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第2章:第二学院創設編
第19話:最強賢者は許しを請う
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「どうか許してくれ! この通りだ!」
俺はその場に跪き、額を地面に擦り付ける。十数年ぶりの土下座は、アスファルトではなく土の匂いがした。
みっともない姿ではあるが、反省した姿を見せるには土下座は一番わかりやすい。
あとはどういう反応があるか……だが。
「はぁ……どうする?」
「ごにょごにょ」
「ごにょごにょ」
「ごにょごにょ」
………
……
…
「面を上げて」
リーナの声があった。地面に跪いたまま、顔だけ上げる。
「ユーヤに悪気がないことはわかった。……だから、認める」
「おおっ!」
「ただし、条件付きでね」
「条件?」
なんだろう。色々と話していたみたいだけど、条件が必要なものなのか?
「そこのティアナって子が本当にやる気があるのか、テストをするのよ。ただ単にユーヤとくっつきたくて……じゃなくて、邪魔をしに来たんじゃないと証明してもらわないとね!」
「私、やる気はありますっ!」
「そうだぞ、内気なティアナがわざわざ頼みに来たんだ。半端な思いじゃないことは確かだ」
「言葉ではなんとでも言えるもの。大事なのは行動あるのみよ!」
……確かに筋は通っている。通っているのだが、どうやって証明せよというのか。あ、テストとか言ってたな。四人には何か考えがあるのだろう。
「テストの内容は、今日一日私たちと同じ修行をしてもらう。それに耐えきれたらやる気は認めざるをえないし、私たちは歓迎する」
「……なるほど」
「だからと言って、今日だけ優しくするのはナシ。オーケー?」
要するに体験入部みたいなものだ。一日だけお試しで練習させてみて、ダメそうなら否を突き付けたほうがティアナにとっても幸せだ。俺の修行はどうやら四人にとっては厳しいものらしい。そんな修行に、ティアナがついていけるかどうかは確かに未知数ではあった。
「わかった! 今日はとびきり厳しいメニューにするから安心してくれ! ……って、あれ? どうしたんだ変な顔して」
要望に応えて厳しくすると言ったのに、みんな引きつった笑みを浮かべていた。
どうしてなんだろう?
「そ、それはありがたい限りね……」
◇
その後ダンジョンに転移をして、今日のメニューを五人に伝える。
「今日のメニューは、素振り一万回!」
「はぁ……良かったぁ……」
「安心しました……」
四人から安堵の息が漏れる。俺は間髪入れずに付け加えた。
「……に加えて、筋トレスペシャルセットを三セットな」
「な、な、な、な……」
「嘘でしょ……」
安堵から一変。四人は絶望しきっていた。
どんよりとした空気の中、ティアナから質問が飛ぶ。
「素振り一万回はわかるんですが、筋トレスペシャルセットって何ですか?」
「ああ、ティアナは初めてだからな。説明するよ」
既にこのセットをこなしたことのある四人は恐ろしさを知っている。彼女たちは聞きたくないと言いたげに、手で耳を抑えていた。
「百キロのデッドリフト百回、上体起こし千回、腕立て伏せ千回、懸垂千回、スクワット千回がセットになった欲張りメニューのことだ!」
「そ、そうなんですか……!」
ティアナは驚いた風だったが、怯えてはいない。肝が据わっているのか、想像力が足りないのかわからないが、始める前から怖がるよりはいいことだ。
「デッドリフトについてはイメージできないかもしれないが、その時になったら説明する。……ということで、まずは素振り一万回から始めよう」
全員に土剣を握らせ、俺も一緒に素振りを始める。
ここ数日の修行の甲斐あってか、四人は体力・魔力・精神力がかなり鍛えられているのがわかる。彼女たちはまだ自覚していないようだが、確実に強くなっている。
……気まで強くなっていたのは想定外だったが……。
なにはともあれ、ここまで漕ぎつけた。
ティアナが無事にみんなに認められるといいんだがな。
俺はその場に跪き、額を地面に擦り付ける。十数年ぶりの土下座は、アスファルトではなく土の匂いがした。
みっともない姿ではあるが、反省した姿を見せるには土下座は一番わかりやすい。
あとはどういう反応があるか……だが。
「はぁ……どうする?」
「ごにょごにょ」
「ごにょごにょ」
「ごにょごにょ」
………
……
…
「面を上げて」
リーナの声があった。地面に跪いたまま、顔だけ上げる。
「ユーヤに悪気がないことはわかった。……だから、認める」
「おおっ!」
「ただし、条件付きでね」
「条件?」
なんだろう。色々と話していたみたいだけど、条件が必要なものなのか?
