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お仕事
ソファに布を敷いてその上に座った。
髪を拭きながら質問攻めにあった。
「気配がしなかった」
「兄は考え事をしているときに話しかけられたり気を散らされると、ひらめきかけていたことを忘れてしまうタイプなのです。それでこっそり食事を置いて帰ったりしているうちに身に付いたんだと思います」
「君は死体が怖くないのか?」
「薬を作っているのですよ?動物実験も人体実験もやります。星の数ほど配合を変えて試すのです。ここでも領地でも」
「そうか」
「あれは人間の死体で合っているのですよね?」
「そうだ」
「回収屋を雇わないなら、外の焼却炉を使ってください。専用の薪も使えば人の焼ける臭いを分からなくしてくれます。残った骨はセーバー家で契約している業者に引き取らせますよ。ただし頻繁では困ります」
「何故死体があるのか気にならないのか?」
「お仕事ですよね。殺しが専門とか?」
「どうしてそう思うんだ?」
「卒業パーティでの王太子殿下の言葉を思い出しました。血飛沫が飛んだようなシミを付けたシュナウツ卿に“仕事か?”と仰いました。つまり国で雇われた殺し屋か何かだろうと思いました」
「そうか…」
少し悩むような間を置いて、卿は正体を明かした。
「俺はいわゆる始末屋だ。
暗殺部隊とは少し違う。俺の場合は拷問をしたり、罪を浮き彫りにさせたりする仕事だ。結果的に相手が死ぬことがほとんどだがな。
例えば、君がある令息に強姦されたとする。だが相手は証拠がないと言った場合、事実そのものが無かったことにされるか合意の上だったように湾曲される。そんな時に俺が任務を請け負う。
さっきの男は学園で違法薬物を売り捌いていた令息だ。それなりの家門の子供が過剰摂取で死んだ。だから内密に調査が入りあの男まで辿り着いた。、普通の尋問では埒があかなかったので俺の出番になったんだ」
「どうしてそれを個人宅でやろうと?」
「内通者がいるようなんだ。あの死体に辿り着く証言をした女が留置所で死んでしまった。
全身検査をするので毒や武器の持ち込みはできないはずなのに、女の胸にはナイフが深く刺さっていた」
「でも内通者はきっと卿が此処で仕事をなさっていることを知るのでは?」
「知る者は3人しかいない。この件以外は通常通り仕事をしているし気付かれることはないはずだ。
あの死体は逃亡中ということになっていて、兵士に後を追わせている。架空の痕跡を追う無駄な捜索だが訓練になるから新人を混ぜて向かわせているんだ。」
「なるほど…でしたら、骨にしてからうちの業者に引き取らせましょう」
「他言は?」
「しません。その代わり、セーバー家で見聞きすることは内緒ですよ」
「取り引きは成立だな。
一応陛下には君が知っていることを報告しなければならない」
「はい」
翌朝、雨が止んでいたので生き物の死体の燃やし方を説明した。
焼却炉は建物から少し離しているが、煙突は建物に密着せずに沿って高く伸びている。
専用の薪も運び、とあるハーブの蔦や根を乾燥させたものを用意して火を付けた。
シュナウツ卿は死体を焼却炉の中の鉄板の上に置いて蓋を閉めた。
木の椅子を焼却炉の前に持ってきて、焚き火のように見つめた。
「臭いがしないな」
「無風のときは臭いを感じますが、普通は風に乗って流れてしまいます」
「香草焼きのような…でも木の香りもするな」
「これなら死体を燃やしているなどと思いません。ですが出来るだけ新鮮なうちに燃やして下さい。骨が冷えたら桶にうつして、ゴミ置き場に持って行き 近くの蓋付きの箱の中に入れます。そうすると業者が持っていってくれます」
「その後の骨はどうなんだ?」
「粉々に砕いて肥料に使います」
「それはまた…」
「有益ですよね、ふふっ。
本当は、焼却炉を巨大な窯にして、死体を燃やす熱で料理ができるようにしたかったのですけど却下されました。層にするので本当に熱だけの利用なのですけどね」
「……」
シュナウツ卿も嫌だったかしら。
「先程も申しました通り 頻繁ですと困ります。
国と契約している業者に頼むなりすることを考えましょう」
「知っているのだな」
「罪人で治験を行うときは返却しますので」
「なるほど…。
頻繁にはならないから安心してくれ」
この人、この土地を墓地にするつもりだったのかしら。気付いて良かったわ。
1ヶ月もすると、シュナウツ卿は時々本邸に来ては一緒に食事を摂るようになった。
3ヶ月後には、
「ビビアン、今度シュナウツ邸でパーティがあるのだが、一緒に行ってくれないか?」
「パーティですか?」
「兄嫁の誕生日なんだ」
「侯爵夫人の誕生日パーティに私など…」
「いつもパートナーがいなくて家族が煩いんだ」
「今度っていつですか?」
「6日後だ」
「……間際ですわね」
「すまない」
「分かりました」
「ありがとう」
翌日。
「お嬢様、シュナウツ侯爵家からお嬢様宛に荷物が届きました。贈り物だと思われます」
部屋に運び込まれた箱を開けるとドレスや宝飾品だった。
「え?」
何も聞いてないし、誘われたのも承諾したのも昨日なのに?
