討妖の執剣者 ~魔王宿せし鉐眼叛徒~ (とうようのディーナケアルト)

LucifeR

文字の大きさ
134 / 139

† 終わりの罪――夢の彼方(はて)に(弐)

しおりを挟む

 家に着くまでが遠足とは、誰が言い出したんだろう。俺たちの帰路は、組織から解き放たれた怪魔でごった返していた。
管理者おやだまの魔力が無くなった途端にこの有り様かよ。どんだけ保管してやがったんだ」
「実験場にいたのなんて、もとは人間なんじゃないの? 六本木で遭遇した大群も、あきらかに理性ある連携してたし……どんな姿になっても、やっぱり罪なき人をやるのは心が痛むね」
 曇った表情で、三条がデスペルタルに魔力を送る。
「死者は生き返りはしない。それに、苦しい想いをすんのは一度きりで十分だろ。なるべく楽に消してやるよ」
 しかし、得物カルタグラを使おうにも、すことができない。
「此の者等は云わば組織による犠牲者。お前は象山を斃す事で十分に元凶を絶った。彼奴あやつの咎迄お前が負う必要は非ず。下がっていよ。より罪深き魔たる余が裁こう」
 泰然と歩み出た、ルシファーの後姿。
 自分とそう変わらない大きさの背中に、彼はどれだけの重荷ものを背負ってきたのか。そんなことも知りもせず、俺は頼りきりだったのだと、今になって実感させられた。



「こんなもんで悪ぃな、多聞さん」
 岩に名前を刻んだだけの墓石へ、俺は呼びかける。
「いちお一般には伏せられてる身分だし、墓もたてらんねーもんなあ」
 ふと、足下に目が止まった。
「……花?」
 季節でもないのに、一輪のカタバミが置かれている。
 そういえば多聞さん、意外と小さくてかわいらしいものに弱いから、こういう控え目な花が好きなのかもしれない。
「ったく、勝手に抜け駆けしやがって」
 そんなことを知っていて、季節外れの花を咲かせられるような魔術に長けた人間は一人しか心当たりがない。
「待ってたのに素通りしたのはそっちでしょ」
 岩陰から不満のこもった声がした。隠れて人の独り言を聞いてるなんて、相変わらず悪趣味なヤツだ。
「知んねーわ。もっと存在感を放てよ、あいつみたいに」
 目の合ったルシファーも近づいてくる。
「昨晩、彼奴が地獄に来おったぞ」
「ずいぶん早ぇな。さすが重罪人。で、なんか言ってたか?」


              † † † † † † †

「やはり貴様が此処に堕ちるは必然であったか」
 闇底の主は、現れた男に玉座から話しかけた。
「魔王殿、愚弟が世話になり申した。私が天に召されようものなら、世界の意思を疑うというもの」
 直接ルシファーを前にしても、気圧されることなく挨拶する象山。
「礼には及ばず。余は斯様に退屈を極めていた故な。現世を覗いた折、目に留まった迄の事」
「もう対価とする魂も無い身で恐縮の限り。しかし、一つだけ聞き届けてもらえるのならば――――」


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。 結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。 アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。 アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他

猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。 大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。

処理中です...