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【2】私
(16)その道
しおりを挟む夏休みも終盤に私は学校までの道のりを歩いた。
祖母に聞けば学校までは一本道らしいのだが距離はあると言っていた。
自然溢れ山があり人情溢れるその土地は
空気は美味しいがなんせずっと同じ風景だ。
少し見飽きる。
夏の夕方に流れる風が私は好きだ。
心地よい温度の時やジメジメした温度の時もあるけれど開放感は冬とは桁違い。
冬生まれの私が夏の風を心地よく感じるのは当然だ。誰しも自分と真逆のものを求め、自分と同じ物を身近に置く。
どんなに否定した所でその断りは変わることなく私たちにつきまとう。
そう考えながら私は学校へ向かっていた足を止め立ち止まりバス停のベンチへ腰掛ける。
随分と歩いたけど祖母の言った通り路はかなり長いらしい。
陽の光がある内に家を出たが
今はもう薄暗く夕陽が山へと埋まる。
来る前は空を見上げることも
夕陽を眺めることもしていなかった私が、やることがないからとこんなことをしている。
『一生ここにいるのかな...』
不意に吐いたその言葉は薄暗い雲の上を通過して行った。
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