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やっぱり絡まれる
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開演すると、ファルーク様は手を握った。
彼の指は美しく長い。指まで美人なんて羨ましい。
細身の方だと思っていたけど、隣にくっついて座られて そうではないと気が付いた。手も大きくて、鍛えているのか筋肉もある。
「(エリサ)」
「っ!!」
耳元で名前を呼ばれて動揺した。様も付いていない。
「(もっと一緒にいたい)」
「……」
その後の歌は全く記憶に残らなかった。
歌劇の後はレストランで食事だという。
その前にトイレに寄った。
誰も居らず、入り口に護衛を立たせて個室に入ると後から来た人の話し声が聞こえた。
「信じられないわ。どこがいいのかしら」
「絶対に圧力よ」
「釣り合っていないもの」
「継母に婚約者を寝取られたくせに次は聖職者よ?」
「婚約者も美男子だったわ。権力があると男を好きにできていいわね」
ギィ…
個室から出ると令嬢達が驚いた顔をした。
「はぁ」
この子達は馬鹿なのか大胆なのか、外に王宮護衛兵が立っていただろうに。
名前は出していなくとも、私のことを言っているのは明らかだ。
手を清めて外に出ようとしたら話しかけられた。
「王家の力を使ってファルーク様を手に入れようとなさる行為はお見苦しいですわ。ファルーク様は断れませんのよ」
「……」
「ちょっと!」
私は黙って廊下に出ると、少し先で待っているファルーク様を手招きした。
彼が側にくると腕を掴んでトイレの入り口まで引っ張った。
令嬢達は彼の姿に驚きと光悦の表情を浮かべた。
「ファルーク様。彼女達の意見では 私はファルーク様に相応しくないそうです。特にこちらのお方は 王家の力を使い断れないファルーク様に無理強いしていると非難なさいました。
微塵もそんなことは無いはずですが、私の知らぬ所で起きていたのかもしれません。陛下がなんと言おうと気にせず、私のことは捨て置いてくださいませ」
ファルーク様は見たこともない怖い顔をして彼女達に告げた。
「君達に説明する義務は無いがはっきり言おう。
エリサ様に求婚したのは私で、彼女は私に関心は無い。それを陛下に頼み込んで交流する機会をいただいた。私はエリサ様と初めてお会いしたときに一目で心を奪われた。その後も心まで美しいエリサ様に更に心を寄せた。
もしもの時に手を挙げられるように、神殿から婚姻の資格を得られるほど努力した。
その私の気持ちを踏み躙り、邪魔をする権利が何処にある。
特に君。婚約者がいるにも関わらず釣書を送ってくるなど、ふしだらで不誠実だと思っていた。
それだけではなく 馬鹿で性根が腐っていて身の程知らずなのだな。その程度の容姿で何故選んでもらえると思うのか気が知れない。
4人とも、名前と王族への不敬の事実を陛下にご報告を申し上げる。
いいか、二度とエリサ様と私に近寄るな」
「お許しください!」
「どうか陛下には!」
「エリサ王女様!お助けください!」
「ううっ」
3人は懇願し、散々なことを言った1人は泣いていた。
「エリサ様、許す必要はありません。貴女の身分を知っていて言ったのですから、不敬罪で罰せられるのも承知です。ここで許せば秩序が乱れます。
さあ、これ以上下賎な者達と同じ空気を吸っていては毒されてしまいます。
気を取り直して食事に参りましょう。
愛するエリサ様に特別な席を用意しているのです」
「はい」
やっぱりこうなるわね。
王女でなければもっと無数の令嬢方に絡まれることになったはずよね。
仕切りのあるテラス席で食事をして食後にお茶を飲んでいた。
「エリサ様、恐らく今後もあのようなことがあると思います。必ず私に相手の名前を教えてください」
「どうなさるのですか?」
「先程のようにきちんと言い聞かせませんと」
「でも、それって見方を変えるとご褒美になりかねませんわ」
「ご褒美?」
「日頃接触できない方が話しかけてくださるのですから、中には叱責でも嬉しいと心を踊らせる女性もいらっしゃるのではありませんか?」
「怖いことを仰らないでください。
…ならば、今の発言はこうとも捉えることができますよ。
“他の女性に近付いて欲しくない、話しかけないで”って」
「え!? そんなことは」
「分かっております。そんなつもりはないことは。
ですが、そう言っていただけるのなら 私は今年いっぱい浮かれて過ごすことができるでしょう」
「……」
「役者の台詞だと思って言っていただけますか」
「……」
「では、私が今から愛を囁いて、」
「分かりました!……………やっぱり、」
「エリサ」
「わ、私以外の女性と親しくしたら許さないから」
「……」
「ファルーク様?」
「可愛すぎるっ!!」
「 !!! 」
「キスしたい」
「 !!!!! 」
「していい?」
「ダっ、ダメですっ!」
「他の男とキスなんてしてないよね?」
「なっ、」
「してないね?」
「…はい」
「手は握らせた?あの男に」
「あの男?」
「元婚約」
「サージ様ですか?