食事に現れた卿に聞いたら侯爵夫人にお願いして作らせていたらしい。かなり前からだと思うのに。サイズはどう知ったのかしら。
それより誕生日で祝ってもらう立場の夫人に 私への贈り物を手配させるなんて…。
髪を拭きながら質問攻めにあった。
「気配がしなかった」
「兄は考え事をしているときに話しかけられたり気を散らされると、ひらめきかけていたことを忘れてしまうタイプなのです。それでこっそり食事を置いて帰ったりしているうちに身に付いたんだと思います」
「君は死体が怖くないのか?」
「薬を作っているのですよ?動物実験も人体実験もやります。星の数ほど配合を変えて試すのです。ここでも領地でも」
「そうか」
「あれは人間の死体で合っているのですよね?」
「そうだ」
「回収屋を雇わないなら、外の焼却炉を使ってください。専用の薪も使えば人の焼ける臭いを分からなくしてくれます。残った骨はセーバー家で契約している業者に引き取らせますよ。ただし頻繁では困ります」
「何故死体があるのか気にならないのか?」
「お仕事ですよね。殺しが専門とか?」
「どうしてそう思うんだ?」
「卒業パーティでの王太子殿下の言葉を思い出しました。血飛沫が飛んだようなシミを付けたシュナウツ卿に“仕事か?”と仰いました。つまり国で雇われた殺し屋か何かだろうと思いました」
「そうか…」
少し悩むような間を置いて、卿は正体を明かした。
「俺はいわゆる始末屋だ。
暗殺部隊とは少し違う。俺の場合は拷問をしたり、罪を浮き彫りにさせたりする仕事だ。結果的に相手が死ぬことがほとんどだがな。
例えば、君がある令息に強姦されたとする。だが相手は証拠がないと言った場合、事実そのものが無かったことにされるか合意の上だったように湾曲される。そんな時に俺が任務を請け負う。
さっきの男は学園で違法薬物を売り捌いていた令息だ。それなりの家門の子供が過剰摂取で死んだ。だから内密に調査が入りあの男まで辿り着いた。、普通の尋問では埒があかなかったので俺の出番になったんだ」
「どうしてそれを個人宅でやろうと?」
「内通者がいるようなんだ。あの死体に辿り着く証言をした女が留置所で死んでしまった。
全身検査をするので毒や武器の持ち込みはできないはずなのに、女の胸にはナイフが深く刺さっていた」
「でも内通者はきっと卿が此処で仕事をなさっていることを知るのでは?」
「知る者は3人しかいない。この件以外は通常通り仕事をしているし気付かれることはないはずだ。
あの死体は逃亡中ということになっていて、兵士に後を追わせている。架空の痕跡を追う無駄な捜索だが訓練になるから新人を混ぜて向かわせているんだ。」
「なるほど…でしたら、骨にしてからうちの業者に引き取らせましょう」
「他言は?」
「しません。その代わり、セーバー家で見聞きすることは内緒ですよ」
「取り引きは成立だな。
一応陛下には君が知っていることを報告しなければならない」
「はい」
翌朝、雨が止んでいたので生き物の死体の燃やし方を説明した。
焼却炉は建物から少し離しているが、煙突は建物に密着せずに沿って高く伸びている。
専用の薪も運び、とあるハーブの蔦や根を乾燥させたものを用意して火を付けた。
シュナウツ卿は死体を焼却炉の中の鉄板の上に置いて蓋を閉めた。
木の椅子を焼却炉の前に持ってきて、焚き火のように見つめた。
「臭いがしないな」
「無風のときは臭いを感じますが、普通は風に乗って流れてしまいます」
「香草焼きのような…でも木の香りもするな」
「これなら死体を燃やしているなどと思いません。ですが出来るだけ新鮮なうちに燃やして下さい。骨が冷えたら桶にうつして、ゴミ置き場に持って行き 近くの蓋付きの箱の中に入れます。そうすると業者が持っていってくれます」
「その後の骨はどうなんだ?」
「粉々に砕いて肥料に使います」
「それはまた…」
「有益ですよね、ふふっ。
本当は、焼却炉を巨大な窯にして、死体を燃やす熱で料理ができるようにしたかったのですけど却下されました。層にするので本当に熱だけの利用なのですけどね」
「……」
シュナウツ卿も嫌だったかしら。
「先程も申しました通り 頻繁ですと困ります。
国と契約している業者に頼むなりすることを考えましょう」
「知っているのだな」
「罪人で治験を行うときは返却しますので」
「なるほど…。
頻繁にはならないから安心してくれ」
この人、この土地を墓地にするつもりだったのかしら。気付いて良かったわ。
1ヶ月もすると、シュナウツ卿は時々本邸に来ては一緒に食事を摂るようになった。
3ヶ月後には、
「ビビアン、今度シュナウツ邸でパーティがあるのだが、一緒に行ってくれないか?」
「パーティですか?」
「兄嫁の誕生日なんだ」
「侯爵夫人の誕生日パーティに私など…」
「いつもパートナーがいなくて家族が煩いんだ」
「今度っていつですか?」
「6日後だ」
「……間際ですわね」
「すまない」
「分かりました」
「ありがとう」
翌日。
「お嬢様、シュナウツ侯爵家からお嬢様宛に荷物が届きました。贈り物だと思われます」
部屋に運び込まれた箱を開けるとドレスや宝飾品だった。
「え?」
何も聞いてないし、誘われたのも承諾したのも昨日なのに?
食事に現れた卿に聞いたら侯爵夫人にお願いして作らせていたらしい。かなり前からだと思うのに。サイズはどう知ったのかしら。
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