討妖の執剣者 ~魔王宿せし鉐眼叛徒~ (とうようのディーナケアルト)

LucifeR

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† 五の罪――運命(さだめ)との対峙(弐)

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「君は反応もいいし、身体だって強い。持ち前の剣技に加え、教えたことを片っ端から身につけてる。だがそれゆえ、技に頼り過ぎなのも事実。日々の演習でいまだ僕に有効打を与えられていないのが、なによりの証拠だ。君は戦争を経験らない。極限の攻防はいかに僅かであれ、その差が命を左右する。既存の攻撃を勢い任せにかますだけじゃ、いずれ通用しない場面が訪れるぞ。もっと俯瞰的に見ろ。視野が狭い奴は乱戦で死ぬぞ」
 宿舎に戻って、多聞さんからのダメ出しを聞く。
「ってなわけで、次は大事な大事な栄養の補給だ」
 なぜこの人たちは、俺を当たり前のように見つめてくるのか。
「つまりアレっすね、作れと。ちぇっ……十位以内は幹部食堂が使えんじゃないすか」
 俺の不平に、多聞さんは大袈裟に口を尖らせる。
「えー、仕事じゃないときぐらいお偉方の顔色うかがわずに過ごしたいよー」
 彼はチーム多聞丸の構成員でなくなった今でも、こうして俺たちと同じ宿舎に寝泊まりしていることが多かった。若者だけでは自己管理が不安なのか、上層部も黙認しているようだ。
「……おなか減った」
「はよ用意せい。間に合わなくなっても知らぬぞ!」
 視線がつらい。間に合わなくなると、どうなってしまうのかは分からないが、女性陣も弱り果てているようだった。
「しゃーない。余ってる食材まとめてカレーだ。ただし、カレーと言っても俺が作んのは日本人らしくカレーライス! ナンとかいうシャレたもんはねーけど、大人しく食うんだぞー?」
「はよ」
 こいつに至っては稽古したわけでもないのに、腹が減っては戦はできぬ、と言いたげな面持ちである。
「……まだか?」
 いやいや、まだ食材を切り終ってもいないのだが。
「文句ばかりだね。ほんとーにルシファーに次ぐ実力あるの? だいたい、ベルゼブブって言ったら普通男だよね。あー、イケメンの悪魔がよかったなあ……」
「なんと無礼な……わ、吾輩の力をうたがうのか! まあそちのために使うことなど有りえぬがな」
 まったく、先が思いやられるコンビだ。

「魔王の右腕にこのような物を出すとは、おそれ知らずめ……!」
「……フッ。真なる王者とは、何時如何なる場とて存分に愉しむものよ。人間共の文化を試す良き機会ではないか、と魔王さんが申してます」
 我ながら雑な出任せだったが、ベルゼブブは恐る恐るカレーを口に運んだ。
「あッ! あぅううう……うぬぬ」
 辛さと温度に驚いたのか、彼女は大きな瞳に涙を滲ませて身悶えする。
「大丈夫か!?」
「だれも熱いなぞ言っておらんわー! 吾輩にかかれば、こここ……こんなもの……!」
 いや、俺も熱さに関して口に出してはいないのだが。しかめっ面でかっ込み始めた地獄元帥様は、むきになりやすいお年頃のようだ。
「……ふむ、わるくないのう。人間どもの文化とやら、光栄に思うがよい」
「うん。似合ってるぜ、そのウサちゃんスリッパ」
 女の子が来た時のために用意していたはずが……いや、間違ってはいないんだけど。さすがに、この外見年齢では、文字通りの女の子になってしまう。
「だが思い上がるなよ、料理ぐらい吾輩もできるぞ! ご主人さまはいつもうまいと言ってくれるのだ」
「ほんとーに……?」
 訪問販売をどう追い返そうか、時間を稼ぎつつ考える主婦のような疑り深い目で流し見る三条。
「うむ。あまりのうまさに震えながら食べておるのだからな」
 それは果たして、美味しくて震えているのだろうか。
「ゼブブっち、ご飯粒ついてるよー」
「えっ、ア……アクセサリーだ!」
 多聞さんを睨みつけ、アクセサリーを外すと、彼女は腰を上げる。
「んな程度でいちいち家出してたらキリねーぞ」

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