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ライアン達の子
公爵家ではのびのびと
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【 アンベールの視点 】
リリアンの誕生日が近くなり、領地から王都へ戻ってきたら屋敷には美の化身のような男?がいた。
「ヘイゼルだ。しばらく滞在するからよろしく」
「あ、アンベールです」
父が手招きして私を隣の部屋に連れて行った。
そして事情をはなしてくれた。
は? ゾードから王女として来たけど実は王子!?
それはバトラーズ家しか知らない!?
「何でウチに来ちゃったんですか」
「リリアンを気に入ってついてきた。
友人と言っているが怪しい」
「じゃあ何で受け入れたんですか」
「リリアンが楽しそうだったから」
あ~、この父はリリアンに甘いんだ。
まあ、シャルール伯爵のことがあったから仕方ないか。
「で、男として過ごすのですね?」
「らしいな」
「しかし、恐ろしい美しさですね」
「外出は変装させるつもりだが、漏れるな」
中性的な超美男子を隠し切れるのだろうか。
応接間に戻ると、母と楽し気に話をしていた。
「そうなのよ。リリアンに甘くて」
「いいではないですか。甘やかしてもリリアン嬢のように心の綺麗な女性に育てたのですから」
「まあ、そう思う?」
「ええ。早々に叱られました」
ゾードの王子を叱ったの!? リリアン!
「リリアンったら。ごめんなさいね」
「そうだ、リリアン嬢の誕生日プレゼントを買わないと」
「そんな、お気遣いなく」
「僕の初めての女性の友人ですよ? しっかりとお祝いしないと。グラースで一番の宝石商を呼んでください」
「でも、」
「僕はゾードの第二王子ですよ?
友人の屋敷に滞在させてもらっておいて、祝い事に贈り物一つ出来ないなんて醜態は晒せません」
「じゃあ呼ぼうかしら」
私は父に耳打ちをした。
「(母上が攻略されますよ)」
「(そんなことになろうものなら埋めるから大丈夫だ)」
父上…、ウチの敷地は止めてくださいね?
一時間もしないうちに宝石商がやって来た。
ヘイゼル殿下は顔半分を覆うアイマスクを付けていた。薄紫の瞳が宝石を見つめる。
「コレを中心とした四点セットを作ってくれないか」
デザイン帳のページを捲る。
「こんな感じがいいな。令嬢は17歳になるところだから若々しくしてくれ。しっかりと色がわかるようにして欲しい」
「ご予算は、」
「心配することはない。金貨で払ってもいいし、国から送金させてもいい」
そう言ってヘイゼル殿下はポケットからペンダントのようなものを取り出した。宝石商に渡すと、彼は一瞬顔が強張ったが、立ち上がり跪いてペンダントを返した。
「お会いできて光栄に存じます」
「流石、グラース1の宝石商だな」
「公女様への贈り物ということで、早急にデザイン画をお持ちします」
「日がないんだ。間に合うか?」
「全てを止めてでも間に合わせます」
「それでは先客に申し訳が立たないな」
「お任せください」
「そうか。よろしく頼むよ」
ゾードの王子はグラースでもこんなに影響があるとは知らなかった。
そんなことも知らず、変装して迎えに行ったヘイゼル殿下と帰ってきたリリアンは、
「ヘイゼル様、全然みすぼらしくなってないじゃないですか。ヘイゼル様の限界はそんなものですか?
もっとだらしない顔をして、小汚くしてください」
リリアン…おまえ…
「ごめんよ、リリアン。ついつい眩い美と高貴さが溢れ出ちゃうんだ」
リリアン、もっと言え。
「仕方ないなぁ。今夜は入浴前に、小汚くする練習をしましょう。ウィッグも、ハゲウィッグがあればいいのに」
「リリアン? 流石にハゲウィッグは嫌だよ?」
「漏れ出ちゃうんですから仕方ないじゃないですか」
「頑張って塞ぎます」
「よろしい」
リリアン優勢だな。
夕食後、ヘイゼル殿下を小汚くしては私達に披露した。
「う~ん。まだ品がありますね」
「そうだな」
「そうね」
「ヘイゼル様、内なる下品さを表に出してください」
「内にそんなものは無い」
「顔は神がかっていても所詮は人間。絶対隠し持っているはずです」
所詮って…
「まず、立ち振る舞いがいけません。猫背にしてガニ股で。口はいつも半開き」
「くっ! 精神的にくるっ」
「じゃあ、一人屋敷で大人しくするか城に戻ってください」
「やるよ。やるから」
そして美しい破落戸風が仕上がった?
