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真・らぶ・TRY・あんぐる 十六
しおりを挟む「佑くん、具合はもう大丈夫?」
普段着の上にガウンを羽織り、居間へやってきた息子にそう声をかける佑美。
自分で呼びつけておいて今さら『大丈夫?』もないものだが、母の性格をよく解っている佑は文句を言えない。
というよりも、留美が見舞いに来たことで戦々恐々とした心境だったのでそれを気にするどころではないのだった。
「う、うん……なんとか」
いつも以上に弱々しい声だ。
余談だが、
留美が観察(といって失礼ならウオッチング)したところによると、佑の母・佑美と妹・冴英はよく似ていた。
留美は綺麗な人やモノ、可愛い人やモノを見るのが結構好きなのだ。
世間一般の意見からすると
『じゃ、なんで佑を?』
という疑問が湧き上がるのだが、ま、それはおいておこう。
で、父・英介はやっぱり佑に似ていた。 親子だから当たり前である。
それなりに違うところもあった。
おそらくは『年の功』というやつだろうが、佑よりかなり落ち着きがあり、自信も溢れているほどでないにせよ、あるように見えたのだ。
黒縁の眼鏡をかけ、微笑んでいるためもあったかもしれない。
しかし、よく考えてみると、佑は留美と付き合い出してから笑ったことはおろか微笑んだことすらない。
少なくとも、留美の前では。
もともとそれほど朗らかな方ではないが、そろそろ2ヶ月になるのである。 いいかげん変だと普通なら思うのだろうが、留美は佑が照れているだけなのだと解釈していた。
それもある意味において完全な間違いではなかったが、もちろん佑は心の大部分で葛藤していたのである。
それでも、やはり見舞いに来てくれたお礼を言わなくてはと思い、
「留美ちゃん、あ、ありがとう。 お見舞いに来てくれたんだよね?」
「うん!」
にっこりと微笑む留美に、自分の部屋で『家族には何も言わないで』というお願いをしようと考え
「じゃあちょっと僕の部屋へ」
そう言って二階を指さす。 だがその言葉に冴英が抗議した。
「なぁに? せっかく留美お姉さんと冴英、仲良くなったのにもう連れてっちゃうわけ?」
「え……? う、うん……」
「何よ? なんか二人だけで内密の話でもあるの?」
妹の問いに、頭痛を感じながら
「冴英にはまだわからないよ……」
そう言うと、冴英が血相を変えた。 立ち上がって大きな声を出す。
「どーいうことよ! それ!」
そこへ佑美が口をはさんだ。
「待ちなさい、佑くん」
留美は反射的に、佑美が冴英をたしなめるのか、と予想したがその予想は見事はずれた。
「今の言葉は許せないわ。 冴英にお謝りなさい。 男なんだから」
……ちょっと待て。
『お兄さんなんだから』とか『年上なんだから』とか言うのならまだ解らないでもないが、『男なんだから』と言われるのはいくらなんでも納得がいかないだろう。
だが、佑は納得してしまった。
それが、環境の故か、教育の賜物かはわからない。
「あ、ああ……ごめんね、冴英……」
「分かればいいのよ、分かれば」
弱々しく謝る佑にそう言ったのは佑美ではない。 冴英である。
彼女は母の影響と佑の情けなさとで男を見下している部分があるのだ。 まだ小学6年生だというのに末恐ろしいと言うか末頼もしいというか……。
もちろん、両親は『末頼もしい』と思っているのだった。
留美は、佑の引っ込み思案で消極的な性格がいかに形成されたかわかったような気がした。
が、そんなことはおくびにも出さず微笑んでいた。
別に悪気があってのことではない。 なんとなく『家族のやりとり』というものが微笑ましく、またうらやましかったからである。
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