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† 十九の罪――禁じられた呪い(伍)
しおりを挟む「弱者が語る平和は現実逃避。まず誰かを護ろうとする等、弱者のすることだ。偽善者が護るのは他人ではなく己。より弱い者を助けようとすることで、強者に潰されないだけの人物であるよう演じる。そうでないのなら、メサイア・コンプレックスにでも取り付かれた我侭坊やであろうよ」
暫しの間、沈黙が続いたが、軽く吐息をついて仕切り直す弟。
「平行線、か……これ以上は無駄だな。悪いが俺も、俺なりに曲げられねー想いがあんだわ。思うとこあって命かけてるわけ。だから最後まで、俺は俺として生きさせてもらう! お互い妥協できなそうだし、力こそが正義っつーなら――ここで俺にぶっ倒されても文句ねーんだろなぁ?」
「ふむ。出来るのなら結構だが、得物さえも失った身で私を倒すと?」
魔力を漲らせた信雄を、不思議そうに彼は眺める。
「ほう。それは死神の大鎌か」
禍々しさと流麗さが極限の域で調和された、機能美に満ちた凶刃。姿を現したみつきのデスペルタルを一瞥し、象山が口にする。
「……誰のせいで死神が生まれたと思ってんだよ。あんな小さい女の子をぶっ壊して、実験場だなんだって、いい加減にしやがれ」
「この世が残酷なのは不変の理だ。お前は自分を変えることで世界も変えようと望む、めでたくも哀れな若者――そう、私は未来のお前だよ」
信雄は魔力をさらに上昇させて、
「そうかい――――」
と答え、眼帯を外した。
「なら、ちょうどいい……!」
ほぼ同時に解き放たれた象山の魔力とぶつかり合い、爆発的な勢いで結界を食い破って、神殿を揺るがしながら波動が拡散する。
兄弟は大口を開けた裂け目から屋上へと飛び移り、迸る魔力で互いに竜巻を生じさせて向かい合った。
「ルシファーは、変わりゆく時を不変の身体で生き続ける咎を課すだかなんだかって言った。不死身かはともかく、肉体が無理した分を精神に肩代わりさせられてるらしい。不思議だろ、ここ何日もまともに寝ずに戦い続けてんだぜ。もはや人間でもなんでもねーよ。人間やめちまった同士、思う存分やり合おうじゃねーか」
荒れ果てた城塞の傍らで、相対する超越者二人。
「終わりってのは名残惜しいほうがいい――――」
血染めのジャケットを靡かせ、茅原が語りかける。
「楽しかったぜ、魔王」
彼は不敵な笑みを送ると、構え直した。
「お前と気が合うとは奇遇であるな。余の方もだ」
呼び名を改めたルシファーもまた、魔王剣に紫炎を纏わせる。
「いざ――――」
「参る……ッ!」
彼らが大地を蹴ったのは、同時だった――――
「「うぉおおおおおおお……ッ!」」
斬撃音が、時を同じくして二つ。
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