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拒否反応
直ぐに医師が呼ばれ、原因が精神的な事だと知った医師が吐き気止めと鎮静剤を処方してくれた。
お陰で眠ることができたが、目覚めると吐き気が出てしまう。落ち着きを取り戻し、薬を控えられるようになるのに5日も要した。
その間にディオンとカーラがお見舞いに来てくれたこと、ボイズ公爵とクリスチャンが謝罪と見舞いに来たことを知った。
「レティシア」
「お母様」
「お食事は摂れそう?」
「食べたくありません」
「せめてトマトジュースを飲んで」
「はい」
お母様はただ身体の心配をしてくれた。
だけどお父様は違った。
「辛いのは分かるが、こういうこともあるものだ。特に男はな」
「……」
「誰と婚姻したとしても浮気をしない男は稀だと思いなさい」
「お父様もという意味ですか」
「まあ、そうだな。若い頃はな。だが恋人は作ったことはない。 マルグリットには言うなよ」
「……」
「状況を説明しよう。
ボロン伯爵家は、クリスチャン殿と息女の婚姻を望んでいる」
「ディオンは?」
「ディオンは婚約を破棄したよ」
「ディオンが?」
「不貞をした上に、他の男と婚姻することをボロン嬢も伯爵も望んでいたら継続は難しい」
「……」
「だが、クリスチャン殿はレティシアとの継続を望んでいる。クリスチャン殿にとってボロン嬢は遊びだったのだろう」
「一体 私の婚約理由は何だったのですか?」
「ボイズ公爵家からの申し入れだった。公爵はクリスチャン殿がレティシアを選んだと言っていたな」
「政略的な要素は?」
「無い」
「私は…クリスチャンとやり直すことは無理だと思います」
「だが、」
「心身が受け付けないのです。あの光景を思い出す度に吐き気が…」
「はぁ。クリスチャン殿も困ったものだ。浮気は悟られないようにするものなのだ。婚約者同伴のパーティーで浮気などすれば見つかる可能性が高いだろうに」
「政略的な要素が無ければ破婚にしてもかまいませんよね?」
「分かった。その代わり、直ぐに新しい相手を探さねば。もう年頃の男は難ありしか残っていないだろう。歳の離れた男や後妻も覚悟しなくてはならないがいいか?」
「構いません」
「分かった。……レティシア」
「はい」
「クリスチャン殿を愛していたのか?」
「…恋愛感情というものは無かったと思います。
ですが、長い婚約期間の中で 私はこの人と家族になるんだといつもクリスチャンを見てきました。この人が生涯の夫になる人だと…」
そこからは言葉にならなかった。大粒の涙が次から次へと溢れ出して嗚咽が止まらない。
「レティシア…分かった、分かったから。クリスチャン殿のことは忘れなさい」
「っ…っ…」
お父様が私を力強く抱きしめながら呟いた。
「はぁ…アレクサンドルが知ったら大変だ。いや、必ず知るよな。
レティシア、ゆっくり休みなさい」
アレクサンドルとは私の8つ上の兄のことだ。
母譲りの美貌で父に似ているところはない。だけど父いわく、キャロン家の男そのものだと言っていた。
兄様はずっと令嬢達の心を惹きつけ、社交界を荒らしたと言われているが、勝手に令嬢達が兄様の美貌に心を寄せただけ。ストーカーもダースで発生し、何ダース揃うか父と母は賭けた。
クリスチャンも美男子だが、兄様と隣に並ぶと凡人に見えてくるから不思議だ。
母いわく“内面の輝きも違うのよ”と言っていた。親バカかとも思っていたが、兄様の友人の王太子殿下も同じことを仰ったので そうなのだろう。
兄様が選んだ女性は勉強の虫みたいな人で おしゃれに全く興味のない人だった。マノンは兄様より1歳上で男爵家の次女だった。男爵家での扱いが酷く勉学に集中できる環境では無かったし借金もあって、男爵は学園を退学させて売ろうとしていた。
兄様は自分に売ってくれと その時に抱えた借金全額肩代わりをした。更に色を付けて籍を抜かせマノンとキャロン家に関わらないことを誓わせ書面で交わした。マノンは父方の親戚に養女になりはしたが、そのままキャロン家に住まわせ全ての面倒を見た。
ドレスや宝石を望まなかった。 専門書や調査研究の旅の費用を惜しみなく使わせた。
現在は婚姻して3年が経ち、そろそろ子作りをなんて声が囁かれているが、もう少しかかりそうだ。
「お嬢様、お薬をお持ちしました」
「ありがとう」
メイドに連れられて部屋に戻り、鎮静剤で眠りについた。
【 アレクサンドルの視点 】
「は? クリスチャンが天使の前で浮気!?」
「ディオン・ウィルソンの婚約者ミリアナ・ボロンの誕生日のパーティで、招待されたクリスチャン・ボイズが天使様と同伴をしているにもかかわらず、令嬢と2人で抜け出し、個室で身体的な接触をしていたそうです。
ディオン殿と天使様が目撃し、天使様はショックのため吐き気が治らず、吐き気止めと鎮静剤で対処なさっているそうです」
「女とクリスチャンとの仲はどのくらい続いているんだ」
「1年以上だそうです」
「ならば浮気とは言わないな。父上の動きは」
「クリスチャンとボイズ公爵が謝罪に訪れましたが、天使様が会える状態にないと知ると後日再び見舞いに現れました。しかし天使様はまだ伯爵と話せる状態にあらず帰ってもらいました」
「分かった。王都へ向かうから支度をしてくれ。マノンは残らせるが外部の者とは接触させないでくれ」
「かしこまりました」
お陰で眠ることができたが、目覚めると吐き気が出てしまう。落ち着きを取り戻し、薬を控えられるようになるのに5日も要した。
