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† 七の罪――劫火、日輪をも灼き尽くし(弐)
しおりを挟む依然としてベリアルは健在なのか、血のように赤々とした雨が、両雄を隔てるかの如く降りしきる。
「然れば重畳。心置き無く貴様を返り討ちに出来ると云うものよ」
ルシファーの周囲数十メートルに及ぶ地面が、紫の魔法陣で覆われた。
「……いつかの質問にも答えるが、察しの通り、人間とは呼べん身になってしまってな。もう人間に敵はいない」
茅原は不敵に嗤い、続ける。
「一度、戦ってみたかったんだ。本当の人外と。化け物なら――悪魔の一匹や二匹、ぶっ殺してみせんとなあ!」
そう言って、彼は二本目の剣も抜くと、左のみ逆手に構えた。
「さて、命のやりとりといこうか……!」
次の瞬間、茅原は一足で間合いを詰める。
「温いな」
右半身に迫る上下二段同時の回転胴を、氷壁を生み出して、食い止める魔王。飛散した破片が意思を持っているかのように、茅原へと上下左右より殺到する。しかし、
「……それは――お前が、か?」
数十はあった氷の刃を残らず叩き落とした茅原が、間髪入れずに追撃を撃ち込んだ。
「退屈せぬな。バアルの矛を思い出す」
ルシファーは舞い上がって避けると、上空から魔力弾の乱射を浴びせる。
「悪魔に悪魔と比べられてもなあ……ッ!」
次から次へと躱し、弾き、逆に短矢を投擲して反撃。
「並の悪魔と同列に語るでない。我等悪魔は二つに分けられる――地獄の覇者たる此の俺と、其れ以外だ」
危うげなく掴み取った矢を握り潰す。
「ならば地獄の王様とやらに、この世の地獄を見せてやろう」
指の股に挟んだ数本の矢を、続々と投擲する茅原。ルシファーは槍を生成し、これを涼しい顔で防いでゆく。ついに槍が砕けたのを史上最強の妖屠が見逃すはずなく、無数の矢と魔力弾が一斉に放たれた。
が、
「……我が得物を使わせるとは」
ルシファーが黒々とした剣で薙ぎ払うと、それらは刀身に触れるや否や消滅してゆく。
「やっと魔王らしい武器を出したか。なら教えてやろう。俺がなぜ“史上最強の妖屠”と呼ばれているのかをな!」
熾烈極まりない未知の斬り合いに、多聞ですら息を呑んでいた。
「なんて応酬なんだ! しかも二人とも、あれで余力を残している――って、桜花くん……!?」
信雄だけでなく、もう一人の部下までもが身を屈めて呻いている。
「ぅうっ、あの子が……暴れている……みたいです」
「ゼブブっち、たのむよ――――」
止まない緋雨の彼方を、静かに多聞は見つめた。
「十数年で此の高みに到ったとは、類い稀なる強者であるな。然れど無謀。余に火を点けた以上、帰趨は決した」
突風の如く放出された魔力の渦が、双剣の片方を放り飛ばす。
それでも、
「無茶もできないような男で終わる気なら、最初からこんな化け物に挑まんさ」
動じもせずに空いた手で裏拳を繰り出し、回りながら懐へと肉迫する茅原。
「実力で負けてれば百二十パーの実力で挑む!」
手数を増やして攻め続けるも、華麗に虚空を滑る堕天使は直撃を許さない。
「なおも届かん相手なら、百五十パー引き出すまで……!」
大きく弧を描き、後ろ宙返りでルシファーが離れた。
だが、茅原は一転して、距離を縮めようとしない。
「そういう訳だ。こちらも奥の手もご覧に入れよう」
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