82 / 139
† 十四の罪――咎人たちの慟哭(弌)
しおりを挟む燃えゆく街並みを桜花は駆った。
暑い。なれど足を緩めず、熱風の中を駆け抜けてゆく。鼻腔を衝く異臭。肺が痛む。それでも――彼女の疾走は、何人にも止められない。
(組織は辞めようと、なにがあってもぼくのすることは変わりはしない。多聞さんの遺志を守り、戦士としての生き様を守り、人々を守り抜く! ちっぽけなぼく一人の力でできることがある限り、ぼくは……ぼくは、なにがなんでもそれをなし遂げてみせる……!)
呼吸は乱れ、すすに塗れようと、なおも直走る。眼前を埋め尽くす地獄絵図を、どこまでも生存者を捜し続ける。
もう、どれだけ走り続けているのであろうか。いつの間に怪我を負ったのか、道筋に点々と血の跡が続いている。だが彼女は、依然として速度を落とそうとしない。そのようなことは、彼女にとって問題ではなかった。降りかかる火の粉が身を焦がそうと、その鋼の心までは焼き尽くすことはできない。
「――――ッ!?」
ふと、幼子の泣き喚く声が耳に飛び込んできた。咄嗟に桜花は、一帯を見回す。黒煙の狭間に女児を見つけたとき、彼女は考えるよりも先に駆け寄っていた。
「大丈夫だよ、大丈夫だからね…………」
何と声をかければいいか考えつかず、彼女の薄い肩に手を遣る。
この年齢ということは親がいるはずと気づいて、朱い視界で眼を凝らす桜花。瓦礫の下より覗く半身に、その目が止まった。
(まだ生きてる……!)
一直線に突進する。どこにこれほどの力が残っていたのだろうか。自分でも理解らない。傷つき、疲弊したはずの肉体は、彼女自身も驚くほどに軽かった。
(……ぼくは多聞さんに憧れ、妖屠になりたいと思った。でも、妖屠という肩書きなんてもういらない)
崩れた家屋が行く手を阻むが、構わず押し退けてゆく。傾いた柱に、跳ね返された。
(多聞さんみたいに、人を守れる強い妖屠になりたかった。妖屠の大義とは、組織に尽くすこと――だけど、野望のために民をこんな目にあわせる組織につかえるのが大義なら…………)
「……そんな大義なんて――――」
燃えたぎる炎にも負けず劣らずの形相で、桜花はデスペルタルに手をかける。
「ぼくが斬って捨てる!」
勢い良く振りかぶり、繰り出す撃ち込みは全力。
「そうまでして世を再生するっていうなら……ぼくは妖屠をやめてでも止める!」
幾度も斬りつけて突破したが、重なっていた別の柱が滑り出して脇腹を突いた。
「ごぶぅ……ッ!」
膝から崩れ落ち、悶絶する。なれど、顔を上げた彼女の瞳は、今なお闘気を失っていなかった。震える手で、再び得物を握る。
(……多聞さん、力を貸してください……!)
0
あなたにおすすめの小説
結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。
佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。
結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。
アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。
アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他
猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。
大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる