『真・らぶ・TRY・あんぐる』

倉智せーぢ

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真・らぶ・TRY・あんぐる 十八

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佑は家族と留美の楽しそうな会話を聞きながら、状況が当事者である自分をどんどん置き去りにしていくのを感じていた。
事態に流されるのを選んだわけではなくとも、今のままではどうしようもなく抜き差しならない状況になって、なし崩しに『責任をとる』ことになってしまいそうだった。
とはいうものの……対策があるわけでもなく、さしあたり佑は手をこまねいていることしかできなかったのである。



「あの、あたしそろそろおいとまします」
「えー? まだいいでしょ?」
冴英が不満そうな声を出す。 留美はすまなそうに
「ごめんなさいね? もうこんな時間だし、家で父が心配してると思うから」
そう言うと、冴英は急ににこっと可愛らしく微笑んで
「あのね、留美お姉さん?」
「なあに?」
留美に抱きつき、上目づかいになって
「あたし留美お姉さん大好き! また遊びに来てね?」
「う、うん、あたしも冴英ちゃん好きよ。 また来るわね、お邪魔でなければ」
そういって佑の顔をちらっと見る。
「お邪魔だなんて……留美ちゃん、あたくしたちは留美ちゃんなら大歓迎よ? よろしかったらまた苺のショートケーキ、ご用意させていただくわ」
社交辞令を越えた佑美の言葉だった。
「お嬢さん、これからも佑をよろしくお願いします。 あなたのような可愛らしいお嬢さんを捕まえられたのは、我が息子のことながらとても幸運だと思いますよ」
にこにこ微笑みながらそういって軽くお辞儀をする英介。 留美は照れてほんのり頬を赤らめた。
「は、はい、ありがとうございます」
「お礼を言わなくてはならないのはこちらの方ではなくって? ね、佑くん?」
促すように佑に視線を向ける。
「う、うん……」
それは、付き合い出してから留美が初めて見る佑の笑顔だった。
ものすごく弱々しいものであったが、それでも留美は心の奥が暖かくなるように感じた。

「家まで送って差上げなさいね?」
佑は、父に車で送ってもらおうと思っていたが、母に機先を制してそう言われてしまった。
英介に目をやる佑に佑美は
「父さんはね、これからお仕事なのですって。 そうよね、英介さん?」
そう言い、小声で夫の耳元に
(野暮はおよしになってね? 覚えてらっしゃるでしょう、昔の事……こんな夜だったかしら?)
そう囁く。
すごい母親がいたものである。
留美にとっては願ったり叶ったりかもしれないが、佑にとっては……察するにあまりある。
「佑くん?」
しぶしぶながらも留美を送るために身仕度しはじめた佑に
「送り狼になんか変身しちゃいけなくってよ?」
佑美はそういって釘を刺した。 半分、いや8割がたそそのかしているようなものである。
息子の方が襲われかねないとは夢にも思っていないらしい。
いや、彼女なら
「女の子の方からならかまわなくってよ?」
とか言い出しかねないが。


「是非またいらっしゃいね?」
帰り際、輝くような笑みでそういわれた留美は有頂天だったが、そのおかげで佑の弱りきった表情に気づくどころではない。
「素敵なご家族ね」
「そ、そうかな……」
(いろんな意味で拷問にあってる気分だったけど)
と佑は思った。
その『拷問』はある意味、今現在も続いている。
事態は、一夜にして『押しかけ彼女』から『家族ぐるみのおつき合い』にまで進んでしまったのだ。
孤立無援の中、抜き差しならない状況になっていることをひしひしと感じる佑だった。
しばらく二人で歩き、留美の家からほんの百メートル程しか離れていない、人目につかないだろう暗がりまでくると留美は
「佑クン、もうここで……」
「そう? それじゃ」
帰ろうとする佑の袖のひじをつまみ、ツンツンと引っ張る。
「どうしたの? 僕、やっぱり玄関までおくろ」
うか、までは言えなかった。 留美が目を閉じて少し仰のいていたからである。
「る、留美ちゃ……」
佑とて、その姿勢が何を意味しているのかくらい分かる。
「かかかかか、風邪がうつるといけないから……」
本当は風邪ではないのである。
それに本当の風邪ならうつらないのだ。 うつるのはインフルエンザである。
「佑クンの風邪ならうつって欲しい……ううん、うつして!」
そんなこと言われても困ると言うものだ。
相手が由香でも多分佑は困っているだろうが、留美が相手ではなおさらだった。

しばらくの沈黙が続いた。

――そして、
結局、佑は沈黙に耐えきれず、留美の唇に自らのそれを触れ合わせた。
以前ディープキスを奪った留美にとっては不満が残る結果だが、それでも佑からそういうことをしてもらったのは彼女にとっては本当に嬉しかった。

佑にしてみたら半分強制されたようなものだったとはいえ、留美はそんなことを知らない。

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