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第2章:第二学院創設編
第18話:最強賢者は頼まれる
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学院対抗戦は、一対一の決闘形式で行われる。二勝した学院が勝利となり、これが学年ごとに行われる。先鋒、中堅、大将の三人を決めておき、通常は一番強い者が大将になる。
カリオン魔法学院との対抗戦は、互いの学院をより高めあうというのが目的となっている。その目的に照らせば、変な構成で誰かを捨て駒にするのではなく、戦力順に並べるのが正しい。
……とすると、先鋒がエリスで中堅はリーナ。そして、大将は俺ということになりそうだ。
授業が終わって放課後になった。教室から大半の生徒が出ていき、部活や魔法の練習など、各々のやりたいことに打ち込んでいく時間だ。
リーナとエリスの二人には
「あ、あの……ユーヤ君?」
背後に見慣れない生徒が立っていた。眼鏡をかけた少女。美人というほどでもないが、ブスというほどでもない。一言で言うなら平凡な女の子だ。
存在感が希薄で、教室の外に出た瞬間忘れてしまうような子だ。
深蒼の髪の毛を後ろで縛っただけで洒落っ気の一つもない。澄んだ碧の瞳は美しいが、特徴と言える特徴はそれくらいしかない。
「あー……えーと、すまん」
「すみません、私地味ですから覚えてもらってませんよね。ティアナと言います」
そういえば、最初のホームルームで自己紹介しているのを聞いた気がする。……当たり前と言えば当たり前なのだが。
「ティアナだな、覚えておくよ。……それで、俺に何か用があったのか?」
「用……というかお願いがって」
「なんだ? 言ってみてくれ。俺にできることなら協力するぞ」
「で、では……私のお願いは……ユーヤ君に魔法を教えてほしいのです! 学院対抗戦の練習に混ぜてほしいなあなんて思って……」
ティアナは言い切ると、顔を両手で隠してガバっと後ろを向いた。引っ込み思案な彼女は意を決してお願いしてきたのだろう。俺も前世ではコミュ障だったから、気持ちはめちゃくちゃよくわかる。
なんとかしてやりたい。
「魔法の指導か……」
「だ、ダメですよね! ごめんなさいっ! 地味で根暗でつまらなくてブスで変なやつなのにクラスの人気者のユーヤ君に指導をお願いするなんて身の程を知るべきですよね! ユーヤ君は忙しいですし! 本当にごめんなさい……ああ、なんと謝罪して良いか……」
ティアナはそのまま走って教室を出ようとする。
「待てよ」
俺はティアナの腕を引いた。
「え? あの……その……」
「俺は生徒であると同時に、身分上は一応教師でもある。……教えてくれって言われて断れないよ」
俺は新しく刺繍された左肩の紋章に手を重ねた。
「えっと……じゃあ」
「正直なところ、今の俺は弟子がちょっと多くてティアナだけに集中できないかもしれない。それでも良ければ、引き受けさせてくれ」
俺はティアナの腕から手を放し、頭をポリポリ掻いた。
「そ、そんなの十分すぎますっ! 師匠、よろしくお願いします!」
ティアナは満面の笑みを浮かべて俺に礼を言った。
彼女を見ていると、なんとなく違和感を覚える。地味でどうしようもない見た目をしていると思ったのに、笑顔がめちゃくちゃ眩しくて、可愛く見えるのだ。
これってもしかして……。俺は彼女の顔をジッと見つめ、あることを計画するのだった。
◇
ティアナと一緒に歩いて学院門の前までやってきた。門の前には、放課後の時間を見計らったかのようにレムとアミが待っていた。先についていたリーナとエリスも一緒になって楽し気に談笑している。
「よっ待たせたな」
俺は四人に手を振った。
「あれ? ユーヤさん、また新しい女が出来たんですか?」
「男性一人に女性五人って、さすがに構成がおかしいと思います」
さっきの楽し気な雰囲気が一変。出会い頭にレムとアミの順でジト目を向けられてしまう。たまたま俺の周りに女が集まってくるだけで、決して狙っているわけではないのだが……ともかく、この冤罪を早く解決しないと俺の人望が底を尽きそうだ。
「違うんだ、聞いてくれ! ティアナは今日からお前たち四人と同じ、俺の弟子になった。男とか女とか、そんなのは関係ない。俺のキャパに余裕がある限り、望んだ者には教えてやりたいんだ」
「ふーん」
「へー」
こ、こいつら信じてないのか!?
