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第6話:落第魔法師は着替えを覗いてしまう
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俺は学院長室に立ち寄り、用意できたばかりだという部屋の鍵を受け取った。その鍵を片手に寮の中を歩いていた。しつこいようだが、ヴィエール魔法学院は俺が知らない千年の間にほぼ女子校になってしまっていて、学院生の中で男は俺一人だけ。
そしてこの学院は全寮制。……つまり、そういうことだ。
男子寮など存在しないのだ。俺はほぼ女子寮状態になっているこの空間で生活しなければならない。
羨ましい? いやいやご冗談を。すれ違うたびに女子生徒が俺をジッと見てくるのだ。まったく落ち着けない。俺は女子生徒に目を合わさないようにして寮の中を歩いて部屋を探す。
「確か三〇七号室だよな……と、ここか」
やっと部屋を見つけることができた。三階の七号室。階段からかなり離れた位置にあるため、辿り着くまでに時間がかかってしまった。
放課後は各々が自由に活動することができる。クラブや生徒会も相変わらず活発らしい。俺は当然無所属なので、さっさと部屋で引きこもろうかといった具合だ。
学院長からもらった鍵を回すと、カチャっと音がした。
「って、あれ? 閉まってる?」
どうやら、俺は鍵を開けるつもりが閉めてしまったらしい。ちょっと不自然だが、俺のために急いで部屋を用意してくれた部屋なら、普段は空いていたんだろうし、鍵が開けっ放しでもわからないことはない。
俺はもう一度鍵を差し込み、もう一度回した。
ドアを開けて、部屋の中に入る。
……靴? 玄関に一足の靴が置かれていた。誰かの忘れ物だろうか?
まあいい、今日は慣れない環境で疲れたし、ベッドで横になりたい。
キッチンの横を通り、部屋の中に入る。
俺は思わず息を飲んだ。
――綺麗だ。
すべすべの白い肌に、大きな胸。それなのに少女のあどけなさが残るプロポーション。金色の髪と蒼い瞳が良いアクセントになっていて、まるで美術品かと思うほど美しい少女。
そんな女の子が一糸纏わぬ姿で固まっていた。
「アキヤ……?」
その少女は今日何度も顔を会わせた人物だった。
「リアナ!? なんでここに……ってすまん!」
俺は慌てて目を逸らした。しかし目にはしっかりとリアナの裸の姿が焼き付いている。本当に可愛かった。
「ちょ、ちょっと待ってね! 今すぐ服着るから!」
リアナはかなり焦っているのか早口でそう言うと、バタバタと物音を立てて急いで着替え始めた。
「もう大丈夫……こっち見ていいよ」
「そ、そうか」
俺は改めてリアナを見た。彼女は白いブラウスの私服に着替えていた。……そういえば、放課後の服装は自由だったんだよな。
制服も可愛かったが、私服もかなり良い。……裸を見る前だったら、めちゃくちゃ感動していたと思う。
実技の授業の後は着替えを取りに戻らずにシャワー室に直行していたから、部屋で私服に着替えることにしたんだろう、多分。
タオルはシャワー室の個人ロッカーに入れておけば直行しても不都合はない。
「そ、その……見たんだよね?」
「ちょっとだけしか見えなかったから大丈夫だって! もう忘れたしさ!」
「そ、そう……それにしても、どうやって入ってきたの?」
「普通に鍵を開けて……っていうか、ここ俺の部屋だぞ!? なんでここで着替えてたんだ?」
「嘘!? ここは私の部屋だよ?」
「そんなわけ……ほら、鍵はここのだろ?」
俺はポケットに入れていた部屋の鍵を取り出して、リアナに見せる。
リアナも机に置いていた鍵を持ってきて、二つを見比べてみた。