婚約式の時に少し手に触れたくらいです」
「どっちの手?」
「左です」
「婚約指輪か。まだ持ってるの?」
「あげました」
「あげた?」
「クビになった元王妃の侍女です。
彼女はジャミラ元王妃に逆らえなかったはずで、好きで逢い引きの手伝いをしていたわけではありません。再就職しようにも、まともな雇用先には恵まれないでしょう。
あれは既に曰く付きの指輪。ならば換金して彼女の今後に役立ててもらえたらとあげました」
「私は貴女のそういうところに惚れたのです」
「んっ」
ファルーク様は私の左手を掴み、薬指を口に含んで舐めた。
口から離すと私の掌に頬を擦り寄せた。
「その声を引き出すのも、この指に指輪をはめるのも私だけであって欲しい」
「ファルーク様っ」
刺激が強すぎて俯くことしかできなかった。
彼の指は美しく長い。指まで美人なんて羨ましい。
細身の方だと思っていたけど、隣にくっついて座られて そうではないと気が付いた。手も大きくて、鍛えているのか筋肉もある。
「(エリサ)」
「っ!!」
耳元で名前を呼ばれて動揺した。様も付いていない。
「(もっと一緒にいたい)」
「……」
その後の歌は全く記憶に残らなかった。
歌劇の後はレストランで食事だという。
その前にトイレに寄った。
誰も居らず、入り口に護衛を立たせて個室に入ると後から来た人の話し声が聞こえた。
「信じられないわ。どこがいいのかしら」
「絶対に圧力よ」
「釣り合っていないもの」
「継母に婚約者を寝取られたくせに次は聖職者よ?」
「婚約者も美男子だったわ。権力があると男を好きにできていいわね」
ギィ…
個室から出ると令嬢達が驚いた顔をした。
「はぁ」
この子達は馬鹿なのか大胆なのか、外に王宮護衛兵が立っていただろうに。
名前は出していなくとも、私のことを言っているのは明らかだ。
手を清めて外に出ようとしたら話しかけられた。
「王家の力を使ってファルーク様を手に入れようとなさる行為はお見苦しいですわ。ファルーク様は断れませんのよ」
「……」
「ちょっと!」
私は黙って廊下に出ると、少し先で待っているファルーク様を手招きした。
彼が側にくると腕を掴んでトイレの入り口まで引っ張った。
令嬢達は彼の姿に驚きと光悦の表情を浮かべた。
「ファルーク様。彼女達の意見では 私はファルーク様に相応しくないそうです。特にこちらのお方は 王家の力を使い断れないファルーク様に無理強いしていると非難なさいました。
微塵もそんなことは無いはずですが、私の知らぬ所で起きていたのかもしれません。陛下がなんと言おうと気にせず、私のことは捨て置いてくださいませ」
ファルーク様は見たこともない怖い顔をして彼女達に告げた。
「君達に説明する義務は無いがはっきり言おう。
エリサ様に求婚したのは私で、彼女は私に関心は無い。それを陛下に頼み込んで交流する機会をいただいた。私はエリサ様と初めてお会いしたときに一目で心を奪われた。その後も心まで美しいエリサ様に更に心を寄せた。
もしもの時に手を挙げられるように、神殿から婚姻の資格を得られるほど努力した。
その私の気持ちを踏み躙り、邪魔をする権利が何処にある。
特に君。婚約者がいるにも関わらず釣書を送ってくるなど、ふしだらで不誠実だと思っていた。