「ヘイゼル様、頬を染めて手で顔を覆って恥ずかしがる破落戸が何処にいるのですか?
しかもまだ佇まいが美しいですよ!」
「たすけて…」
顔を手で覆ったまま か細い声で助けを求めるヘイゼル殿下に、彼の連れて来た侍女と護衛が笑いを堪えていた。
「リリアン。殿下を護衛騎士にしてしまえばいいんじゃないか?
ウチの服着せて、髪と肌を少し汚して、シンプルな帯状のアイマスクを付ければ。眼帯でもいいし。
そうすれば、きちんとした感じでも、」
「アンベール殿!」
「え!?」
「僕の恩人だ!ありがとう!
今日は枕を濡らして寝るところだったよ!」
ヘイゼル殿下は涙を浮かべながら抱きついてきた。
「解決して良かったです。
リリアン、殿下をオモチャにしたら駄目だよ」
「一緒に遊んでいるの!」
「トラウマを抱えさせるつもりか?」
「この程度で…」
一体他に何させるつもりだったんだよ。
執事やメイド達が目を逸らした。
きっと次の目論みの指示を受けているんだな。
「ヘイゼル殿下。無理って言っていいんですよ?」
「でもっ、城に返品されちゃうっ」
「リリアン。可哀想じゃないか」
「兄様はヘイゼル様に騙されているんですよ。
本来はこの程度でダメージを受けるような人じゃないですから」
「ダメージの種類が違うんだよ。一応王族だからな」
「アンベール殿。一応ではなく、100%です」
「し、失礼しました」
「兄様を威圧したら、ハゲウィッグ特注して被らせますよ」
「ヤダなぁ。威圧なんかしてないよ。ね?義兄上」
「え?」
「僕より一つ上ですよね?」
「はい」
どうしたらいいんだ?
ゼイン殿下もリリアンのことを諦めていないだろうし。
この超美男子がウチにいるってゼイン殿下は知らないんだよな? 王女だって思ってるんだよな?
なんか裏切っている気分になるな。
すごい怒りそう。
リリアンの誕生日が近くなり、領地から王都へ戻ってきたら屋敷には美の化身のような男?がいた。
「ヘイゼルだ。しばらく滞在するからよろしく」
「あ、アンベールです」
父が手招きして私を隣の部屋に連れて行った。
そして事情をはなしてくれた。
は? ゾードから王女として来たけど実は王子!?
それはバトラーズ家しか知らない!?
「何でウチに来ちゃったんですか」
「リリアンを気に入ってついてきた。
友人と言っているが怪しい」
「じゃあ何で受け入れたんですか」
「リリアンが楽しそうだったから」
あ~、この父はリリアンに甘いんだ。
まあ、シャルール伯爵のことがあったから仕方ないか。
「で、男として過ごすのですね?」
「らしいな」
「しかし、恐ろしい美しさですね」
「外出は変装させるつもりだが、漏れるな」
中性的な超美男子を隠し切れるのだろうか。
応接間に戻ると、母と楽し気に話をしていた。
「そうなのよ。リリアンに甘くて」
「いいではないですか。甘やかしてもリリアン嬢のように心の綺麗な女性に育てたのですから」
「まあ、そう思う?」
「ええ。早々に叱られました」
ゾードの王子を叱ったの!? リリアン!
「リリアンったら。ごめんなさいね」
「そうだ、リリアン嬢の誕生日プレゼントを買わないと」
「そんな、お気遣いなく」
「僕の初めての女性の友人ですよ? しっかりとお祝いしないと。グラースで一番の宝石商を呼んでください」
「でも、」
「僕はゾードの第二王子ですよ?
友人の屋敷に滞在させてもらっておいて、祝い事に贈り物一つ出来ないなんて醜態は晒せません」
「じゃあ呼ぼうかしら」
私は父に耳打ちをした。
「(母上が攻略されますよ)」
「(そんなことになろうものなら埋めるから大丈夫だ)」
父上…、ウチの敷地は止めてくださいね?