「ユーヤ、私からも言わせてもらうとね? どうしてそんなに都合よく女の子ばかりが集まるのか不思議なのよ。クラスには男の子だっているでしょう? 男の子と話しているところを見たことはほとんどないのよ」
リーナの的確な指摘が俺の評価を地の底に貶める。
三人はうんうんと同調していた。
「いや、そのだな……俺は善意のつもりで……」
ダメだ、どんどん言い訳がましくなっていく。俺だって聞きたいよ! 同性の友達がいれば楽しいだろうなとも思ってるんだが……。
「ごめんなさい!」
え?
俺が四人に詰められて頭を抱えていると、隣に立っていたティアナが頭を下げて謝った。
「私なんかがユーヤ君に指導をお願いしたばかりにこんなことになって……私は大丈夫です。ご迷惑おかけして申し訳ありません。それでは……失礼します」
「待てって」
逃げるように走り出すティアナを捕まえ、引き戻す。
「ティアナ、お前は勇気を振り絞って俺にお願いしたんだ。そして俺は引き受けた。ティアナが責任を感じる必要はまったくない」
「で、でも……」
「ティアナ、今から十秒で話をまとめる。それまで、待っていてくれないか?」
「……ユーヤ君のお願いを拒否するなんてことできません。いつまででも待ちます。ですが、私なんていつ捨てても構いませんので……」
「ありがとうな。捨てねえから安心しとけ」
さーて、どうすっかな。
ティアナには十秒で話をまとめると言ったが、具体的にどうするかなんてまったく考えていない。勢い任せだ。
この場で俺にできることと言えば、まあ一つか。社畜時代に培った特殊能力の一つ、【土下座】。まさか異世界でも使う日がこようとは思わなかったぜ。
カリオン魔法学院との対抗戦は、互いの学院をより高めあうというのが目的となっている。その目的に照らせば、変な構成で誰かを捨て駒にするのではなく、戦力順に並べるのが正しい。
……とすると、先鋒がエリスで中堅はリーナ。そして、大将は俺ということになりそうだ。
授業が終わって放課後になった。教室から大半の生徒が出ていき、部活や魔法の練習など、各々のやりたいことに打ち込んでいく時間だ。
リーナとエリスの二人には
「あ、あの……ユーヤ君?」
背後に見慣れない生徒が立っていた。眼鏡をかけた少女。美人というほどでもないが、ブスというほどでもない。一言で言うなら平凡な女の子だ。
存在感が希薄で、教室の外に出た瞬間忘れてしまうような子だ。
深蒼の髪の毛を後ろで縛っただけで洒落っ気の一つもない。澄んだ碧の瞳は美しいが、特徴と言える特徴はそれくらいしかない。
「あー……えーと、すまん」
「すみません、私地味ですから覚えてもらってませんよね。ティアナと言います」
そういえば、最初のホームルームで自己紹介しているのを聞いた気がする。……当たり前と言えば当たり前なのだが。
「ティアナだな、覚えておくよ。……それで、俺に何か用があったのか?」
「用……というかお願いがって」
「なんだ? 言ってみてくれ。俺にできることなら協力するぞ」
「で、では……私のお願いは……ユーヤ君に魔法を教えてほしいのです! 学院対抗戦の練習に混ぜてほしいなあなんて思って……」
ティアナは言い切ると、顔を両手で隠してガバっと後ろを向いた。引っ込み思案な彼女は意を決してお願いしてきたのだろう。俺も前世ではコミュ障だったから、気持ちはめちゃくちゃよくわかる。
なんとかしてやりたい。
「魔法の指導か……」
