【完結】見えてますよ!

ユユ

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療養3日目にマリエッタ様がお見舞いにきてくださった。

「大変な目にあったわね」

「打身だけですから」

「公爵令息を思い出せないのでしょう?」

「……はい」

「ずっと辛い目にあっていたものね」

「よく分かりませんが、政略ではないようですので解消を申し出たのですが、難色を示されました。何かいい方法はないでしょうか」

「急に知らない男を婚約者と言われたら戸惑うわね。だけどオヌール公爵令息よ!もったいないわ」

「私には不相応ですわ。釣り合いません」

「嫌なのね」

「……ところで、××××年の9月2日は兄様と何かありましたか?」

「なっ!!」

兄様とマリエッタ様の日付けが同じで互いの名前が出ているので聞いてみたのだが、マリエッタ様は真っ赤だ。

「どっ、どうしてそのことを!まさか」

「何の日なのですか」

「それは……」

マリエッタ様はお兄様が大好きで、私の世話もよく焼いてくれた。ここはマリエッタ様だけに真実を告げて味方にしよう。

「私の秘密を教えますから、教えてください。
それに誰にも話さないと誓ってください。神様が相手でも黙っていると。私も誓いますから」

「…わかったわ。誰にも言わない」

「記憶はあります。ふりをしているのです」

「ええ!?」

「しっ!」

「どうして」

「婚約を解消したいからです。ずっと思っていました。公爵家のメイドが記憶に問題があると誤解したので、利用しました」

「そうなの。そんなに嫌だったの」

「不釣り合いなので婚約して以来ずっと嫌がらせを受け、悪口を言われているのです。
政略結婚ですらない旨味のない婚約のようですから、解消はランドルフ様の為でもあるのです」

「…さっきの日付はマクセル様との初夜なの」

「えっ!!」

「しっ!」

「ごめんなさい」

「何で知ってるの」

「転落して目覚めたら日付けと名前が見えるようになりました。マリエッタ様とお兄様は日付けが同じで互いの名前しかありません。

お母様も父の名前しかありません」

「複数名前が見えたのは?」

「公爵様と両家の使用人達の多くです」

「…これは大変だわ!ギフトよ!」

「?」

「神様から特別な能力を授かったのよ!
多分それは閨の相手と日付けね」

「それと、文字が赤い場合があるのです」

「私達は何色?」

「赤です」

「何かしら。初体験の相手だから?」

「違うと思います。
一番最初に名前があっても黒の人もいますし、一番以外が赤の人もいます」

「……私達は互いに同意があったから、運命の相手かどうかかしら」

「それが、片方だけ赤ということもあるのです」

「では気持ちかもしれないわね。愛し合うという行為なのか、単なる交わりなのか」

「違うギフトが良かったです」

「商売にもなりそうだけど、狙われることにもなりかねないから秘密よ」

「はい。

もうお義姉様と呼んでいいですか」

「もちろんよ!恥ずかしいけど嬉しい!
リリって呼ぶわね!

はぁ~マクセル様が私だけだなんて!嬉しい!
ありがとう!リリのお陰で幸せだわ!」

「大袈裟ですよ」

「マクセル様が他の女に手を出していないと確信できたのだから、大袈裟ではないわ!」

「あ~!」

「どうしたの」

「つまりランドルフ様は清いお身体というわけですね。
不貞を理由に解消できません」

「どうして婚約したのかしら」

「聞こうと思っていたお父様が亡くなったから公爵様に聞くしかなかったのですが、政略ではないと言われました。

恋愛的なものではないはずですし、相応しくないのは変わりませんから」

「政略じゃなきゃ見初められたのよ」

「だとしたら、私は何故痣の絶えない日々を送り、2度も殺されかけたのでしょう。
彼は何も言いません。ただ最後に登場して婚約者の仮面を被るだけ」

「……分かったわ!
どの道、もう少し変わらないとダメよ。
予定を組んで距離をとりましょう」

「予定?」

「自分を磨いた方がいいわ。若いのに無気力なんだもの!」

「例えば?」

「猛勉強よ!目指せ主席!とまでは行かなくとも自分のためになるわ。勉強で忙しいと言えば誘いも断れるでしょう」

そう。今まで誘われるがまま社交に同伴してきた。
断る口実には良いかもしれない!

「やります!この間の多額の慰謝料があるのでそれで講師を雇います!誰かいませんか!?」

「分かったわ!学園での答案を貸してもらえる?
それで集めてみるわ!」



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