討妖の執剣者 ~魔王宿せし鉐眼叛徒~ (とうようのディーナケアルト)

LucifeR

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† 二の罪――我が背負うは、罪に染まりし十字架(伍)

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「そういえば今日、とある男により魔王とやらが召喚されたんだとよ」
 煙管男は続けながら、揚げスパゲティの一本を手に取ると、くるくると回して差し出した。
「……悪魔は嫌いか?」
「ああ。いや、好きか嫌いかで言えば――戦ってみたい」
 無口な後客からの質問に、今までの気だるげな声へ僅かに色を乗せて返答する。
「ほう。なれば貴様が出会えば――」
「この俺様とどちらが強いか、試してみたいもんだね」
 言い残して歩き出すと、いつの間にか煙管と持ち替えたらしいダーツを軽く投げ、彼は消えた。

「……いい腕だ」
 見事なまでにブルへと刺さった矢。残された若者は、銀色に輝く前髪の切れ間よりそれを一瞥して嗤うと、スパゲティの先端を噛み折った。

               † † † † † † †

「深夜に外出なんて珍しいね。思春期こじらせた?」
 認証を完了してゲートをくぐるや否や、エントランスに佇む後ろ姿が呼びかけてくる。振り向きもしない三条だが、その声色はどことなく曇っていた。
「雨でも、見てたのか?」
「……空が泣いてるみたいだね」
(なんだ、このロマンチストは)
 溜息を漏らしつつ、追い越しざまに缶コーヒーを握らせる。
「泣いてたのは空じゃなくて、あんたのほうじゃねーのか」
「……なにそれ。急にポエマーみたいになっちゃって。早速ペース握られちゃってるみたいだけど、きみが言っても似合ってないから」
「いやいや、日米同盟並に固い結束だし」
「どう考えてもあっちがアメリカだね」
 背中合わせで悪態をついてくるのは、いつもと変わらぬ彼女だ。
「すっかり元気になったみたいじゃねーか。単純で何より」
「だーかーら、最初から泣いてないもん! あと単純でもないし」
「……太った、とか?」
「うるさい。出生時から50キロ近く増えたけどなにか?」
 これは逃げじゃない。仮に逃げだとしても、戦略的撤退だ。そう自分に言い聞かせ、俺は再び歩き出す。
「……嫌いなんだよ、涙は。泣いたとこで何かが変わるわけでもねーだろ」
 それだけ吐き捨てて、足早に去ろうとした俺の肩を、小さな手が掴んでいた。鍛えているだけあって、すごい力だ。いくら何でも強すぎだろ、そう思ったとき、
「待って――――」
 ふと飛び込んできた言葉は、意外にもやわらかい響きに包まれていた。
「もっと、話してって……いつもみたいなくだらない話でいいから」
 掠れた喉で囁く三条。

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