鍵の形は一緒。ただ、リアナの鍵には赤いストラップがついていて、俺の鍵には青いストラップがついている。
「それ、合鍵だと思う」
「じゃあ学院長が間違えて渡したってことか……」
「ううん、そうじゃなくて。その……本来は寮って二人部屋だから。私は人数が合わなくてたまたま一人部屋だったから、アキヤを入れたのかも」
確かにそう考えると納得だが……。
「男女で同じ部屋なんてありえるのか!?」
「男の魔法師がそもそも例外みたいなものだから、学院長もよく考えずに鍵を渡したのかも」
「なんだそりゃ……ちょっと学院長に部屋を変えてもらえるように言ってくるよ」
俺は部屋の鍵をポケットに入れて、部屋を出ていこうとする。
「あっ、でも……」
「ん、どうした?」
「その……私はこのままでもいいかな? 学院長も忙しい人だし……」
リアナは顔を真っ赤に染めていた。恥ずかしそうに俯きながら話している。
「いやでもな……さすがに男女が同じ部屋ってのはありえないだろ」
「アキヤは私と同じ部屋だと嫌なの……?」
「そ、そんなことはないぞ! 断じてそんなことはない!」
むしろ毎晩リアナと同じ部屋で過ごせるなんて幸せだよ! でも、それでリアナに負担がかかるならそれは嫌だ。
「じゃあ、良いよね?」
「本当に嫌じゃないんだよな? ……その、無理してるんだったら遠慮なくいってくれ。絶対怒ったりしないし」
「私は大丈夫。心配なのはアキヤの方。本当に私と一緒で嫌じゃない?」
「嫌なわけないよ」
「そっか、なら良かった!」
リアナが肩に抱き着いてくる。……その、なんだか大胆だな?
彼女もそう思ったのか、耳まで真っ赤になり、頭から蒸気が噴き出した。
俺も恥ずかしすぎて死んでしまいそうだ。
何か別の話題を……そうだ!
「えっとだな! これから二人で部屋を使う上で、ルールを決めようと思う!」
「確かにルールは必要だと思う!」
リアナも恥ずかしかったようで、俺の提案に乗ってきた。
備え付けの机を挟んで向かい合わせに座った。隣に座るべきだったかな? あんなことがあったせいで、目を合わせづらい……。
「まずは、着替えに関してだ! リアナが着替えているときは俺は外で待ってるから、その間に着替えてほしい。間違えて入ることが無いように、俺が入ってきたら着替えてるって言ってほしい。ここまでいいか?」
「わかったわ。逆にアキヤが着替えるときもそれでいい?」
「もちろんだ。俺は見られても気にしないけど、あんまり見たいもんでもないだろうしな……って、どうした?」
「ううん、なんでもない」
リアナはなぜか少し恥ずかしそうに俺の身体を見てくるのだった。……まあいいや。
「二段ベッドがあるけど、俺が下でリアナが上。今とは位置が変わるけど……」
「それでいいよ。後は何かあるかな?」
「就寝時間、起床時間のすり合わせとかはおいおいやっていくとして、今決めておかないといけないのはこれくらいかな」
男女で同室。……もっとルールを細かく決めないといけないかと思っていたけど、列挙するとそうでもなかったことにちょっと驚いた。
あとは俺が理性をちゃんと保って、絶対に間違いが起こらないようにってだけだな。信頼関係ってのは築くのが難しいのに、壊れるのは一瞬なのだ。……頑張れ、俺。
「そういえば、夕食は何時ぐらいから食べられるんだ?」
学院生用の食堂では、朝昼夕の三食が用意される。朝は授業が始まる前まで、昼は休み時間の間なのはわかるけど、夕食の時間がわからない。
「確か六時くらいから八時までだったかな。この時間はまだ部活動とか生徒会が活動してる時間で人が少ないからおすすめだよ」
「そうか……それまで時間があるな。それに五時までもうちょっとか」
「どうしたの?」
「シャワー室の時間だよ。俺だけ男だから、みんなと同じ時間に使えないんだ。五時から六時の一時間だけ空けてもらってるから、その間に浴びてこないと」
