【完結】私を嫌う婚約者から解放された後は、美形の始末屋に溺愛されました

ユユ

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エスコートは代理

今日の学園の卒業式が終われば、私は半年後にお嫁に行く。相手は伯爵家の跡継ぎ。
正直 彼のことは好きではない。うちの方が裕福なのがお気に召さないのか、新しい物を身に付けると“散財女は困る”とか言い出す。

“こいつの取り柄は金だけだ”
“金で解決できると思っているんだろう”
“無駄に金を持っているんだから、私の友人に投資してやれよ”

散々言われてきた。婚約者の家は倹約しているのかお金に余裕がないのか分からないが質素だ。
そんなにお気に召さないなら婚約を解消すればいいのに、彼の両親が乗り気だから我慢してきた。

お父様は男児を産んだ後は好きにしていいと言っているので、別の男に抱かれてる想像をして閨事を受け入れ、男児が産まれたら即離縁するつもりだ。

あいにく、まだ想像に使う殿方を見つけることができていない。

「え? お兄様が欠席!?」

「リシュパルから王女がいらしているだろう」

「あ~」

「王女と話が弾んだらしくて」

「では一人で出ます」

卒業パーティのパートナーをお兄様にお願いしていたのだ。だけどお仕事なら仕方ない。

「一人で出席はさせないよ。城から代理を寄越してもらった。もうすぐ着くから、ビビアンは支度をしながら待っていてくれ」

「分かりました」

兄オーエンは薬の調合を趣味としている。
無駄に実力があるものだからお父様もお兄様に強く言えない。だけどセーバー子爵家の跡継ぎには変わりない。せめて二十代のうちに結婚し三十歳になったら跡継ぎ教育を始めることを条件に自由にさせてもらっている。

セーバー子爵邸は王都の郊外に建っていて、更にその隣にはもう一つ屋敷が建っている。もう一つの方は敷地内で薬草や薬になる果物の木を育てている。果実の皮や種を使うんだって。使わない実は料理人がデザートにしてくれる。
屋敷はシンプルな作り。だけど使用方法は特殊。一階は研究のために使い、ニ階は居住空間。
一階に厨房、食堂、応接間、風呂トイレ、研究室、仮眠室、栽培室、水を使う作業場。二階には居間、部屋複数、備品室、リネン室、風呂トイレ、屋上もあってそこでも栽培している。

二日に一度本邸からメイドを派遣し掃除させる。
鍵がかかった部屋は綺麗好きのお兄様が自分で掃除している。食事は毎回本邸から運ばせている。
つまり隣の屋敷はお兄様しか住んでいない。

更に地下もある。研究室や材料薬品庫がある。檻もあって生物実験もする。動物や人を使って効果を試す必要があるから。
お兄様はまずネズミに与えて死ぬかどうかをみる。死んだり血を吐いたりしなければ人で試す。
人の場合は死刑囚か希望者を使う。

死刑囚は国から与えられる。
希望者の事情は様々。完治の見込みがなく苦しんでいる患い人や治療方法が見つかっていない病気を患っている人、お金が必要な人などだ。いずれにしても国が許可をしている。受け付けた後に希望者自ら国に届けを書いて提出する。治験後、生きていれば本人に報酬を渡し、もしもの時には希望の受取人に対し支払う。

敷地の外れには大型焼却炉がある。失敗したものを焼いたり、動物を焼く。
死刑囚の遺体は国から派遣された人が執行確認に来て引き取る。希望者の遺体は業者に渡す。いずれも火葬になる。所有する大型焼却炉でも焼けるのだが、ネズミを焼くのと人を焼くのとでは火力も時間も必要なので業者を雇っている。縁起という理由もある。

お兄様の功績は通常の痒み止め、食あたりの薬、便秘の薬、痛み止め、麻酔薬の改良。
感染性の病二つの対処薬を見つけている。
それらは全て調合表と一緒に製薬を国王に献上する。だから国は報奨金を出すし協力もする。お父様も先行投資した。

兄は他にも皮膚病の薬を作る過程で美容クリームを考案、さらに健康のためのハーブティーにも注目してブレンド。これらは子爵家だけのもの。領地で栽培生産販売している。材料も普通の育て方ではダメなものもあるし抽出方法など特殊で未だに同等レベルに真似ができる者がいない。だからセーバー子爵家が圧倒的な売り上げを誇っている。元々裕福だったが更に裕福になったし なり続けている。

私もお兄様のような特技があったら、あんな婚約者を持たなくて済んだのに。


「お嬢様、お客様が到着なさいました」

「今行くわ」

一階へ降りると無駄のない体格の令息が立っていた。

父が私を紹介した。

「この子が今日卒業する娘のビビアン・セーバーです」

「ビビアン・セーバーと申します」

「私はベルナルド・シュナウツと申します」

シュナウツ?侯爵家の!?そんな方がどうして子爵令嬢でしかない私のエスコートを?

「彼は 一昨年シュナウツ家を継いだ侯爵様の弟君で、国家職員なんだよ」

なるほど

「シュナウツ卿にエスコートしていただけて光栄です。本日はよろしくお願いします」

「セーバー家のご子息をお借りしているのはこちらですから。では参りましょう」

何を話していいのか分からないので、隣の屋敷について説明しているうちに学園に到着した。

「あ、シュナウツ卿。一応婚約者も卒業ですので会うかもしれません。絡んできたら無視してください。対処は私がしますので」

「…分かりました」

今、婚約者がいるのにどうしてパートナーとしてエスコートしてもらわないんだって思った?

「彼、私のことが鼻に付くみたいで、一緒にいると苛立つらしいのです。だから出来るだけ関わりません。今日は彼の屋敷に長期滞在している親戚の女の子をパートナーにして出席するはずです。金髪で緑の瞳の儚げな可愛い子です。彼女は貴族の血は入っていますが平民で、彼の家が後継人になって屋敷から学園に通わせているのです。在学中の彼と彼女はまるで恋人同士で、婚約者の私は恋人達の愛を邪魔する悪者扱いになっています」

「……」

「あ、気になさらないでください。私も彼が嫌いなので。彼が何を言ってきても私は大丈夫ですから無視してください」

「……」

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