『真・らぶ・TRY・あんぐる』

倉智せーぢ

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真・らぶ・TRY・あんぐる 四十一

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留美と由香は、あれから毎日佑の世話をしている。
はじめのうちは確かに恩返しのつもりだったし、それ以外の感情はほとんどなかったのだが、留美は言うまでもなく由香さえも佑の反応が楽しみになってきてしまったのは否めない。
佑は、妙に可愛らしかったのである。

でも、それが結果としてリハビリになったのだから、禍福は糾える縄の如しと言うか人間万事塞翁が馬と言うか……。
そして、楠木円が完治を予告した7日めの夜。
恒太郎がなぜか留加と一緒に育嶋家に現れ、これまたなぜか佑美と英介に深々とお辞儀をしてから留美に
「留美……戻ってきてください。 パパとママ、仲直りしましたから」
と取りすがらんばかりに訴えた後、今度は留加に向かって
「なあ、お前?」
すかさず留加が答える。
「あいよ! お前さん」

「本当に? ママ?」
「ああ、本当だよ。 みんなゆ」
「留加さん?」
佑美が唇に人差指を当てる。 『しーっ』のジェスチャーである。
「あ、あはは……、ともかく本当さ。 今まですまなかったね、留美」
「ママ……」
留美は涙ぐんでいた。
「ねえ、留美、家に帰ってきなよ? こんニャ……いやパパも大分反省しているみたいだからさ?」
何故か艶々とした肌の母にそこまで言われては留美も実家に戻るしかない。 ただ一応言質はとっておくことにした。
「うん、戻る。 でもパパ? もう佑クンとのおつきあい許してくれるでしょ?」
「それは」
いけません、と続けそうになった恒太郎はゾッとした。 佑美の顔がヒョイと自分と娘の間に割り込んで
「恒太郎くん、どうなさるの? ウチの息子が気に入らないのかしら?」
佑美は例によって婉然と微笑んでいたが、その目は笑っていなかった。
「反対したら許さなくてよ?」
とばかりに光っていたのだ。
「も、もちろん許します」
「わあ! パパ大好きっ!」
留美は父の首っ玉にかじりつくように抱きついた。 よほど嬉しかったようで、恒太郎の顔から血の気が引いているのも気づいてはいない。
当然、その原因が佑美の眼光によることも気づかない。 だから、彼女にとって佑美は「優しいステキなお母さま」でありつづけるのであった。
そもそも留加は佑美にメロメロである。 更には、陸海空の自衛隊に圧力をかけられるような存在に逆らうなど、たとえ何度生まれ変わったとしてもとてもそんな勇気は恒太郎にもない。
というわけで、留美は佑美の恐ろしさというものをこれから先も知る事はないのであった。



そして、留美は仲直りした両親と一緒に自宅へ戻っていった。
佑がいろんな意味で胸を撫で下ろしたのは言うまでもない。
冴英は不満そうだったが、留美に
「また遊びに来るから。 ね?」
と言われ、しぶしぶながらも承諾した。 留美が本当に幸せそうだったからでもある。 冴英は気が強いが、別にわがままなのではないのだ。
ともあれ、その日佑は久しぶりにゆっくりと休めたのであった。
束の間の休み、であったのは読者諸賢のご推察の通りであるのだが。
次の日、つまり8日めも大事をとって休むよう母に言われ、その言葉に従った。


そして放課後。 留美と由香は仲良く下校中だった。 自宅に帰る前に佑の様子を見に行くつもりだったのだ。
「ね、ユカちゃん?」
「ん?」
振り向いた由香に留美がおくったのは、不意打ちの接吻であった。
「!」
ややあって、顔を離した留美は微笑みながら
「ごめんね? 家出したことナイショにしてて。 今のはほんのお・詫・び」
「る、留美……いいのに、そんなこと気にしなくても」
甘い唇の柔らかい感触に、由香は顔が火照ってくるのをおさえられなかった。
「あは、ユカちゃん、顔、真っ赤」
あどけない留美の笑顔に抱きしめたくなる由香。 が、まだ理性が残っている彼女にはそんなことはできない。
その代わりというのもなんだが、留美の方が由香を抱きしめた。 といっても別に留美には理性が残っていない、という訳ではない。
「ユカちゃん、可愛い!」
「か、可愛いって……」
中学生以上になってからというもの、由香はそんなことをいわれたことがなかった。
『カッコイイ』とかはあるのだが。
「本当にそう思うよ? あたしが男の子だったら押し倒しそう」
「留美……」
とんでもない留美のセリフにも感動してしまう由香だった。
「佑クンならそのうちスるかもね?」
更にとんでもないことを言う留美であった。
そして、その発言に由香がもっと狼狽したのは当然である。


そして二人とも元気になった佑の姿を見て一安心だった。
「佑クン、元気になってよかったね?」
「う、うん、ありがとう」
今度は由香が
「ちょっと二人して調子に乗っちゃったから、少し不安だったんだけど」
「い、いや、大丈夫だよ。 ありがとう由香ちゃん」
確かに後半の看護は大部分セクハラだったので、佑はお礼を言うのにちょっと抵抗があった。
そのため、少し返事をするのが遅れたが、いつものことでもあるため誰もとがめだてしない。
「ち、ちょっとごめんね」
佑は二人にことわって席を立つと、素早く母に耳打ちをした。

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