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† 十八の罪――地獄元帥(伍)
しおりを挟む「信雄ッ! あぶな――――」
間一髪。反らした半身を掠めるようにして、数発の魔力弾が通り抜けていった。
上の空に不意討ちでもやり過ごせたのは、ルシファーとつながっているおかげだろう。しかし、あの湧き上がる魔力は感じられない。茅原との戦いに、よほど全力で臨んでいるようだ。
「なかなかの魔力じゃねーか。当たったらどうしてくれんだ」
次弾を魔法陣で受け止めつつ、攻撃のあった方へと向き直る。
「隊長、あれ……!」
「ここまで深入りして出てきたってことは、自立防衛的な使い魔みたいだね」
得物を失っている俺を庇うように、三条が歩み出た。
「ああ、それに――大物もお出ましのようだぜ」
「てごわいぞ……!」
並々ならぬ気配に、ベルゼブブも身構える。
「……信雄、先にいって」
「俺はバランス型の妖屠だぜ? こんな連中、魔術だけでも――」
「この空間は主をどうにかしない限り、もとには戻らない。みんなもいるし、こっちは大丈夫。きみの読みが当たってるなら、きみがいかなきゃ」
確かな力がこもっている、彼女のまなざし。
「責任重大だな。分かってるよ、死んでもこのバカげた祭を止めてやる」
「心強いけど、死んだら本末転倒だよ。戦う心を、立ち向かう勇気をくれたのはきみだったね……でもあの後きみ、すぐ転校しちゃったんだもん。あのときのお礼、まだ言えてなかったよね――きみが死んだら、言えないままでしょ」
三条は、軽くはにかんでみせると、得物に魔力を帯びさせた。
「緑川さん、お任せしましたよ!」
凛とした面構えで、部下たちが敬礼してくる。
「さあ出番だよ、相棒。このばかのために、ばかになってやろうじゃないの」
「この恩、わすれるでないぞ」
ベルゼブブも、不敵にこちらを一瞥した。相も変わらずふてぶてしい。けど、それを補って余りあるほど頼もしいヤツだ。
「こまかいのは任せたよ。ぼくは最大火力であの親分を倒す」
通路の彼方に巨体を覗かせたのは、見るもおぞましい汚泥の如き怪魔。
「……ありがとな。桜花」
いつからだろう。三条のことを、名前で呼ぶようになっていたのは――――
「おたがいさまでしょ」
そう微笑むと、彼女は魔槍の先端に迸る焔を集束させた。
「必毀火葬……!」
迷っている暇はない。背後に莫大な熱量が生じるのを感じながら、俺は駆け出した。
(こいつらのためにも、俺が全て終わらせてみせる……!)
走ること数分、いや十数分だろうか? 時間感覚も支配されているかのように、漠然として実感が湧かない。
重ねて不自然なのは、彼女たちとと別れてから、俺は一度も襲撃にあっていなかった。やはり、ヤツの狙いはどうにも俺らしい。
「ああッ! くそっ、まだか……!」
化け物の体内みたいに張り巡らされた回廊を、無我夢中で通り抜けてゆく。
ふと、壁面が脈動するかのようにして、口を開けたと思った刹那――――
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