15 / 139
† 三の罪――死神と演武(ワルツ)を(弌)
しおりを挟む「速いねー。楽しそうで何よりだわ。けどよ、自然界じゃ弱い方が周りを回るんだぜ」
ルシファーの力か、自分でも驚くほど早く、この俊足に慣れてきているようだった。そうと来れば、向こうが錯乱に勤しんでくれているうちに仕留める。
「まさか……自分から仕掛けるのか!?」
姿勢を前傾させた俺に驚きの視線が浴びせられたが、カウンター狙いではおそらく相手の思うつぼだ。こういうタイプはさらなる加速を残しているだろうから、優速にある彼がここまで様子見した上で、迎撃できるような甘い斬り込みを繰り出すとは考えられない。
「これで――どうだぁああああッ!」
最高速で直進。それでもスピードに生きる彼は、当然の如く身構える。まあここまでは予想通りだ。勢いを利用して、頭上を跳び越える。
「残念、こっちでしたー」
ロジェの右腕と共に片方の剣は空を斬り、もう一振りは、上体を回転させた反動で勢い余って後ろに流れた。この刀身に着地し、強引な体重移動に魔力推進も加えて、空中から後回し蹴りを見舞う。
「そこまで」
後頭部に渾身の一発を振り下ろされた彼が倒れ込む音より早く、所長による決着の合図が響いた。
「お見事。勝者、日本支部・緑川信雄!」
所長のコールに続いて、拍手が起こる。
が――――
「久々に帰国してみれば、今の十二位があの程度とはね」
オリーヴドラブのシャツに、カーキ色のジャケット。そのファッション同様に無愛想な少年の登場によって、一帯は瞬く間に静まりかえった。
「これは茅原さん。遥々ご足労いただき恐縮です」
立ち上がって礼をすると、上座を譲る所長。
「フン、白々しい。まあ俺にも相手がいるのなら受けるが」
茅原と呼ばれた人物は当然のように座り、煙管を取り出した。茅原知盛――妖屠の頂点に君臨する七騎士の中でも、異次元の実力を誇ると聞く。初代一位の所長がこんなにも気をつかうとは、史上最強の妖屠という呼び声も的外れではないみたいだ。
(……しっかしこのガキ、どこかで会ったような――――)
いや、そんなわけはない。第一、七騎士は基本的にローマ本部を守っている。俺みたいな入って一年もしない下っ端が見かける機会はないはずだ。そもそも、七騎士の大半は強すぎて模擬戦にも参加しない。なんで今回は顔を出したんだろうか。
「貴殿では何人がかりでもご満足いただけぬだろうよ。妖屠が減ってばかりの昨今。話相手は喜んで務めるゆえ、ご観戦で勘弁されたし」
所長の横で沈黙を貫いていた見慣れぬ男が微笑みかける。帽子を被り、左目を除いて包帯に覆われているのだが、嗤っているということは滲み出るように感じられた。
「不要だ。遥々こんなところまで来てお前なんかと喋るなんて、つまらん戦いがさらにつまらなくなる」
「珍しく馬が合うと思ったのだが、至極残念。若さゆえの勢い等に貴殿が興味を抱かれるとはな。まったく、無茶はできる内にしておくものだ」
そう言い終わると、謎めいた彼は、こちらを射抜くように見据えてくる。風貌はともかく、その不気味なオーラに悪寒がして、俺は目を逸らした。
「いやー、ロジェヴェンに当てるとはたいしたもんだ」
多聞さんに肩を叩かれ、平常心を取り戻す。
「知覚が強化されてるから視えた感じー? 彼の完全上位互換みたいなのがいるんだけど、そういうのには通用しないかもねー」
確かに、あの攻略法を思いついたとしても、今までの俺には、コンマ数秒の合間にやってのけるだけの身体能力がなかった。やはり、ルシファーの――――
「あなたが対戦相手の二十六位くん……楽そうな相手でよかった」
0
あなたにおすすめの小説
結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。
佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。
結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。
アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。
アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他
猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。
大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる