討妖の執剣者 ~魔王宿せし鉐眼叛徒~ (とうようのディーナケアルト)

LucifeR

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† 九の罪――殺し屋殺し(肆)

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「ベルゼブブ、ここは彼を信じよう。ぼくたちの相手はあっちだ」
 桜花がガンランスと化したデスペルタルで指した先には、またも十は下らない新手。
「むぅ、人づかいが荒いのう」
 愚痴をこぼしつつも、自分から彼女に憑依する。
「まったく――――」
 深緑の燐光を発しながら、桜花は苦笑いを浮かべた。
「きみ、人じゃないでしょ……ッ!」
 翼を得たかの如く、華麗に天へと舞い上がる。
「な……ッ!?」
 三次元を自在に飛び回る桜花と、平面にとらわれたエージェントたちでは勝負は見えていた。一方的に頭上から呪詛を浴びせられ、成す術もなく腐り落ちてゆく一同。
「これが腐蝕の力……すごい、け……ど――――」
 一掃し終えた頃には、桜花は苦痛に身悶えし、バランスを崩していた。人の身に余る権能を行使した負荷が、容赦なく彼女を襲う。大地へと墜ちゆく身体より、ベルゼブブが抜け出て、彼女を抱えて降り立った。

「あんたは強い。でも、本当にそれだけでいいのか? その奥義だって自我がうっすいから使えんだろ。せっかくかけがえのない一人として生まれたのに、身代わりいっぱい生み出して自分を見つけてもらえねーなんて虚しいもんだぜ」
 視抜こうとしても、いずれも虚無――信雄の瞳に映るのは、すべて他ならぬ北畠みつきであった。ルシファーの力はいまだ健在なようではあるものの、暗示や幻に惑わされないはずが、この有り様とは、契約者が引き出しきれていないことになる。
(……やっぱルシファーの器として、俺じゃ素体が弱すぎるのか…………)
 意を決したように、彼はカルタグラの魔力を増幅させた。
「本物がわからねーもんはしゃーない、力技で全て迎撃し尽くしてやるよ!」
 波動だけで人の生命力を奪うほどの代物。刹那の機微が次の瞬間の首のありかを左右する瀬戸際で制御など、人間の域を超えた離れ業だ。そうしている間にも、再び多数のみつきが殺到する。
「――ざんねん、無理だよ」
 同じように小さな唇を動かし、同じような声質で四方八方から囁く分身たち。
(集中だ。ここで匙加減を見誤れば腕がちぎれる……暴れさせ過ぎちゃ自爆。おとなし過ぎても墜としきれねぇ。抑え込めるだけの量で解放し続けろ――――)
 紫の業火がカルタグラの全周を駆け巡り、螺旋を成した。
「……だから嫌いなんだよ」
 目前の敵影から、斬り捨ててゆく。
「そういう計算上は、とか――――」
 反す刃で一つ、また一つ。
「可能性が、みてーなヤツはよぉ」
 必滅の焔に触れた虚像が、ことごとく霧散する。
(……くっそ、なんつー活きの良さだ。抑えても抑えても暴れやがって……! それでも――――)
 それでも、腕を苛む重圧に耐え、猛る魔剣を振るう狂乱の剣士。
「まだまだーッ!」
 息もつかせぬ連撃は、幻影の接近を阻み続けているが、蛇の如くうねる魔力で無数の剣閃を描く信雄も、限界が近い。そして、残る一人が間近に肉迫していた。
「無理できんのも……人間だからだろうがァああああ!」
 すれ違うのは、他ならぬ北畠みつき本人。対して、信雄の繰り出した胴払いもまた一筋。
「――――っ!」
 交錯は、一瞬だった。

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