【完結】見えてますよ!

ユユ

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境遇

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クスクス

また誰かが私を笑っているわ。

“え!婚約者!?”

私がどういう立場か知ると必ず、

“何故!?”

私も同感です。



今日もドレスに飲み物を溢される。

“ごめんなさい、わざとじゃないの”

“貴女がぶつかって来たのよ”

“居たの?気が付かなかったの”

毎度の事で私のドレスの色は濃いめ。

後付けのパーツも用意しているから染みを隠せる工夫もしている。



ドレスに飲み物をかけても、ドレスを引っ掛けて穴を開けても、足を出して躓かせても、ぶつかっても、彼女達の何が変わると言うのだろうか。
ぜひ彼に言い寄って略奪でもして欲しい。

文句など言わないし、邪魔もしない。
できるだけ早く婚約を解消したいから私は病気か?という程お花摘みに行くの。その隙を上手く使って欲しいから。

なのに、私の後を追って嫌がらせなんて…。



具合が悪いからと、ひとり早く去ろうとすると彼は“送るよ”とついて来てしまう。
強く遠慮しても駄目だった。

ドレスが汚れた、破れたという理由なら“ご友人方と楽しんでください”と言えば私だけ帰れることもある。

いつもニコニコしているこの人の本心が分からない。1日でも早く解消したい。



学園が始まってからは様々な嫌がらせを受けた。
物は無くなったり壊されたり。
無視されたり、嘘を教えられたり。
制服を汚されたり頭から飲み物をかけられたり。
足を踏まれたり、引っ掛けられたり。
押されたり、肘打ちされたり。

16歳の令嬢なのに痣も多い。



閉じ込められることもあった。
外の倉庫で冬だったからとても寒かった。
日も暮れ、暗闇に身を任せる。
このまま天国にいる父に会いに行ってもいいかもしれないと思ってしまった。

だけど助かってしまった。

訪ねて来た婚約者が荷物の残った机の側で待つが私が戻らない。日も暮れだし、教師に聞くも午後はずっと居なかったと答え、我が家の馬車を確認するとまだ学園にあった。

放課後の校舎に残った教師と使用人と婚約者が敷地内の全てを探した。人が隠れられそうな場所は確認せよと婚約者は命じた。

そして、外から棒で扉が開かないようにされていた倉庫で、意識を失い冷たくなっていた私が倒れていた。

婚約者は私を公爵邸に運び、侍医に治療させた。
安定してきた4日後、兄が私を邸に連れ戻した。
学校に復帰したのは10日後。



その間に学園長と担任から兄に謝罪があったようだ。
登校再開の前日、学園長と公爵様がやってきた。
犯人が判明したので説明にきたようだ。
私はどうでもよかったので同席しなかった。

後から兄に聞いたが、妬みが原因だという。
婚約者の座を狙っていた令嬢が主犯。
主犯の令嬢と呼び出しの手紙を渡した令嬢、閉じ込めに協力した令嬢2人の計4人は退学。

閉じ込められていると知っていた令嬢・令息達は3ヶ月の停学。
担任は交代。
校長は1年分の減給。

多額の慰謝料も支払われた。

公爵様からもお詫びをしたいと言われたが丁重にお断りした。只々婚約を解消して欲しいだけ。



この事件以来、婚約者は送り迎えと学食の時間を共に過ごすことを願い出た。断ったけど、せめて帰りだけでもと押し切られた。





ある日、公爵家でガーデンパーティーが行われた。

今日も無気力に仮面を付けて挨拶をする。

彼の親戚も来ていて、その中に伯爵令嬢がいた。
すぐ分かった。令嬢が彼を狙っていることを。

ぜひ奪って欲しいとお花を摘みにいく。
途中猫の鳴き声が聞こえた。
木から降りられなくなったらしい。
ちょうど2階のバルコニーから身を乗り出せば届きそうだ。
邸の中に入り、2階に上がってバルコニーに繋がる窓を開けて柵から身を乗り出し猫に手を伸ばす。

カツン

背後に靴の音がしたので振り返る瞬間、押された。

“……!!……!!”

誰かが必死で私の名を呼ぶ。

今度こそ天国のお父様に会える。

「お父様…」










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