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第1章:魔法学院入学編

第31話:最強賢者はクエストを受ける

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 土曜日になった。
 ギルドは朝九時に開くので、少し早起きである。
 学院を出てすぐそこの場所にギルドはあった。西洋風二階建ての建物の入り口は木製の扉になっており、その前には剣と杖をクロスさせたデザインの看板がかけられている。

 中に入ると既に多くの冒険者が集まっていた。学院の制服を着た者は俺たちの他にいない。
 彼らは手慣れた手つきで貼られたばかりの新着クエストを掲示板から手に取り、ギルドカウンターに持っていく。

 俺たちはまだギルドの組合員になれていないので、登録をしなければならない。
 二階が新規組合員登録・変更用のギルドカウンターが備えられているため、俺たちは螺旋状の階段を上っていく。

「新規登録をしたいのですが」

 受付嬢はにこやかに微笑み、

「では試験を受けていただきますので必要事項に記入を……」

「いえ、この身分証があれば試験はいらないと聞いたのですが」

 俺は魔法学院の学院証を見せる。顔写真と名前、生年月日が書かれているカードだ。
 同様にリーナとエリスが学院証を見せる。

「これは失礼しました! たまにいるんですよ、制服を着ていたら無試験で組合員になれると思っている人が。……身分を確認できたので、組合員登録に移りますね」

 受付嬢はカウンター下から何枚かの書類を取り出して俺たちの前に置いた。

「名前と職業……あと、パーティを組むのならパーティメンバーの構成もこちらにお願いします」

「三人分ありますが、パーティメンバーの構成は全部同じように書くんですか?」

 まったく同じ事項を書くのだから無駄だと思って聞いたのだが、

「規則ですので……すみません」

「……そうですか」

 ギルドはお役所仕事だということらしい。もう少し融通を利かせてくれても良いと思うのだがな。

 俺たちは書類に名前を書き込み、パーティメンバーの構成用紙でピタッと手が止まった。

「パーティリーダーは俺でいいか?」

「私は構わないわよ」

「ユーヤがリーダーになる分には構わない」

 リーナ、エリスの順である。同意が取れたところで用紙を書き上げ、受付嬢に手渡す。

「はい、確認できました! では組合員証をお渡ししますので、もう少々お待ちください。今の間にクエスト掲示板を見てもらっても構いませんよ」

「じゃあ見に行きます。……ちなみに、俺たちが受けられるクエストって?」

「組合員になってしばらくはEランクのみになります」

「……そうですよね」

 螺旋階段を下りて、クエスト掲示板に向かっていく。
 大勢いた冒険者たちはまばらになっていた。

「Eランククエストは……ここね!」

 リーナが目当てのクエストを探しに先に駆けていく。

「どうだ? 良さそうなのは見つかったか?」

「うーん……」

 どれどれ。
 左上に貼られているものから順番に確認していく。

 『洋館にアイテムを届けてほしい ……銀貨5枚』
 『森で薬草を集めてほしい ……銀貨4枚』
 『ギルドスタッフ募集 ……時給銅貨9枚』

 金貨が一枚で一万円、銀貨が千円、銅貨は百円の価値である。
 そう考えればこの中で一番割が良いのは銀貨5枚のお使いクエストか。

「なんか思ってたのと違う……」

「Eランクのクエストなんだからこんなもんじゃないのか?」

「それはそうなんだろうけど……」

 まあ、リーナの気持ちも俺はよくわかる。魔物を退治するつもりで張り切っていたのに、お使いクエストばかりじゃこういう反応にもなるよな。
 お使いクエストや採集クエストだって、誰かの役に立つし、立派な仕事ではあるのだが、理想と違ってがっかりしてしまうのを責める気にはなれない。

「とりあえず一番上のクエストにするか?」

「そうね……さっさとクエストをこなしてランクを上げちゃいたいし」

「エリスもこれで問題ないか?」

「私はなんでもいいわ。……文句はない」

「そうか、わかった」

 俺はお使いクエストの受注用紙を剥がす。
 するともう一枚出てきた。
 あれ? 何個も募集があるのか。
 LLOでもたまにあるのだ。一つのクエスト内容を何度も受注可能なことが。
 よっぽど人手に困っているのだろう。

「お待たせしました。組合員証になります。……受注するクエストはお決まりですか?」

 さっきの受付嬢が組合員証を三つ持ってきたので、俺たちはそれぞれの名前が刻まれた組合員証を受け取る。色は白だ。

 ギルドランクは段階分けされており、最初はEランクから始まる。
 組合員証はギルドランクごとに色分けされているのだ。
 Eランクは白、Dランクは黒、Cランクは赤、Bランクは紫、Aランクは銅、Sランクは銀である。
 LLOでは最新アップデートされたものがSランクまでだった。開発はさらに上のランクを想定し、金を残しているのだろうとユーザー間で推測したものだった。

「ありがとうございます。……これを受けたいんですが」

「ああーなんか最近、洋館への配達クエストが多いんですよね。荷物も重くないですし、おすすめのクエストですよ」

「これって一日に何度も受けられたりします?」

「ええ、できるなら何度もこなしてもらえた方がありがたいです。ちょっと依頼が多すぎてギルドでも捌ききれないのが現状でして……」

「ちなみに、何回くらいEランククエストをこなせばDランクに上がれるんですか?」

「EからDだと……十回もこなしてもらえれば昇級可能だったはずです」

「わかりました。では早速行ってきます」

「はい。よろしくお願いしますね」

 俺たちは配達する荷物を受け取った後すぐにギルドを後にしたのだった。
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