67 / 105
第一章(約11万字)
第66話:《魔調石》
しおりを挟む
裏切り者へは鉄槌を——当然のことだ。
「そうですか」
既にこの結論は覚悟していたため悲しさや恐怖といった感情は湧いてこない。
ただし、グレイ司祭の説明はこれで終わりではなかった。
「話を最後まで聞かんか」
「まだ何か?」
「お前は死罪が決定したが、猶予を与えることになった」
「……は、はあ」
(猶予……? 時間をかけて何になるんだ?)
ラッシュの脳内を疑問符が埋め尽くす。
まだ十二歳の子供だから慈悲をかけてくれたのだろうか。
それとも、何か狙いがあってのことだろうか。
どちらにせよ期間が気になる。
「いつまでですか?」
「不定期——いや、お前次第だ。我々としては死罪一択だと思っていたのだが、レジンが良いアイデアを出すものでな」
「え、レジンさんが?」
直接会ったことはないが、名前は聞いたことがある。
ラッシュやアリアと同じ魔族と人間のハーフ。
魔族たちには見下されているハーフだが、レジンだけは例外的に一目置かれている。
レジンは魔族らしくない見た目を活用して、人間大陸で冒険者として活動しているらしい。
人間たちには真の職業は隠しているとのことだが、剣聖(★なし)の職業を持つ剣士。
人間たちからは厚い信頼を得ており、今後魔族が人間との戦いを仕掛ける上では彼の存在は必須かつ勝敗を分ける要になるだろうと言われる人物だ。
——まさに、ラッシュたちに求められている将来材を体現している存在だった。
「ど、どうして僕なんかを……?」
「部下として使いたいと言っていたぞ。まあ、それはともかく。我々が積極的にお前を死罪にしようなどということは今後一切ないと宣言しておこう。というのもだな——おっと、来たか」
グレイ司祭の説明中に、禍々しい黒のオーラを放つ石の魔道具を持った魔族がやってきた。
「……⁉︎」
「これは、《魔調石》。我々が開発中の魔道具だ。これからお前の身体に呪いを刻む。生きるか死ぬかはお前次第。どんな副作用が出るかはわからない」
「実験台になれということですか……?」
「死ぬよりは幾らかマシだろう?」
「……」
「呪いの書き込みに成功すれば、晴れてこの《魔調石》とお前の肉体は一体化する。お前が死ねば《魔調石》は消滅する」
ラッシュの背筋に悪寒が走った。
「では、その《魔調石》が壊れるとどうなるのでしょう?」
「お前の想像の通りだ。最初に言っただろう? 罰はお前次第だとな」
「……理解しました」
つまり、今回の脱走はこの怪しげな魔道具による呪いを書き込むことによって許され、その代わりとして今後何かやらかせば、発覚した時点で殺される——ということだ。
「——やれ」
「はい」
グレイ司祭の命令を受け、《魔調石》を持った魔族がラッシュの身体に触れる。
そして、胸に不気味な目を描き込んでいった。
絵が完成した直後。
「うわあああああああああああああああああ‼︎」
心臓を突き刺すような強烈な痛みがラッシュを襲ったのだった。
◇
「……ということだ」
「そうですか」
既にこの結論は覚悟していたため悲しさや恐怖といった感情は湧いてこない。
ただし、グレイ司祭の説明はこれで終わりではなかった。
「話を最後まで聞かんか」
「まだ何か?」
「お前は死罪が決定したが、猶予を与えることになった」
「……は、はあ」
(猶予……? 時間をかけて何になるんだ?)
ラッシュの脳内を疑問符が埋め尽くす。
まだ十二歳の子供だから慈悲をかけてくれたのだろうか。
それとも、何か狙いがあってのことだろうか。
どちらにせよ期間が気になる。
「いつまでですか?」
「不定期——いや、お前次第だ。我々としては死罪一択だと思っていたのだが、レジンが良いアイデアを出すものでな」
「え、レジンさんが?」
直接会ったことはないが、名前は聞いたことがある。
ラッシュやアリアと同じ魔族と人間のハーフ。
魔族たちには見下されているハーフだが、レジンだけは例外的に一目置かれている。
レジンは魔族らしくない見た目を活用して、人間大陸で冒険者として活動しているらしい。
人間たちには真の職業は隠しているとのことだが、剣聖(★なし)の職業を持つ剣士。
人間たちからは厚い信頼を得ており、今後魔族が人間との戦いを仕掛ける上では彼の存在は必須かつ勝敗を分ける要になるだろうと言われる人物だ。
——まさに、ラッシュたちに求められている将来材を体現している存在だった。
「ど、どうして僕なんかを……?」
「部下として使いたいと言っていたぞ。まあ、それはともかく。我々が積極的にお前を死罪にしようなどということは今後一切ないと宣言しておこう。というのもだな——おっと、来たか」
グレイ司祭の説明中に、禍々しい黒のオーラを放つ石の魔道具を持った魔族がやってきた。
「……⁉︎」
「これは、《魔調石》。我々が開発中の魔道具だ。これからお前の身体に呪いを刻む。生きるか死ぬかはお前次第。どんな副作用が出るかはわからない」
「実験台になれということですか……?」
「死ぬよりは幾らかマシだろう?」
「……」
「呪いの書き込みに成功すれば、晴れてこの《魔調石》とお前の肉体は一体化する。お前が死ねば《魔調石》は消滅する」
ラッシュの背筋に悪寒が走った。
「では、その《魔調石》が壊れるとどうなるのでしょう?」
「お前の想像の通りだ。最初に言っただろう? 罰はお前次第だとな」
「……理解しました」
つまり、今回の脱走はこの怪しげな魔道具による呪いを書き込むことによって許され、その代わりとして今後何かやらかせば、発覚した時点で殺される——ということだ。
「——やれ」
「はい」
グレイ司祭の命令を受け、《魔調石》を持った魔族がラッシュの身体に触れる。
そして、胸に不気味な目を描き込んでいった。
絵が完成した直後。
「うわあああああああああああああああああ‼︎」
心臓を突き刺すような強烈な痛みがラッシュを襲ったのだった。
◇
「……ということだ」
34
あなたにおすすめの小説
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)
葵セナ
ファンタジー
主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?
管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…
不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。
曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!
ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。
初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)
ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる