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第3章:心のページ
第16話:消えていくもの
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カタカタと、キーボードの音だけが響く。
夜の部屋。ユウトは、スキャンしたラフ画を並べて、絵本のレイアウトを調整していた。
ミユキの残した線を、少しでも綺麗に残したい。
余白のバランス、文字の配置、フォントの柔らかさ――
ひとつひとつに迷いながら、それでも前に進めていた。
だが、それはあまりに唐突だった。
ファイルを保存しようとした瞬間。
画面がフリーズし、数秒後に真っ白になった。
エラー音。
嫌な汗がにじむ。
「……やめてくれ」
再起動。ファイルを開く。
でも――そこには、何もなかった。
「あれ……? ウソ、だろ……」
全身の力が抜けた。
データが、消えていた。
編集途中のファイル、補正した画像、配置した文章。
すべてが、無かったことになっていた。
ユウトは立ち上がり、頭を抱える。
再度フォルダを探し、復元履歴を調べる。
けれど、戻ってくる気配はなかった。
喉の奥から、何かがこみ上げてきた。
ミユキが描いた線。
彼女が込めた気持ち。
そして、自分がやっと“つなぎ始めた夢”。
それが、まるでこの世から消えてしまったような錯覚に襲われた。
「……ごめん……」
誰に言ったのかもわからなかった。
ただ、声が震えていた。
そのまま床に座り込み、スマホを手に取る。
迷った末、ナオキに電話をかけた。
「……どうした。なんかあったか?」
声を聞いた瞬間、胸がいっぱいになった。
「……データ、飛ばした。ミユキの絵、全部……俺……」
「……そっか。そりゃ、キツいな」
ナオキは、責めなかった。驚きもせず、ただ静かに言葉を返した。
「でもさ、絵が消えたくらいで、お前まで消えるなよ」
「……え?」
「データはまた作れる。絵はまた残せる。けど、あいつのこと、誰よりも覚えてるのはお前だろ?」
「……」
「完璧なんか目指すな。お前が“あの子を覚えてる”ってこと。それが一番大事なんじゃねーの?」
ユウトは、スマホを握ったまま、目を閉じた。
涙が一粒だけ、頬を伝った。
悔しさでも、情けなさでもない。
たしかに、胸の奥があたたかくなった気がした。
消えてしまった線。
でも、“想い”は、まだここにある。
何度だって描き直せる。
だって、ミユキの物語は――まだ終わっていないのだから。
夜の部屋。ユウトは、スキャンしたラフ画を並べて、絵本のレイアウトを調整していた。
ミユキの残した線を、少しでも綺麗に残したい。
余白のバランス、文字の配置、フォントの柔らかさ――
ひとつひとつに迷いながら、それでも前に進めていた。
だが、それはあまりに唐突だった。
ファイルを保存しようとした瞬間。
画面がフリーズし、数秒後に真っ白になった。
エラー音。
嫌な汗がにじむ。
「……やめてくれ」
再起動。ファイルを開く。
でも――そこには、何もなかった。
「あれ……? ウソ、だろ……」
全身の力が抜けた。
データが、消えていた。
編集途中のファイル、補正した画像、配置した文章。
すべてが、無かったことになっていた。
ユウトは立ち上がり、頭を抱える。
再度フォルダを探し、復元履歴を調べる。
けれど、戻ってくる気配はなかった。
喉の奥から、何かがこみ上げてきた。
ミユキが描いた線。
彼女が込めた気持ち。
そして、自分がやっと“つなぎ始めた夢”。
それが、まるでこの世から消えてしまったような錯覚に襲われた。
「……ごめん……」
誰に言ったのかもわからなかった。
ただ、声が震えていた。
そのまま床に座り込み、スマホを手に取る。
迷った末、ナオキに電話をかけた。
「……どうした。なんかあったか?」
声を聞いた瞬間、胸がいっぱいになった。
「……データ、飛ばした。ミユキの絵、全部……俺……」
「……そっか。そりゃ、キツいな」
ナオキは、責めなかった。驚きもせず、ただ静かに言葉を返した。
「でもさ、絵が消えたくらいで、お前まで消えるなよ」
「……え?」
「データはまた作れる。絵はまた残せる。けど、あいつのこと、誰よりも覚えてるのはお前だろ?」
「……」
「完璧なんか目指すな。お前が“あの子を覚えてる”ってこと。それが一番大事なんじゃねーの?」
ユウトは、スマホを握ったまま、目を閉じた。
涙が一粒だけ、頬を伝った。
悔しさでも、情けなさでもない。
たしかに、胸の奥があたたかくなった気がした。
消えてしまった線。
でも、“想い”は、まだここにある。
何度だって描き直せる。
だって、ミユキの物語は――まだ終わっていないのだから。
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