「だ、ダメですよね! ごめんなさいっ! 地味で根暗でつまらなくてブスで変なやつなのにクラスの人気者のユーヤ君に指導をお願いするなんて身の程を知るべきですよね! ユーヤ君は忙しいですし! 本当にごめんなさい……ああ、なんと謝罪して良いか……」
ティアナはそのまま走って教室を出ようとする。
「待てよ」
俺はティアナの腕を引いた。
「え? あの……その……」
「俺は生徒であると同時に、身分上は一応教師でもある。……教えてくれって言われて断れないよ」
俺は新しく刺繍された左肩の紋章に手を重ねた。
「えっと……じゃあ」
「正直なところ、今の俺は弟子がちょっと多くてティアナだけに集中できないかもしれない。それでも良ければ、引き受けさせてくれ」
俺はティアナの腕から手を放し、頭をポリポリ掻いた。
「そ、そんなの十分すぎますっ! 師匠、よろしくお願いします!」
ティアナは満面の笑みを浮かべて俺に礼を言った。
彼女を見ていると、なんとなく違和感を覚える。地味でどうしようもない見た目をしていると思ったのに、笑顔がめちゃくちゃ眩しくて、可愛く見えるのだ。
これってもしかして……。俺は彼女の顔をジッと見つめ、あることを計画するのだった。
◇
ティアナと一緒に歩いて学院門の前までやってきた。門の前には、放課後の時間を見計らったかのようにレムとアミが待っていた。先についていたリーナとエリスも一緒になって楽し気に談笑している。
「よっ待たせたな」
俺は四人に手を振った。
「あれ? ユーヤさん、また新しい女が出来たんですか?」
「男性一人に女性五人って、さすがに構成がおかしいと思います」
さっきの楽し気な雰囲気が一変。出会い頭にレムとアミの順でジト目を向けられてしまう。たまたま俺の周りに女が集まってくるだけで、決して狙っているわけではないのだが……ともかく、この冤罪を早く解決しないと俺の人望が底を尽きそうだ。
「違うんだ、聞いてくれ! ティアナは今日からお前たち四人と同じ、俺の弟子になった。男とか女とか、そんなのは関係ない。俺のキャパに余裕がある限り、望んだ者には教えてやりたいんだ」
「ふーん」
「へー」
こ、こいつら信じてないのか!?
「ユーヤ、私からも言わせてもらうとね? どうしてそんなに都合よく女の子ばかりが集まるのか不思議なのよ。クラスには男の子だっているでしょう? 男の子と話しているところを見たことはほとんどないのよ」
リーナの的確な指摘が俺の評価を地の底に貶める。
三人はうんうんと同調していた。
「いや、そのだな……俺は善意のつもりで……」
ダメだ、どんどん言い訳がましくなっていく。俺だって聞きたいよ! 同性の友達がいれば楽しいだろうなとも思ってるんだが……。
「ごめんなさい!」
え?
俺が四人に詰められて頭を抱えていると、隣に立っていたティアナが頭を下げて謝った。
「私なんかがユーヤ君に指導をお願いしたばかりにこんなことになって……私は大丈夫です。ご迷惑おかけして申し訳ありません。それでは……失礼します」
「待てって」
逃げるように走り出すティアナを捕まえ、引き戻す。
「ティアナ、お前は勇気を振り絞って俺にお願いしたんだ。そして俺は引き受けた。ティアナが責任を感じる必要はまったくない」
「で、でも……」
「ティアナ、今から十秒で話をまとめる。それまで、待っていてくれないか?」
「……ユーヤ君のお願いを拒否するなんてことできません。いつまででも待ちます。ですが、私なんていつ捨てても構いませんので……」
「ありがとうな。捨てねえから安心しとけ」
さーて、どうすっかな。
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