討妖の執剣者 ~魔王宿せし鉐眼叛徒~ (とうようのディーナケアルト)

LucifeR

文字の大きさ
81 / 139

† 十三の罪――崩壊への序曲(漆)

しおりを挟む

「みんながこれからどうするかは、それぞれが好きに決めなさい。一緒に来てほしくないと言ったら嘘になるけど、もう隊長じゃないのに巻き込むような野暮な真似はさすがにしないよ。背負う者がいる人はすぐに決められないだろうし、あくまで忠誠心を貫き通すって生き方もあることでしょう。ただ、考えることをやめないで。歴史が動こうとしている今、自分がなにをするべきか。それがぼくの歩む道と違った答えだったとしても、ぼくに非難する権利はない。ぼくが間違っていると思うのなら、全力で立ち向かえばいい。遠慮は無用。戦場で会えばこちらも手加減はしない。今まで身につけたすべての技でかかってきなさい」
 身を強張らせていた部下たちも、いつの間にか、涙ながらに聞き入っていた。
「……じゃあ、最後に――」
 一同を見渡し、表情を崩す元隊長。
「みんなに会えて、ほんとーによかった。最後までこんな陳腐なことしか言えない隊長を許してね。みんなといろんな任務につき、いろんな経験をした。この先どうなろうと、ぼくたちの心にある思い出は嘘じゃない。どうしようもなくなった時は、一緒に過ごした日々を思い出してくれたら嬉しいな。みんなはどうだったか、わからない。人それぞれ思うことはあるでしょう。でも、ぼくは楽しかった。どんなときも全力で生きた。大切な仲間とともに生きてきた。全力で鍛錬し、全力で戦い、全力でご飯を食べた」
「俺より食ってたんじゃねーか?」
 信雄に構うことなく、彼女は続ける。
「まあ人生ってのは思い通りにいかないものだね。これから困難に直面することもあるでしょう。つらいこと、苦しいこともきっとあるでしょう。それでもたちむかわなければならない。だから――最後の最後まで一生懸命に生き抜きなさい。人生に勝ち負けなんてないけど、後悔のない一生だって最後に本人が思えたら、少なくとも負けては無いでしょ」
 少し照れくさそうにはにかむと――――
「今まで……ほんとーに、ほんとーにありがとう。みんな」
 三条桜花はそう言い残して、戦友たちの元を後にした。

「良かったのかよ、あれで」
「別れはつらいけど、笑顔で終われてよかった。やっぱりさ、ぼくの隊はしめっぽいの合わないじゃん」
「……ま、おまえがいいならいっか。さて、二手に分かれよう。象山のこともある。俺はルシファーの知覚があるし先に行って様子を見てくる」
「気をつけてね。ぼくたちも被害者の救助をしながら向かうよ。ベルゼブブ、追える?」
 彼女に尋ねられ、ベルゼブブは当然とばかりに鼻を鳴らす。
「フン――同じ世にあって、吾輩がご主人さまを見失うはずがないじゃろ。付き合ってやるから好きにせよ」


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。 結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。 アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。 アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他

猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。 大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。

処理中です...