その間にディオンとカーラがお見舞いに来てくれたこと、ボイズ公爵とクリスチャンが謝罪と見舞いに来たことを知った。
「レティシア」
「お母様」
「お食事は摂れそう?」
「食べたくありません」
「せめてトマトジュースを飲んで」
「はい」
お母様はただ身体の心配をしてくれた。
だけどお父様は違った。
「辛いのは分かるが、こういうこともあるものだ。特に男はな」
「……」
「誰と婚姻したとしても浮気をしない男は稀だと思いなさい」
「お父様もという意味ですか」
「まあ、そうだな。若い頃はな。だが恋人は作ったことはない。 マルグリットには言うなよ」
「……」
「状況を説明しよう。
ボロン伯爵家は、クリスチャン殿と息女の婚姻を望んでいる」
「ディオンは?」
「ディオンは婚約を破棄したよ」
「ディオンが?」
「不貞をした上に、他の男と婚姻することをボロン嬢も伯爵も望んでいたら継続は難しい」
「……」
「だが、クリスチャン殿はレティシアとの継続を望んでいる。クリスチャン殿にとってボロン嬢は遊びだったのだろう」
「一体 私の婚約理由は何だったのですか?」
「ボイズ公爵家からの申し入れだった。公爵はクリスチャン殿がレティシアを選んだと言っていたな」
「政略的な要素は?」
「無い」
「私は…クリスチャンとやり直すことは無理だと思います」
「だが、」
「心身が受け付けないのです。あの光景を思い出す度に吐き気が…」
「はぁ。クリスチャン殿も困ったものだ。浮気は悟られないようにするものなのだ。婚約者同伴のパーティーで浮気などすれば見つかる可能性が高いだろうに」
「政略的な要素が無ければ破婚にしてもかまいませんよね?」
「分かった。その代わり、直ぐに新しい相手を探さねば。もう年頃の男は難ありしか残っていないだろう。歳の離れた男や後妻も覚悟しなくてはならないがいいか?」
「構いません」
「分かった。……レティシア」
「はい」
「クリスチャン殿を愛していたのか?」
「…恋愛感情というものは無かったと思います。
ですが、長い婚約期間の中で 私はこの人と家族になるんだといつもクリスチャンを見てきました。この人が生涯の夫になる人だと…」
そこからは言葉にならなかった。大粒の涙が次から次へと溢れ出して嗚咽が止まらない。
「レティシア…分かった、分かったから。クリスチャン殿のことは忘れなさい」
「っ…っ…」
お父様が私を力強く抱きしめながら呟いた。
「はぁ…アレクサンドルが知ったら大変だ。いや、必ず知るよな。
レティシア、ゆっくり休みなさい」
アレクサンドルとは私の8つ上の兄のことだ。
母譲りの美貌で父に似ているところはない。だけど父いわく、キャロン家の男そのものだと言っていた。
兄様はずっと令嬢達の心を惹きつけ、社交界を荒らしたと言われているが、勝手に令嬢達が兄様の美貌に心を寄せただけ。ストーカーもダースで発生し、何ダース揃うか父と母は賭けた。
クリスチャンも美男子だが、兄様と隣に並ぶと凡人に見えてくるから不思議だ。
母いわく“内面の輝きも違うのよ”と言っていた。親バカかとも思っていたが、兄様の友人の王太子殿下も同じことを仰ったので そうなのだろう。
兄様が選んだ女性は勉強の虫みたいな人で おしゃれに全く興味のない人だった。マノンは兄様より1歳上で男爵家の次女だった。男爵家での扱いが酷く勉学に集中できる環境では無かったし借金もあって、男爵は学園を退学させて売ろうとしていた。
兄様は自分に売ってくれと その時に抱えた借金全額肩代わりをした。更に色を付けて籍を抜かせマノンとキャロン家に関わらないことを誓わせ書面で交わした。マノンは父方の親戚に養女になりはしたが、そのままキャロン家に住まわせ全ての面倒を見た。
ドレスや宝石を望まなかった。 専門書や調査研究の旅の費用を惜しみなく使わせた。
現在は婚姻して3年が経ち、そろそろ子作りをなんて声が囁かれているが、もう少しかかりそうだ。
「お嬢様、お薬をお持ちしました」
「ありがとう」
メイドに連れられて部屋に戻り、鎮静剤で眠りについた。
【 アレクサンドルの視点 】
「は? クリスチャンが天使の前で浮気!?」
「ディオン・ウィルソンの婚約者ミリアナ・ボロンの誕生日のパーティで、招待されたクリスチャン・ボイズが天使様と同伴をしているにもかかわらず、令嬢と2人で抜け出し、個室で身体的な接触をしていたそうです。
ディオン殿と天使様が目撃し、天使様はショックのため吐き気が治らず、吐き気止めと鎮静剤で対処なさっているそうです」
「女とクリスチャンとの仲はどのくらい続いているんだ」
「1年以上だそうです」
「ならば浮気とは言わないな。父上の動きは」
「クリスチャンとボイズ公爵が謝罪に訪れましたが、天使様が会える状態にないと知ると後日再び見舞いに現れました。しかし天使様はまだ伯爵と話せる状態にあらず帰ってもらいました」
「分かった。王都へ向かうから支度をしてくれ。マノンは残らせるが外部の者とは接触させないでくれ」
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※短編です。11/21に完結いたします。
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※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
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