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60話 戦争は終わった
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ある昼下がり、僕とノーファはエイジアのある病院を訪れていた。
「アレル、寂しいか?」
病院の廊下を歩きながら、相変わらずの高低差のない表情で訊いてくるノーファ。
「えっ、なんで?」
「顔に書いてある」
僕は苦笑いで取り繕った。
あのクラシコ平原の戦いから数日が経った。
僕らがバルサロッサを倒したことで、魔界は救われた。
国の防衛を指揮していたルンケ将軍の話によると、二人の四天翼がバルサロッサの薬で寝返った時はこれまでと思ったらしいが、そこに大きな助っ人の群れが現れたらしい。
そう、僕らが蟻の巣回廊で助けたドラゴン。その親に当たる炎竜王がドラゴンの群れを率いて、援軍に来てくれたのだ。ミランの言葉はどうやらあのドラゴンに通じていたらしい。それでも国中に甚大なる被害はあったのだが、戦争は終わりを迎えたのだ。
僕は目的の病室を開けた。
「あら、アレルさんにノーファさん」
エルナがニッコリと微笑む。
エルナはバルサロッサの洗脳から解放されてはいたが、奴に打たれた薬の後遺症でまだ全快はしていなく、入院している。
「ルンも来る予定だったんだけど、急に国民に平和を告げる式典をすることになったらしく……それに参加しないといけないから来れないって連絡があったよ」
「あれでもお姫様」
ノーファがぼそっと呟いた。
「ふふふ、そうですわね。ルンさんはお姫様ですもの」
「また時間ができたら顔出すとも言ってたよ」
「そのような式典が行われるのはいいことですの」
「そうだね」
「アレルさんも英雄なのですから、そういうのにいずれ呼ばれますわよ」
「いや、僕はそういうはのは苦手だよ」
「アレル、それ渡す」
ノーファは促すように言った。
「あっそうだ。これ、見舞品」
僕は病室の備え付けテーブルの上に、エッグハッピーと書かれたパッケージの箱を置いた。
「まあ! ありがとうですの。あら、これはエッグハッピー?」
「うん」
「食べてみたかったんですのよ。以前、ミランさんと旅の途中でパンケーキを食べに行ったとき、言ってたんですの。エッグハッピーっていうエイジア1のパンケーキも美味しいのよ! って……あっ」
僕とノーファの暗い雰囲気を察して、エルナは途中で止めた。
「ごめんなさいですわ」
僕は首を素早く数度横に振り、「そろそろリンがいなくなった現実を受け止めないと……」
ノーファが寂しげな表情で呟いた。
「ミランはどこに消えたんだろう」
「ちょっと待ってください。リンとは誰ですの? それに消えたって……?」
エルナは眉をしかめて、不思議そうに尋ねた。
「ああ、エルナにはまだ言ってなかったね。ミランは僕が人間だったときの幼馴染だったんだ。その時の名前がリン。まあ、それが発覚したのも最後の最後だったんだけど……」
「えっ」とエルナは少し驚いた表情をした。
「どうしたの?」
「つまり、ミランさんは元人間だった、ということですの……?」
「うん」
どこか意味深な表情を浮かべるエルナ。
「そのミランさんの肉体は消えていたのですのよね?」
「うん」
エルナは意味深な表情から一転、なぜか嬉しそうに微笑みを浮かべ、こう言葉を発した。
「それなら、ひょっとすれば……」
「アレル、寂しいか?」
病院の廊下を歩きながら、相変わらずの高低差のない表情で訊いてくるノーファ。
「えっ、なんで?」
「顔に書いてある」
僕は苦笑いで取り繕った。
あのクラシコ平原の戦いから数日が経った。
僕らがバルサロッサを倒したことで、魔界は救われた。
国の防衛を指揮していたルンケ将軍の話によると、二人の四天翼がバルサロッサの薬で寝返った時はこれまでと思ったらしいが、そこに大きな助っ人の群れが現れたらしい。
そう、僕らが蟻の巣回廊で助けたドラゴン。その親に当たる炎竜王がドラゴンの群れを率いて、援軍に来てくれたのだ。ミランの言葉はどうやらあのドラゴンに通じていたらしい。それでも国中に甚大なる被害はあったのだが、戦争は終わりを迎えたのだ。
僕は目的の病室を開けた。
「あら、アレルさんにノーファさん」
エルナがニッコリと微笑む。
エルナはバルサロッサの洗脳から解放されてはいたが、奴に打たれた薬の後遺症でまだ全快はしていなく、入院している。
「ルンも来る予定だったんだけど、急に国民に平和を告げる式典をすることになったらしく……それに参加しないといけないから来れないって連絡があったよ」
「あれでもお姫様」
ノーファがぼそっと呟いた。
「ふふふ、そうですわね。ルンさんはお姫様ですもの」
「また時間ができたら顔出すとも言ってたよ」
「そのような式典が行われるのはいいことですの」
「そうだね」
「アレルさんも英雄なのですから、そういうのにいずれ呼ばれますわよ」
「いや、僕はそういうはのは苦手だよ」
「アレル、それ渡す」
ノーファは促すように言った。
「あっそうだ。これ、見舞品」
僕は病室の備え付けテーブルの上に、エッグハッピーと書かれたパッケージの箱を置いた。
「まあ! ありがとうですの。あら、これはエッグハッピー?」
「うん」
「食べてみたかったんですのよ。以前、ミランさんと旅の途中でパンケーキを食べに行ったとき、言ってたんですの。エッグハッピーっていうエイジア1のパンケーキも美味しいのよ! って……あっ」
僕とノーファの暗い雰囲気を察して、エルナは途中で止めた。
「ごめんなさいですわ」
僕は首を素早く数度横に振り、「そろそろリンがいなくなった現実を受け止めないと……」
ノーファが寂しげな表情で呟いた。
「ミランはどこに消えたんだろう」
「ちょっと待ってください。リンとは誰ですの? それに消えたって……?」
エルナは眉をしかめて、不思議そうに尋ねた。
「ああ、エルナにはまだ言ってなかったね。ミランは僕が人間だったときの幼馴染だったんだ。その時の名前がリン。まあ、それが発覚したのも最後の最後だったんだけど……」
「えっ」とエルナは少し驚いた表情をした。
「どうしたの?」
「つまり、ミランさんは元人間だった、ということですの……?」
「うん」
どこか意味深な表情を浮かべるエルナ。
「そのミランさんの肉体は消えていたのですのよね?」
「うん」
エルナは意味深な表情から一転、なぜか嬉しそうに微笑みを浮かべ、こう言葉を発した。
「それなら、ひょっとすれば……」
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