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ライアン達の子
王子を傷付けた
【 リリアンの視点 】
お父様が夕食で口にしたのはゼイン殿下の訪問だった。
「アンベール、リリアン。金曜日は学園が終わったら真っ直ぐ帰って来客に備えなさい。
ゼイン殿下が私を含めてアンベールとリリアンにも話をしたいことがあるらしい」
「はい」
私は思い当たることがあった。
「お父様、多分私のせいです。ごめんなさい」
「逆だ。謝罪をしたいそうだ」
「謝罪?…分かりました」
どちらにしても私が責めたからだろう。
兄様を見ても読み取れなかった。
金曜日の夕刻、殿下が到着した。
「バトラーズ公爵、アンベール、リリアン嬢。
お時間をいただきありがとうございます。
彼は陛下の側近の一人でサンドラー補佐官です。
私の失態を防ぐ役割と見届け人としての役割を命じられております。同席を許可願います」
「ゼイン殿下、サンドラー補佐官、おかけください」
お茶が運ばれて私達だけになった。
「リリアン嬢が学園で嫌がらせを受けているのは私のせいです。申し訳ありません。
先日、リリアン嬢から指摘を受けて、令嬢達がリリアン嬢に抗議をしたり、私物を荒らしたりしていることを知りました。
最初はアンベールの妹として、仲良くなれたらと学生食堂で側に座り話し掛けるようになりました。
ですがいつの間にかリリアン嬢に魅力を感じてしまったのです。
それをおもしろく思わなかった令嬢達がリリアン嬢に抗議をしました。
私物の件も私が原因かと。
私は、リリアン嬢の話を聞いているうちに、好きになってしまいました。
口には出していませんが、私の気持ちが彼女達に分かったのでしょう。
抗議をしていたのは婚約者の友人の3名です。
調査はリリアン嬢から指摘を受けた翌日からですので、それより前については未確認です。
そして私物を荒らしていたのは二人。
一人はブロース公爵家の次女ベローナです。
彼女の場合は姉のキャスリン嬢の仕返しかもしれません。
もう一人は同じクラスのベセロナ伯爵家の三女ミーナです。彼女は私の婚約者の従姉妹です。
依頼された可能性もあります。
こちらがリリアン嬢と教室に付けた第四からの報告書です。
申し訳ありません」
お父様が報告書を読み終わると、殿下は続けた。
「この報告書を元に、当事者を呼び出し、問い正そうと思いましたが、公爵がどうなさりたいか伺ってからと思い、報告書で止めています。
ご希望はございますか」
「ブロース公爵家については、バトラーズにお任せください」
「分かりました。残りはこちらで対応して、また報告します。
バトラーズ公爵、リリアン嬢。私のせいで申し訳ありません。
リリアン、好きになってごめん。
あと、食堂でアンベールが間に入ったのは私からリリアンを守るためだ。いくら公爵家といっても王族と揉めたら大変だとリリアンの身を案じたんだ。
最初もアンベールは、私やジャノがリリアンに近付くのを嫌がった。
昔の過ちをアンベールなりに悔いていることだけは知って欲しい。
本当に悪かった」
そう言って頭を下げてくれた。
「私の方こそごめんなさい。ゼイン殿下を傷付けてしまいましたね。
お気持ちはありがとうございます。
ゼイン殿下がどうとかじゃなくて、私個人が妃に向かないのです。
嫌がらせだって、ゼイン殿下を責めないで本人を責めるべきでした。八つ当たりでした。
ごめんなさい」
ゼイン殿下の悲しそうな嬉しそうな、どちらともいえない顔を見ていたら涙が出てきてしまった。
「リリアン、私が悪いんだ!泣かないでくれ!」
「……っ」
「リリアン、ごめんっ」
殿下が跪こうとするのをサンドラー補佐官が止めに入った、
「兄様もごめんなさい」
「リリアンは悪くない」
「パパっ」
殿下の前だというのにお父様をパパと呼んで抱きついて泣き続けてしまった。
「殿下のお気持ちも誠意も受け取りました。
リリアンの本来の姿はこのように甘えん坊の泣き虫です。相手を思いやる心もありますが防壁のように相手と線を引くところもあります。それがとても冷たく見えてしまいます。
リリアンは一般的な令嬢のような趣味は持たず、ご存知の通り剣や弓が好きです。
ドレスや宝石よりも、抱き付くぬいぐるみを欲しがりますし、怖い夢を見たときや嵐の夜は一人では居られず私達の部屋に避難してきます。
動物も好きです。乗馬は軽く教えていますが、いつか遠乗りをして疾走したいと夢見ています。
私はリリアンにそのままでいいと言いました。
愛する娘の可愛い望みくらい叶えてやれなければ妻に捨てられてしまいます。
アンベールも可愛い息子ではありますが、アンベールが背負うものを考えれば厳しくせざるを得ません。兄妹間の差に理不尽だと感じてるかもしれませんが、跡継ぎとしてはリリアンと同じでは駄目なのです。
それに妹一人守れなければ、いずれ迎える妻も、産まれるであろう子も、領民も使用人も守れません。
今日は殿下がいらしたことによってリリアンもアンベールも成長できます。
ありがとうございました」
その後は、また今度、進展があったらということになった。
