君がいない夏

るいす

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第3章:心のページ

第17話:眠れない夜

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 夜中の2時。
 ディスプレイの明かりだけが灯る部屋で、ユウトは目を擦りながら画面に向かっていた。

 編集作業、授業の課題、そしてバイト。
 日々の時間が綱渡りのようになってきていた。

 脳がだんだんと霞んでくる。
 でも、作業を止めると、逆に心がざわついた。

 「あと一ページだけ……」

 つぶやいた声に、自分で苦笑する。

 気づけば、そんな言い訳で毎晩、寝る時間が後ろへずれていた。

 絵の補正。ページの順番。
 文字の位置を1ミリ単位でずらしてみたり、色味を調整したり。

 こんな細かいこと、誰が気づくだろう。
 でも、気づいてほしいのは、たった一人の人だった。

 ふと、スマホの画面に目をやると、「2:17」の表示。
 さすがに目が重い。頭も回らない。

 それでも、眠る気になれなかった。
 この作業が止まったら、何かが切れてしまいそうな気がした。

 冷蔵庫を開けると、炭酸水とコンビニのカフェオレ。
 ためらった末に、カフェオレを取る。

 キャップを開けると――
 「お前さ、ちゃんと寝てる?」

 玄関のドア越しに、声がした。

 ドアを開けると、ナオキがコンビニ袋を片手に立っていた。

 「……お前、なんで……」

 「なんとなく。起きてる気がしてさ」

 ナオキは部屋に入り、袋の中から缶コーヒーを2本取り出した。

 「これ、差し入れ。ブラックな。お前、カフェオレばっか飲んでそうだし」

 「……正解すぎる」

 「だろ?」

 ふたりで笑ったあと、しばらく缶のプルトップを開ける音だけが響いた。

 「無理してねぇ?」

 「……ちょっとは、してるかも」

 「でも、お前……なんか、いい顔してるよ」

 ナオキがぽつりと言った。

 「いい顔?」

 「うん。ミユキがいた頃のお前より、今の方がずっと“生きてる”感じがする」

 ユウトは少し驚いて、言葉に詰まった。

 でも、否定はできなかった。

 確かに、しんどい日々だった。
 でも、目の前の物語に向き合っている自分は――不思議と、嫌じゃなかった。

 どこか、心の奥で「まだ歩ける」って思えている。

 「……ありがとな、ナオキ」

 「何が?」

 「ずっと、見ててくれて」

 「見てるよ、そりゃ。お前、友達だからな」

 ナオキは照れ隠しのように缶を傾けて飲み干した。

 その夜は、ほんの少しだけ、眠ることができた。

 短い眠りの中、夢を見た。
 ひまわりの髪を揺らす女の子が、星の上でこっちに手を振っていた。
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