「そうだったんだ。……初めて知ったかも」
「あんあり周知されてないんだよな」
俺は苦笑いを浮かべた。俺は腰を上げて、玄関のほうに歩いていく。
「まあ、さすがにシャワー室の前には張り紙とかあるだろ。じゃあ行ってくる」
そしてこの学院は全寮制。……つまり、そういうことだ。
男子寮など存在しないのだ。俺はほぼ女子寮状態になっているこの空間で生活しなければならない。
羨ましい? いやいやご冗談を。すれ違うたびに女子生徒が俺をジッと見てくるのだ。まったく落ち着けない。俺は女子生徒に目を合わさないようにして寮の中を歩いて部屋を探す。
「確か三〇七号室だよな……と、ここか」
やっと部屋を見つけることができた。三階の七号室。階段からかなり離れた位置にあるため、辿り着くまでに時間がかかってしまった。
放課後は各々が自由に活動することができる。クラブや生徒会も相変わらず活発らしい。俺は当然無所属なので、さっさと部屋で引きこもろうかといった具合だ。
学院長からもらった鍵を回すと、カチャっと音がした。
「って、あれ? 閉まってる?」
どうやら、俺は鍵を開けるつもりが閉めてしまったらしい。ちょっと不自然だが、俺のために急いで部屋を用意してくれた部屋なら、普段は空いていたんだろうし、鍵が開けっ放しでもわからないことはない。
俺はもう一度鍵を差し込み、もう一度回した。
ドアを開けて、部屋の中に入る。
……靴? 玄関に一足の靴が置かれていた。誰かの忘れ物だろうか?
まあいい、今日は慣れない環境で疲れたし、ベッドで横になりたい。
キッチンの横を通り、部屋の中に入る。
俺は思わず息を飲んだ。
――綺麗だ。
すべすべの白い肌に、大きな胸。それなのに少女のあどけなさが残るプロポーション。金色の髪と蒼い瞳が良いアクセントになっていて、まるで美術品かと思うほど美しい少女。
そんな女の子が一糸纏わぬ姿で固まっていた。
「アキヤ……?」
その少女は今日何度も顔を会わせた人物だった。
「リアナ!? なんでここに……ってすまん!」
俺は慌てて目を逸らした。しかし目にはしっかりとリアナの裸の姿が焼き付いている。本当に可愛かった。
「ちょ、ちょっと待ってね! 今すぐ服着るから!」
リアナはかなり焦っているのか早口でそう言うと、バタバタと物音を立てて急いで着替え始めた。
「もう大丈夫……こっち見ていいよ」
「そ、そうか」
俺は改めてリアナを見た。彼女は白いブラウスの私服に着替えていた。……そういえば、放課後の服装は自由だったんだよな。
制服も可愛かったが、私服もかなり良い。……裸を見る前だったら、めちゃくちゃ感動していたと思う。
実技の授業の後は着替えを取りに戻らずにシャワー室に直行していたから、部屋で私服に着替えることにしたんだろう、多分。
タオルはシャワー室の個人ロッカーに入れておけば直行しても不都合はない。
「そ、その……見たんだよね?」
「ちょっとだけしか見えなかったから大丈夫だって! もう忘れたしさ!」
「そ、そう……それにしても、どうやって入ってきたの?」
「普通に鍵を開けて……っていうか、ここ俺の部屋だぞ!? なんでここで着替えてたんだ?」
「嘘!? ここは私の部屋だよ?」
「そんなわけ……ほら、鍵はここのだろ?」
俺はポケットに入れていた部屋の鍵を取り出して、リアナに見せる。
リアナも机に置いていた鍵を持ってきて、二つを見比べてみた。
鍵の形は一緒。ただ、リアナの鍵には赤いストラップがついていて、俺の鍵には青いストラップがついている。
「それ、合鍵だと思う」
「じゃあ学院長が間違えて渡したってことか……」
「ううん、そうじゃなくて。その……本来は寮って二人部屋だから。私は人数が合わなくてたまたま一人部屋だったから、アキヤを入れたのかも」
