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† 十八の罪――地獄元帥(漆)
しおりを挟む「まあ腐蝕でどうにかなるようなたぐいとも思えぬがな――ひとつ聞くが、その炎とやらは人知をこえた高温じゃったのかね?」
怪魔の大群を殲滅し終えたのか、少女の横に小さな相棒が立っている。
「ベルゼブブ!? もうかたづけたんだね」
思いがけない援軍に驚きつつも、彼女は頬を緩ませた。
「……でも大丈夫? 飛べなくなるぐらい魔力が――」
「心配しとるばやいか。そんなもの、あとにせよ」
「いや、あともなにも……もう今のぼくたちじゃ…………」
肩を落とし、おおげさに嘆息を吐くベルゼブブ。
「どこぞのうつけもほざいておったろう。よくもわるくも、あきらめがわるいのがそちであると」
「そんなこと言われたって、あれは全身を防護障壁で覆ってて、魔術は通用しないし、斬り刻んでも再生するんだよ――核がわからないかぎり、このままじゃやられるのを待つだけ」
力なく敵影を見上げ、桜花が零す。
「まったく、少しは成長したと思ったやさきにこれとは……先が思いやられる。核がわからぬ? ならば、まるごとやきつくすしかなかろう」
「君だって、今の状態じゃ――」
「そちといっしょにするな、小娘が! 吾輩が地獄元帥だとゆうことをわすれたか」
見違えるようなオーラを具現化したかの如く、その小さい身体が猛烈な高温を発しだした。
「ベルゼブブ、なにを……?」
「すこしは役に立つのじゃ、公爵――――」
ゆらめく紅焔を身に纏い、彼女は呟く。
「そ、それは……ッ!?」
「吾輩の知るかぎりもっとも熱い炎だが、それがいかがした?」
ベリアルさながらに劫火をたぎらせた姿。動揺を隠せない相棒に、毅然として、しかし優しくベルゼブブは告げた。
「……契約が切れた今、きみは自分の魔力を消耗してるんでしょ――そんな大技を使ったら、もう消えちゃうんじゃないの? 先が思いやられるって、言ったそばから……! そんな……いやだよ…………」
「だいじょうぶじゃ」
柄を握り締めたまま震える桜花の拳に、小さな手を重ねて囁く。
「うそじゃないよね……?」
「フン、吾輩は地獄元帥じゃからな!」
火勢が増してゆくが、本人と違って戦車を持たぬベルゼブブは、最大速で自ら突撃する他ない。
「……だいじょうぶじゃよ」
念を押すように呼びかけると、彼女は目つきを一変させ、禁忌の詩を口にした。
「嗚呼、そこに神はいない。
烈火が汝等を冥府へと葬ろう。
灼熱の日輪をも灼き尽くす魔炎にて、等しく灰に還らんことを――――」
吹き荒ぶ暴風に、桜花は尻餅をつく。
「ベルゼ……ブブ……?」
立ち上がる間もなく、怒濤の如く溢れ出る烈火で、彼女の視界は紅蓮に支配された。
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