「そこのティアナって子が本当にやる気があるのか、テストをするのよ。ただ単にユーヤとくっつきたくて……じゃなくて、邪魔をしに来たんじゃないと証明してもらわないとね!」
「私、やる気はありますっ!」
「そうだぞ、内気なティアナがわざわざ頼みに来たんだ。半端な思いじゃないことは確かだ」
「言葉ではなんとでも言えるもの。大事なのは行動あるのみよ!」
……確かに筋は通っている。通っているのだが、どうやって証明せよというのか。あ、テストとか言ってたな。四人には何か考えがあるのだろう。
「テストの内容は、今日一日私たちと同じ修行をしてもらう。それに耐えきれたらやる気は認めざるをえないし、私たちは歓迎する」
「……なるほど」
「だからと言って、今日だけ優しくするのはナシ。オーケー?」
要するに体験入部みたいなものだ。一日だけお試しで練習させてみて、ダメそうなら否を突き付けたほうがティアナにとっても幸せだ。俺の修行はどうやら四人にとっては厳しいものらしい。そんな修行に、ティアナがついていけるかどうかは確かに未知数ではあった。
「わかった! 今日はとびきり厳しいメニューにするから安心してくれ! ……って、あれ? どうしたんだ変な顔して」
要望に応えて厳しくすると言ったのに、みんな引きつった笑みを浮かべていた。
どうしてなんだろう?
「そ、それはありがたい限りね……」
◇
その後ダンジョンに転移をして、今日のメニューを五人に伝える。
「今日のメニューは、素振り一万回!」
「はぁ……良かったぁ……」
「安心しました……」
四人から安堵の息が漏れる。俺は間髪入れずに付け加えた。
「……に加えて、筋トレスペシャルセットを三セットな」
「な、な、な、な……」
「嘘でしょ……」
安堵から一変。四人は絶望しきっていた。
どんよりとした空気の中、ティアナから質問が飛ぶ。
「素振り一万回はわかるんですが、筋トレスペシャルセットって何ですか?」
「ああ、ティアナは初めてだからな。説明するよ」
既にこのセットをこなしたことのある四人は恐ろしさを知っている。彼女たちは聞きたくないと言いたげに、手で耳を抑えていた。
「百キロのデッドリフト百回、上体起こし千回、腕立て伏せ千回、懸垂千回、スクワット千回がセットになった欲張りメニューのことだ!」
「そ、そうなんですか……!」
ティアナは驚いた風だったが、怯えてはいない。肝が据わっているのか、想像力が足りないのかわからないが、始める前から怖がるよりはいいことだ。
「デッドリフトについてはイメージできないかもしれないが、その時になったら説明する。……ということで、まずは素振り一万回から始めよう」
全員に土剣を握らせ、俺も一緒に素振りを始める。
ここ数日の修行の甲斐あってか、四人は体力・魔力・精神力がかなり鍛えられているのがわかる。彼女たちはまだ自覚していないようだが、確実に強くなっている。
……気まで強くなっていたのは想定外だったが……。
なにはともあれ、ここまで漕ぎつけた。
ティアナが無事にみんなに認められるといいんだがな。
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