【完結】継母に婚約者を寝取られましたが、何故かモテています

ユユ

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将軍との交流

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私の前をソワソワと右往左往するメイド達を他所にソファに横たわり悶えていた。

あんなっ!あんなことっ!!

薬指を咥えられ、舐められ吸われた感覚が消えない。
それにあの眼差し…。

「ダメだわ。あれは天使の皮を被った狼かも知れない」

「エリサ様!?」

「あーっ!!」

今日もメイド達はビクッと肩を揺らす。

「そろそろお支度をしていただきませんと、お約束に遅れてしまいます」

「分かったわ」

今日はハイダー将軍との交流日。郊外へ出かけるらしい。動きやすい姿でと指定があった。もっと細かく言ってもらいたい。失敗すると浮いてしまう。

行き先を言うと侍女が服を選び直した。

「そこでしたら、船遊びをなさると思いますわ。川を下るはずですのでこちらの服がよろしいかと」

「そうするわ。
川を下るって危険じゃない?」

「数日前からの天気次第ですが、増水や強風が無ければ大丈夫です。目的地にある川は流れが緩やかですのでご安心ください。
それに何人も乗れる船です」

「それなら良かったわ」


身支度を終えて一階に降りて待っているとハイダー将軍が到着したと知らされた。

エントランスホールには既にハイダー将軍が立っていた。

「エリサ様、本日はありがとうございます」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

「もしかして、何処へ行くのか知ってしまわれましたか?」

「……」

「そんな顔をなさらないでください。さあ、参りましょう」

「はい」

将軍の差し出された手を取り馬車に乗った。
馬車は広い。将軍は体が大きいからこのくらい広くないとダメなのかも知れない。

「どうなさいましたか」

「広いな、と」

「いつもは私一人が乗りますのでもっと小さいです。今日はエリサ王女様をお乗せするので大きな馬車を選びました」

「さっきの話ですが、メイドが目的地の地名を聞いて、たぶん川だろうと。
……ハイダー将軍。女性の身支度は難しいのです。
“動きやすい姿”というのは曖昧過ぎます。外れた場合、恥をかいたりご迷惑をおかけすることになってしまいますから。
できればもう少し具体的な指示をいただけると助かります」

「それはご迷惑をお掛け致しました」

「謝っていただきたいわけでは、」

「エリサ様、出来れば将軍は取っていただけませんか」

「でしたらハイダー様ももっと気楽にお話しください。ハイダー様は……」

「倍ほど歳が違うから、ですか」

「ぶ、武勲を何度もあげたお方ですから」

「ハハッ」

か、可愛い!あんなに怖そうなのに笑顔が可愛いなんて!

「ん?」

「なかなかの武器をお持ちで」

「エリサ様?」

「なんでもありませんわ」

「夢みたいだ。こんなに愛らしいエリサ様と一緒に過ごせるなんて」

「あの、ハイダー様とそれほど親しくはなかったと思っておりましたが」

「エリサ様が子供の頃から時々見かけて眺めいたんだ。メイドや兵士達に優しく接する子で 見ていて心が温かくなった。
愛らしい幼児から少女に、そして美しい大人に成長したエリサ様のファンだった。

私は平民の生まれで倍も歳が離れている。何より婚姻経験もある。望んでいい相手ではなかった。
だが陛下が後妻も含めてエリサ様の嫁ぎ先を探しておられると伺い、手を挙げました。 
変な男に渡すくらいなら俺の方がマシだろうと。
貴女を大事にするし貴女と恋愛結婚をしたい。
そんなことを願うのは図々しいだろうか」

「そ、そんなことは。英雄の妻の方が私には務まらないと思いました」

「英雄などと呼ばれるが ただの一人の男だ。
こんなに素敵な女性が一緒にいてくれたらと願う男だよ」

「……」

「川下りは初めてだろうか」

「はい。初めてです」

「泳げなくても俺が泳げるから安心してくれ」

「はい」

多分私に気を遣って話題を変えてくださったのだろう。優しい方だ。



到着すると船着場で私の脇に手を差し込み、軽々と持ち上げて船の上に下ろしてくれた。
ちょっと子供になった気分。

「俺は間違えただろうか」

「はい?」

「エリサ様が驚いた表情をしたから」

「ちょっと子供に戻った感覚になっただけです」

「これは失礼しました。
一番接触しない安全な乗せ方だと思ったのだが」

「確かにそうですね」

「女性とこのような場所へ来たことがなくて」

「奥様とは?」

「互いの実家に行くか、屋敷の近くで買い物くらいしかないな」

「恋人は?」

「エリサ様の歳くらいにはいたが、戦場に出るようになるとフラれてしまった。遠征で何ヶ月、時には何年も帰って来なければ、次の男を探して交際してしまう」

「そうですよね。ハイダー様は容姿も優れておられますから年頃から女性が放っておかなかったのでしょうね」

「心から愛されていると思えたことはない」

「私の場合は継母が婚約者を決めました。
まさか愛人選びだとは誰も思いませんでしたわ。
宮殿に来させる理由欲しさに私の一生を犠牲にしようとしたのです。
何だか馬鹿らしくなって」

「だから後妻でも構わないと?」

「後妻を下に見ているわけではありませんが、初婚の男性では経験不足で耐えられないと思ったのです。

継母に婚約者を寝取られた女など妻にして社交に連れて行っても下賎な話のネタになるだけですわ。
継母と婚約者が寝ていた自分のベッドで馬鹿みたいに眠っていた女だって笑われてしまいますから。

でも王女だから結婚しない道などないでしょう?」

ハイダー様はスッと立ち上がり、私を抱き上げると座って膝の上に乗せた。
そして優しく抱きしめて頭を撫でてくれた。

「貴女の心の傷は深いようだ」

「愛してはいませんでした。ですが愛する努力はしようとしていました」

「誠実過ぎるんだ。貴女の誠実さに付け込む魂の穢れた者は大勢いる。見方を変えれば俺もだな。こうやって誠実に向き合ってくれる貴女の隙に付け込むのだから」

「こんなに優しい力加減は何処で覚えるのですか?」

「猫や犬かな」

「…もっと女性に奥手な方かと思っておりましたけど、慣れていらっしゃるのですね」

「歳だけとって婚歴があるのに初心な少年のように不器用だとしたら変だろう」

「……」

「そんな可愛い顔で見つめてもらえるなら何と思われようとどうでもよくなりそうだが、誤解はされたくない。こんな気持ちになるのはエリサ様だけだ」

抱きしめられたまま、緩やかな川の流れを楽しんだ。





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