何も、怖くてお父様達の部屋に行っていることをバラさなくたっていいじゃないと、夜におやすみと言いに来てくれたお母様に愚痴を言った。
お父様が夕食で口にしたのはゼイン殿下の訪問だった。
「アンベール、リリアン。金曜日は学園が終わったら真っ直ぐ帰って来客に備えなさい。
ゼイン殿下が私を含めてアンベールとリリアンにも話をしたいことがあるらしい」
「はい」
私は思い当たることがあった。
「お父様、多分私のせいです。ごめんなさい」
「逆だ。謝罪をしたいそうだ」
「謝罪?…分かりました」
どちらにしても私が責めたからだろう。
兄様を見ても読み取れなかった。
金曜日の夕刻、殿下が到着した。
「バトラーズ公爵、アンベール、リリアン嬢。
お時間をいただきありがとうございます。
彼は陛下の側近の一人でサンドラー補佐官です。
私の失態を防ぐ役割と見届け人としての役割を命じられております。同席を許可願います」
「ゼイン殿下、サンドラー補佐官、おかけください」
お茶が運ばれて私達だけになった。
「リリアン嬢が学園で嫌がらせを受けているのは私のせいです。申し訳ありません。
先日、リリアン嬢から指摘を受けて、令嬢達がリリアン嬢に抗議をしたり、私物を荒らしたりしていることを知りました。
最初はアンベールの妹として、仲良くなれたらと学生食堂で側に座り話し掛けるようになりました。
ですがいつの間にかリリアン嬢に魅力を感じてしまったのです。
それをおもしろく思わなかった令嬢達がリリアン嬢に抗議をしました。
私物の件も私が原因かと。
私は、リリアン嬢の話を聞いているうちに、好きになってしまいました。
口には出していませんが、私の気持ちが彼女達に分かったのでしょう。
抗議をしていたのは婚約者の友人の3名です。
調査はリリアン嬢から指摘を受けた翌日からですので、それより前については未確認です。
そして私物を荒らしていたのは二人。
一人はブロース公爵家の次女ベローナです。
彼女の場合は姉のキャスリン嬢の仕返しかもしれません。
もう一人は同じクラスのベセロナ伯爵家の三女ミーナです。彼女は私の婚約者の従姉妹です。
依頼された可能性もあります。
こちらがリリアン嬢と教室に付けた第四からの報告書です。
申し訳ありません」
お父様が報告書を読み終わると、殿下は続けた。
「この報告書を元に、当事者を呼び出し、問い正そうと思いましたが、公爵がどうなさりたいか伺ってからと思い、報告書で止めています。
ご希望はございますか」
「ブロース公爵家については、バトラーズにお任せください」
「分かりました。残りはこちらで対応して、また報告します。
バトラーズ公爵、リリアン嬢。私のせいで申し訳ありません。
リリアン、好きになってごめん。
あと、食堂でアンベールが間に入ったのは私からリリアンを守るためだ。いくら公爵家といっても王族と揉めたら大変だとリリアンの身を案じたんだ。
最初もアンベールは、私やジャノがリリアンに近付くのを嫌がった。
昔の過ちをアンベールなりに悔いていることだけは知って欲しい。
本当に悪かった」
そう言って頭を下げてくれた。
「私の方こそごめんなさい。ゼイン殿下を傷付けてしまいましたね。
お気持ちはありがとうございます。
ゼイン殿下がどうとかじゃなくて、私個人が妃に向かないのです。
嫌がらせだって、ゼイン殿下を責めないで本人を責めるべきでした。八つ当たりでした。
ごめんなさい」
ゼイン殿下の悲しそうな嬉しそうな、どちらともいえない顔を見ていたら涙が出てきてしまった。
「リリアン、私が悪いんだ!泣かないでくれ!」
「……っ」
「リリアン、ごめんっ」
殿下が跪こうとするのをサンドラー補佐官が止めに入った、
「兄様もごめんなさい」
「リリアンは悪くない」
「パパっ」
殿下の前だというのにお父様をパパと呼んで抱きついて泣き続けてしまった。
「殿下のお気持ちも誠意も受け取りました。
リリアンの本来の姿はこのように甘えん坊の泣き虫です。相手を思いやる心もありますが防壁のように相手と線を引くところもあります。それがとても冷たく見えてしまいます。
リリアンは一般的な令嬢のような趣味は持たず、ご存知の通り剣や弓が好きです。
ドレスや宝石よりも、抱き付くぬいぐるみを欲しがりますし、怖い夢を見たときや嵐の夜は一人では居られず私達の部屋に避難してきます。
動物も好きです。乗馬は軽く教えていますが、いつか遠乗りをして疾走したいと夢見ています。
私はリリアンにそのままでいいと言いました。
愛する娘の可愛い望みくらい叶えてやれなければ妻に捨てられてしまいます。
アンベールも可愛い息子ではありますが、アンベールが背負うものを考えれば厳しくせざるを得ません。兄妹間の差に理不尽だと感じてるかもしれませんが、跡継ぎとしてはリリアンと同じでは駄目なのです。
それに妹一人守れなければ、いずれ迎える妻も、産まれるであろう子も、領民も使用人も守れません。
今日は殿下がいらしたことによってリリアンもアンベールも成長できます。
ありがとうございました」
その後は、また今度、進展があったらということになった。
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