それだけではなく 馬鹿で性根が腐っていて身の程知らずなのだな。その程度の容姿で何故選んでもらえると思うのか気が知れない。
4人とも、名前と王族への不敬の事実を陛下にご報告を申し上げる。
いいか、二度とエリサ様と私に近寄るな」
「お許しください!」
「どうか陛下には!」
「エリサ王女様!お助けください!」
「ううっ」
3人は懇願し、散々なことを言った1人は泣いていた。
「エリサ様、許す必要はありません。貴女の身分を知っていて言ったのですから、不敬罪で罰せられるのも承知です。ここで許せば秩序が乱れます。
さあ、これ以上下賎な者達と同じ空気を吸っていては毒されてしまいます。
気を取り直して食事に参りましょう。
愛するエリサ様に特別な席を用意しているのです」
「はい」
やっぱりこうなるわね。
王女でなければもっと無数の令嬢方に絡まれることになったはずよね。
仕切りのあるテラス席で食事をして食後にお茶を飲んでいた。
「エリサ様、恐らく今後もあのようなことがあると思います。必ず私に相手の名前を教えてください」
「どうなさるのですか?」
「先程のようにきちんと言い聞かせませんと」
「でも、それって見方を変えるとご褒美になりかねませんわ」
「ご褒美?」
「日頃接触できない方が話しかけてくださるのですから、中には叱責でも嬉しいと心を踊らせる女性もいらっしゃるのではありませんか?」
「怖いことを仰らないでください。
…ならば、今の発言はこうとも捉えることができますよ。
“他の女性に近付いて欲しくない、話しかけないで”って」
「え!? そんなことは」
「分かっております。そんなつもりはないことは。
ですが、そう言っていただけるのなら 私は今年いっぱい浮かれて過ごすことができるでしょう」
「……」
「役者の台詞だと思って言っていただけますか」
「……」
「では、私が今から愛を囁いて、」
「分かりました!……………やっぱり、」
「エリサ」
「わ、私以外の女性と親しくしたら許さないから」
「……」
「ファルーク様?」
「可愛すぎるっ!!」
「 !!! 」
「キスしたい」
「 !!!!! 」
「していい?」
「ダっ、ダメですっ!」
「他の男とキスなんてしてないよね?」
「なっ、」
「してないね?」
「…はい」
「手は握らせた?あの男に」
「あの男?」
「元婚約」
「サージ様ですか?
婚約式の時に少し手に触れたくらいです」
「どっちの手?」
「左です」
「婚約指輪か。まだ持ってるの?」
「あげました」
「あげた?」
「クビになった元王妃の侍女です。
彼女はジャミラ元王妃に逆らえなかったはずで、好きで逢い引きの手伝いをしていたわけではありません。再就職しようにも、まともな雇用先には恵まれないでしょう。
あれは既に曰く付きの指輪。ならば換金して彼女の今後に役立ててもらえたらとあげました」
「私は貴女のそういうところに惚れたのです」
「んっ」
ファルーク様は私の左手を掴み、薬指を口に含んで舐めた。
口から離すと私の掌に頬を擦り寄せた。
「その声を引き出すのも、この指に指輪をはめるのも私だけであって欲しい」
「ファルーク様っ」
刺激が強すぎて俯くことしかできなかった。
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