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† 十八の罪――地獄元帥(陸)
しおりを挟む走ること数分、いや十数分だろうか? 時間感覚も支配されているかのように、漠然として実感が湧かない。
重ねて不自然なのは、彼女たちとと別れてから、俺は一度も襲撃にあっていなかった。やはり、ヤツの狙いはどうにも俺らしい。
「ああッ! くそっ、まだか……!」
化け物の体内みたいに張り巡らされた回廊を、無我夢中で通り抜けてゆく。
ふと、壁面が脈動するかのようにして、口を開けたと思った刹那――――
「ッ、まぶしっ!」
網膜に刺さるかのような煌めきが俺を迎えた。しかし、どうやら屋外に出たというわけでもないらしい。
その妖しい灯りは、太陽ではなかった。
「……なんだ、ここ……?」
目も眩むほどに、明々と燃える大量の人魂。喩えるのなら、怨念が形を成したような、烈しくも美しく、それでいて哀しい、深紅の浮遊体が至る所に渦巻く。
そこが部屋だということは分かるが、端までの距離感も、外側に何があるのかも全く掴めない。飛び込んだ箇所は、あたかも最初から存在しなかったかのように見当たらなくなっている。
あまりにも突拍子もない一室ではあるが、かねてより脳内で繰り返される、あの日の惨劇に、ここの景色は似ていた。
その主、空間の中心に佇む背中が一つ。
隻眼の男が、悠然と振り向いた。
† † † † † † †
火力の衰えた得物を杖に、桜花が呆然と見つめる先には、進路の隙間を押し潰すようにして迫り来る巨躯。
「まさか、こんなに…………」
三人の部下は成す術もなく喰われ、彼らも燃料と化した。隊長だけあって、粘り続けているものの、打開策を見出せないまま力尽きようとしていることには、彼女も変わりはない。
足の鈍った桜花へと、槍衾さながらに毒針の雨が殺到する。
「だめ……魔術は効かない」
もはや迎撃する手段も、余力も彼女にはなく――――
「魔術が効かないんじゃなくて、使い手が弱いだけに見えるが」
一閃。
桜花が蜂の巣にされようという寸前で、悉く弾幕は叩き落とされた。
「まあ腐蝕でどうにかなるようなたぐいとも思えぬがな――ひとつ聞くが、その炎とやらは人知をこえた高温じゃったのかね?」
怪魔の大群を殲滅し終えたのか、少女の横に小さな相棒が立っている。
「ベルゼブブ!? もうかたづけたんだね」
思いがけない援軍に驚きつつも、彼女は頬を緩ませた。
「……でも大丈夫? 飛べなくなるぐらい魔力が――」
「心配しとるばやいか。そんなもの、あとにせよ」
「いや、あともなにも……もう今のぼくたちじゃ…………」
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