討妖の執剣者 ~魔王宿せし鉐眼叛徒~ (とうようのディーナケアルト)

LucifeR

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† 三の罪――死神と演武(ワルツ)を(弐)

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「いやー、ロジェヴェンに当てるとはたいしたもんだ」
 多聞さんに肩を叩かれ、平常心を取り戻す。
「知覚が強化されてるから視えた感じー? 彼の完全上位互換みたいなのがいるんだけど、そういうのには通用しないかもねー」
 確かに、あの攻略法を思いついたとしても、今までの俺には、コンマ数秒の合間にやってのけるだけの身体能力がなかった。やはり、ルシファーあいつの――――
「あなたが対戦相手の二十六位くん……楽そうな相手でよかった」
「らぶりェッ!?」
 か細い声と小さな身体。普通なら怒るような言葉をいきなり投げかけられたが、振り返った先の少女があまりに可憐すぎて、俺の唇は硬直してしまった。そう、たとえるなら雪の精。長い髪と肌はいずれも純白で、人体から生まれたとは思えないほど、完成された美しさだった。
「おやおや、みつきくん。相変わらずなに考えてるのかわかんない顔してるねー。しっかし、さっきの試合できっちり勝ったのに、楽な相手呼ばわりとは厳しいものだ」
「……ほんとのこと言っただけ」
 彼女は多聞さんには目もくれず、生気のない瞳と共に、また無神経な発言を浴びせてくる。
「今グサッって音した! 絶対グサッっていった!」
「どうせ後で一方的にグサッってするし」
「……初対面だよね。僕たち初対面なんですよね? いきなりなんなんすか! 訴訟も辞さない」
「……断罪ネメシスの七騎士、“大鎌”のみつき――三位と二十六位とは、ずいぶんと実力差マッチだね。なんならぼくが戦いたかったなあ」
 割り込んできた三条にも、反応を見せない少女。それどころか、その無機質な目は明らかに、その控え目な鼻の頭に止まった虫を見つめている。
 虚無――色で表すなら、無色透明。本当にこの子が多聞さんよりも上なんだろうか。
「え、もしかしてぼく無視されてる……?」
「これは必要な時にしか喋らん」
  いつ間合いに入ったのか、煙管小僧が数歩横に立っていた。
「ちっ、茅原さん……!」
 呆気にとられるがままに不思議ちゃんを眺めていた三条が、途端に姿勢を正す。
「おお、久しぶりだねー、茅原くん。たしかローマ本部にいたはずじゃ」
「お前たちがあまりに不甲斐ないんでな。あと、これが試合で呼び出されてるからおもりだ」
 そう告げると、みつきという少女を煙管で指した。人形のような子どもと、ふてぶてしい子ども。パッと見、とても組織のトップスリーのうちの二人がいる光景とは思えない。
「では、次の二人。三位、北畠みつき。二十六位、緑川信雄の両名はスタンバイお願いします」
 アナウンスを行うのは、日頃の澱んだ声が嘘のような柚ねえ。この人は、いやらしいほどのよそ行きっぷりだ。そんなことを思案しているうちに、模擬戦用の刀を再び渡された。確かめるように、握り締める。
 そうだ。今はただ、眼前の相手を――叩きのめす……!


(おいおい……マジかよ)
 当初はこんな華奢な子が全世界の妖屠でも三本の指に入るなんて想像もできなかったが、構えたときの佇まいで、称号に足る実力者だと実感した。相変わらずボーっとしているように見えて、鎌を手にした彼女は“無貌の死神”という異名に相応しく、一切の隙がない。
 俺たちを隔てる距離は、およそ十メートル。生唾を飲み込み、呼吸のタイミングを見計らうのだが――――
「ああ、戦士というより処刑人か」
 いや、むしろ大鎌を携えた姿と底知れぬ恐ろしさは、文字通り死神のようでもある。それぐらい、この相手には起伏というものが存在しなかった。これでは、みつきがいつ動くかも――――
「ッ……お!?」

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