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† 五の罪――運命(さだめ)との対峙(参)
しおりを挟む「ゼブブっち、ご飯粒ついてるよー」
「えっ、ア……アクセサリーだ!」
多聞さんを睨みつけ、アクセサリーを外すと、彼女は腰を上げる。
「んな程度でいちいち家出してたらキリねーぞ」
「放尿だ」
あまりに唐突かつ直球な物言いに、三条が溜息をついた。
「男がいるとこでそういうこと言わないの」
「男がいなくてもカミングアウトすんな。そーいや、風呂も自由に使っていいぞ。ただし、俺が入ってるときラッキースケベでもしたらエクソシスト呼ぶが」
「案ずるな。此の者は胸が一定以上に突出した人間しか異性として認識できぬ故、と魔王さまが」
多聞さんの冗談は的外れでもないのが、またタチ悪い。
「あんたも勝手に誤解を招くようなこと言ってんじゃねー!」
野暮用だかで多聞さんが出かけ、満腹になったベルゼブブはおねむのようだ。
「きみ……変わったね。ここに来たときは、もっと片意地なかんじだった。正義はなにか見出せなくとも、自分の納得いかないことには挑まずにいられないような」
一緒に食器を片づけていると、三条が話を振ってきた。
「今でも大して変わんねーよ。そもそも、正義の味方ってよく言うけど、その正義って誰のことなんだろな」
彼女は掴んだままの皿に目を落とす。
「わからない……ただ、ぼくは恩人に救われたとき、ぼくが彼みたいに強ければ他の人たちもたすかったんだって思って、戦いを教えてもらうことにしたよ」
「親代わりだったっつー人か。俺もあんたらと出会った日、似たようなこと考えて一緒に行くって決めた。こんな世界があるなんて思ってもなかったし、いきなりのことで驚いたが、意味があんなら進むしかねーって。これが運命なら、俺は剣で切り開いてやるって。そう、誓ったんだ」
「きみのそういうとこは最初からすごかったね。ぼくはいまだにわからない……あの人の目には、なにが映っているのか。その目指す先にはなにがあるのか――――」
俯く三条のまなざしは、手元に注がれているようで、視ているのは遥か彼方だった。
† † † † † † †
「……美味い。酒が美味い日は、いい風が吹く」
闇夜にコートを靡かせ、これまで世界に存在した千数百名の妖屠で史上最強と呼ばれる男が、ブーツの音と共に、凍てつく外階段を上ってゆく。
「これまでは眼前の脅威を排除することに身を捧げてきたが、それでは救える者も救いきれん。排除するべき敵が巨大すぎて見えなかったのだな」
人々はこの漆黒に包まれた世界を見て、その暗さに怯えるばかり。誰が太陽を隠しているか、については向き合おうとしない。
「お前はかつて、なぜ強くあり続けるのかと言ったが、単純だ。理想を実現するには、現実を変えねばならないが、それに必要なのは力。創るのも壊すのも、強者にのみ許された権利だ。その為に、俺は――誰よりも強くなってみせよう」
ビルの屋上へと到った彼は、一面に控える者たちを一瞥し、紫煙を吐き出した。
次に、眼下に広がる夜明けの来ない世界を見渡すと、おもむろに告げる。
「バスティーユ監獄の襲撃が革命への第一歩だった。確かに、バカと犯罪者は使いようだ」
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