ってしまって」
ええ…とオーギュスティンは困惑し、書物から目を離した。
そんなにまで育っているとは想像もしなかった。育てる事を勧めてしまった自分にも責任があるのではと思ってしまう。
「そこまでいけるものなんですか?」
「いやぁ、こっちも巨大化するとは思わなくて。良く育てって思って抜群にいい肥料をあげてしまったのも問題だったのかもしれないなぁ」
そう言いながら、彼は自分の携帯電話を出して中に入っている写真を探し始める。
撮ってるのか…とオーギュスティンはその画像を出してくるのを待っていると、ようやく「これだよ、これ」と画像を出してきた。
それを覗き込んだ瞬間、うわ!と悲鳴を漏らす。
何の変哲も無い窓辺に置かれているアロエの鉢植えだったが、カティルが言うように窓の半分を隠しそうな勢いで巨大化していた。
葉も分厚く、太くなっているのが気になる。
それを見た瞬間思わず「はぁ!?」と叫んでしまった。
「育ち過ぎじゃないですか!!」
困惑気味に慌てるオーギュスティン。
いくらなんでもここまで凄い状態になっているとは思わなかった。下手すれば天井をぶち抜いてしまう恐れもあるかもしれない。育て方が間違っていたのか、それとも元々そういう種類の物だったのか。
最初は小さな鉢植え程度だと思っていたのだが、育ち過ぎてしまうのも良し悪しかもしれない。
「そうかぁ…やっぱりそうだよねえ…参ったなぁ」
どうしようかなー、と呑気に言うカティル。
「こればかりは私にもどうしたらいいのか分かりませんよ。…それにしてもここまで育つものなんですねぇ…」
大きくなるにしても程があるだろうに。
これから観葉植物を買おうかと悩んでいるオーギュスティンだったが、ある意味失敗例を見せつけられている気持ちに陥ってしまった。
「そ、そこまで驚く事かい?オーギュスティン先生」
「いつの間にそこに居たんです」
驚かれたカティルはいつもの笑顔を向けながら今さっきだよと戯けるように言った。
「相当集中するタイプなんだねえ」
そう言いながら、彼はオーギュスティンが開いている分厚い書物に目を向けた。
「何を調べているのかな?」
「ああ、これですか?室内で育てられる植物を探しているんですよ」
彼の手元には観葉植物の図鑑が広げられていた。
へえ、とカティルはそれを覗き込む。様々な種類の植物が写真やイラスト入りで解説されていた。生徒向けの書物だが、その分詳しく記されているようだ。
「何でまた植物を?」
「ペットもいいなと思っていたんですけど、帰宅が遅かったりするので可哀想かなと…それなら植物の方が育てやすいかもしれないと思いまして」
「ははぁ…なるほど。それがいい。大きな角が生えた巨大な魔物を飼うよりは大人しい植物の方が落ち着いて育てられそうですからね」
理解を示してくれるが、カティルの例え方が良く分からないオーギュスティンは眉を寄せて首を傾げた。
「何の話ですか?」
「いやいや…何となく思い浮かんだだけさ。でも植物はとてもいいと思うよ」
「部屋に緑色があればいいなとも思いましたし」
まぁ、確かに…と頷く。
その後もオーギュスティンは読み物を続けた。
「ああ、そうだ」
「?」
「君がお勧めしていたアロエ、順調に育っているよ」
「そうなんですか。良かったですね」
勧めた記憶はあまり無いのだが、彼の為になっているのなら良かった。枯らす事無く育っているのなら何も言う事は無い。
「でもねえ、順調に育ち過ぎてね」
「はあ」
「部屋の天井にまで届く勢いなんだ。あれ、どうにかならないものかなぁ…思った以上に育ってしまって」
ええ…とオーギュスティンは困惑し、書物から目を離した。
そんなにまで育っているとは想像もしなかった。育てる事を勧めてしまった自分にも責任があるのではと思ってしまう。
「そこまでいけるものなんですか?」
「いやぁ、こっちも巨大化するとは思わなくて。良く育てって思って抜群にいい肥料をあげてしまったのも問題だったのかもしれないなぁ」
そう言いながら、彼は自分の携帯電話を出して中に入っている写真を探し始める。
撮ってるのか…とオーギュスティンはその画像を出してくるのを待っていると、ようやく「これだよ、これ」と画像を出してきた。
それを覗き込んだ瞬間、うわ!と悲鳴を漏らす。
何の変哲も無い窓辺に置かれているアロエの鉢植えだったが、カティルが言うように窓の半分を隠しそうな勢いで巨大化していた。
葉も分厚く、太くなっているのが気になる。
それを見た瞬間思わず「はぁ!?」と叫んでしまった。
「育ち過ぎじゃないですか!!」
困惑気味に慌てるオーギュスティン。
いくらなんでもここまで凄い状態になっているとは思わなかった。下手すれば天井をぶち抜いてしまう恐れもあるかもしれない。育て方が間違っていたのか、それとも元々そういう種類の物だったのか。
最初は小さな鉢植え程度だと思っていたのだが、育ち過ぎてしまうのも良し悪しかもしれない。
「そうかぁ…やっぱりそうだよねえ…参ったなぁ」
どうしようかなー、と呑気に言うカティル。
「こればかりは私にもどうしたらいいのか分かりませんよ。…それにしてもここまで育つものなんですねぇ…」
大きくなるにしても程があるだろうに。
これから観葉植物を買おうかと悩んでいるオーギュスティンだったが、ある意味失敗例を見せつけられている気持ちに陥ってしまった。
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