確かにそう考えると納得だが……。
「男女で同じ部屋なんてありえるのか!?」
「男の魔法師がそもそも例外みたいなものだから、学院長もよく考えずに鍵を渡したのかも」
「なんだそりゃ……ちょっと学院長に部屋を変えてもらえるように言ってくるよ」
俺は部屋の鍵をポケットに入れて、部屋を出ていこうとする。
「あっ、でも……」
「ん、どうした?」
「その……私はこのままでもいいかな? 学院長も忙しい人だし……」
リアナは顔を真っ赤に染めていた。恥ずかしそうに俯きながら話している。
「いやでもな……さすがに男女が同じ部屋ってのはありえないだろ」
「アキヤは私と同じ部屋だと嫌なの……?」
「そ、そんなことはないぞ! 断じてそんなことはない!」
むしろ毎晩リアナと同じ部屋で過ごせるなんて幸せだよ! でも、それでリアナに負担がかかるならそれは嫌だ。
「じゃあ、良いよね?」
「本当に嫌じゃないんだよな? ……その、無理してるんだったら遠慮なくいってくれ。絶対怒ったりしないし」
「私は大丈夫。心配なのはアキヤの方。本当に私と一緒で嫌じゃない?」
「嫌なわけないよ」
「そっか、なら良かった!」
リアナが肩に抱き着いてくる。……その、なんだか大胆だな?
彼女もそう思ったのか、耳まで真っ赤になり、頭から蒸気が噴き出した。
俺も恥ずかしすぎて死んでしまいそうだ。
何か別の話題を……そうだ!
「えっとだな! これから二人で部屋を使う上で、ルールを決めようと思う!」
「確かにルールは必要だと思う!」
リアナも恥ずかしかったようで、俺の提案に乗ってきた。
備え付けの机を挟んで向かい合わせに座った。隣に座るべきだったかな? あんなことがあったせいで、目を合わせづらい……。
「まずは、着替えに関してだ! リアナが着替えているときは俺は外で待ってるから、その間に着替えてほしい。間違えて入ることが無いように、俺が入ってきたら着替えてるって言ってほしい。ここまでいいか?」
「わかったわ。逆にアキヤが着替えるときもそれでいい?」
「もちろんだ。俺は見られても気にしないけど、あんまり見たいもんでもないだろうしな……って、どうした?」
「ううん、なんでもない」
リアナはなぜか少し恥ずかしそうに俺の身体を見てくるのだった。……まあいいや。
「二段ベッドがあるけど、俺が下でリアナが上。今とは位置が変わるけど……」
「それでいいよ。後は何かあるかな?」
「就寝時間、起床時間のすり合わせとかはおいおいやっていくとして、今決めておかないといけないのはこれくらいかな」
男女で同室。……もっとルールを細かく決めないといけないかと思っていたけど、列挙するとそうでもなかったことにちょっと驚いた。
あとは俺が理性をちゃんと保って、絶対に間違いが起こらないようにってだけだな。信頼関係ってのは築くのが難しいのに、壊れるのは一瞬なのだ。……頑張れ、俺。
「そういえば、夕食は何時ぐらいから食べられるんだ?」
学院生用の食堂では、朝昼夕の三食が用意される。朝は授業が始まる前まで、昼は休み時間の間なのはわかるけど、夕食の時間がわからない。
「確か六時くらいから八時までだったかな。この時間はまだ部活動とか生徒会が活動してる時間で人が少ないからおすすめだよ」
「そうか……それまで時間があるな。それに五時までもうちょっとか」
「どうしたの?」
「シャワー室の時間だよ。俺だけ男だから、みんなと同じ時間に使えないんだ。五時から六時の一時間だけ空けてもらってるから、その間に浴びてこないと」
「そうだったんだ。……初めて知ったかも」
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