討妖の執剣者 ~魔王宿せし鉐眼叛徒~ (とうようのディーナケアルト)

LucifeR

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† 十九の罪――禁じられた呪い(陸)

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「楽しかったぜ、魔王」
 彼は不敵な笑みを送ると、構え直した。
「お前と気が合うとは奇遇であるな。余の方もだ」
 呼び名を改めたルシファーもまた、魔王剣に紫炎を纏わせる。
「いざ――――」
「参る……ッ!」
 彼らが大地を蹴ったのは、同時だった――――

「「うぉおおおおおおお……ッ!」」
 斬撃音が、時を同じくして二つ。
 両者は背中合わせで静止したまま、微動だにしない。凄まじい踏み込みで抉られた互いの足下から、ゆっくりと土煙だけが流れてゆく。
「……天晴あっぱれれ――――」
 ルシファーが呟くと、魔力膜ごと裂かれた彼の肩口より、鮮血が滴り落ちた。
「人をやめたと言われるぐらい武術は究めたつもりでいたんだけどね。やっぱ人じゃ魔王には敵わないか」
 振り返ることなく、先ほどまでの気迫が嘘のように落ち着いた声で、茅原も微笑する。
「然れど惜しくあったぞ、茅原知盛よ。二度も此の身を脅かしたた事、誇るが良い」
 魂喰いの魔剣グラディウス・レクイエムを浴びた箇所から透けてゆく彼に、賛辞と別れを告げる魔王。
「そして、良き旅を――――」
 彼に慢心はなかった。
 対象の存在を遡り、そこに生きているという概念ごと斬る魔王剣に、いかなる生物も耐えようがない。
 それでも茅原は、
「……さすがは暁の金星。見事な輝き……! ちくしょー、まぶしいなあ。まったく、人間の目には――ちょっとまぶしすぎだよ」
 今なお、否定された生命を現世にとどめ続けていた。
(竜族をも消し去るカルタグラの呪詛にさえ抗う程の強化だと……?)
 さすがの魔王も目を瞠る。
(畏るべし魔術師よ、象山紀章とやら。何と類稀なる人の――否、世の理を超越こえた秘術……!)
 茅原は困ったように、薄れゆく顔に苦笑を浮かべた。
「そんな目で見ないでも、もう反撃する力なんて残ってないよ。魔王キミを通してしまう以上、彼の負けは決まったも同然。だからせめて、死ぬとき……は……一緒に…………」
 この間にも、上では自ら構築した結界を崩落させながら、彼の盟友が死闘を繰り広げている。それは登輝かれにとって、限りなく長く、あまりにも短すぎる瞬間であった。
「……ああ、此れは彼奴あやつの妙技等ではなく――執念おもいか」
 生まれながらの超越者が理解したのは、時間さえも遅らせる意思。
「友達だからね。ボクの存在が否定されても、彼にもらった不老不死まで否定させはしない! 彼の成果は、ボクに託してくれた夢は、こんなところで消えるわけにはいかないんだ……! 行かないと! 緑川くんのとこに、行かないと――――」
 そこまでの近くて遠い道のりが、彼には紛れもない永遠である。
「行かない、と……!」
 そうしているうちにも、その強固な魂を置き去りにするようにして、無へと還る肉体。ゆっくり、ゆっくりと屋上を目指し、彼は登ってゆく。

(信雄め、独力ひとりでも斯様な力を揮うに至ったか)
 一方のルシファーも、相方の奮闘する神殿上へと目を移した直後――――


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