一時間もしないうちに宝石商がやって来た。
ヘイゼル殿下は顔半分を覆うアイマスクを付けていた。薄紫の瞳が宝石を見つめる。
「コレを中心とした四点セットを作ってくれないか」
デザイン帳のページを捲る。
「こんな感じがいいな。令嬢は17歳になるところだから若々しくしてくれ。しっかりと色がわかるようにして欲しい」
「ご予算は、」
「心配することはない。金貨で払ってもいいし、国から送金させてもいい」
そう言ってヘイゼル殿下はポケットからペンダントのようなものを取り出した。宝石商に渡すと、彼は一瞬顔が強張ったが、立ち上がり跪いてペンダントを返した。
「お会いできて光栄に存じます」
「流石、グラース1の宝石商だな」
「公女様への贈り物ということで、早急にデザイン画をお持ちします」
「日がないんだ。間に合うか?」
「全てを止めてでも間に合わせます」
「それでは先客に申し訳が立たないな」
「お任せください」
「そうか。よろしく頼むよ」
ゾードの王子はグラースでもこんなに影響があるとは知らなかった。
そんなことも知らず、変装して迎えに行ったヘイゼル殿下と帰ってきたリリアンは、
「ヘイゼル様、全然みすぼらしくなってないじゃないですか。ヘイゼル様の限界はそんなものですか?
もっとだらしない顔をして、小汚くしてください」
リリアン…おまえ…
「ごめんよ、リリアン。ついつい眩い美と高貴さが溢れ出ちゃうんだ」
リリアン、もっと言え。
「仕方ないなぁ。今夜は入浴前に、小汚くする練習をしましょう。ウィッグも、ハゲウィッグがあればいいのに」
「リリアン? 流石にハゲウィッグは嫌だよ?」
「漏れ出ちゃうんですから仕方ないじゃないですか」
「頑張って塞ぎます」
「よろしい」
リリアン優勢だな。
夕食後、ヘイゼル殿下を小汚くしては私達に披露した。
「う~ん。まだ品がありますね」
「そうだな」
「そうね」
「ヘイゼル様、内なる下品さを表に出してください」
「内にそんなものは無い」
「顔は神がかっていても所詮は人間。絶対隠し持っているはずです」
所詮って…
「まず、立ち振る舞いがいけません。猫背にしてガニ股で。口はいつも半開き」
「くっ! 精神的にくるっ」
「じゃあ、一人屋敷で大人しくするか城に戻ってください」
「やるよ。やるから」
そして美しい破落戸風が仕上がった?
「ヘイゼル様、頬を染めて手で顔を覆って恥ずかしがる破落戸が何処にいるのですか?
しかもまだ佇まいが美しいですよ!」
「たすけて…」
顔を手で覆ったまま か細い声で助けを求めるヘイゼル殿下に、彼の連れて来た侍女と護衛が笑いを堪えていた。
「リリアン。殿下を護衛騎士にしてしまえばいいんじゃないか?
ウチの服着せて、髪と肌を少し汚して、シンプルな帯状のアイマスクを付ければ。眼帯でもいいし。
そうすれば、きちんとした感じでも、」
「アンベール殿!」
「え!?」
「僕の恩人だ!ありがとう!
今日は枕を濡らして寝るところだったよ!」
ヘイゼル殿下は涙を浮かべながら抱きついてきた。
「解決して良かったです。
リリアン、殿下をオモチャにしたら駄目だよ」
「一緒に遊んでいるの!」
「トラウマを抱えさせるつもりか?」
「この程度で…」
一体他に何させるつもりだったんだよ。
執事やメイド達が目を逸らした。
きっと次の目論みの指示を受けているんだな。
「ヘイゼル殿下。無理って言っていいんですよ?」
「でもっ、城に返品されちゃうっ」
「リリアン。可哀想じゃないか」
「兄様はヘイゼル様に騙されているんですよ。
本来はこの程度でダメージを受けるような人じゃないですから」
「ダメージの種類が違うんだよ。一応王族だからな」
「アンベール殿。一応ではなく、100%です」
「し、失礼しました」
「兄様を威圧したら、ハゲウィッグ特注して被らせますよ」
「ヤダなぁ。威圧なんかしてないよ。ね?義兄上」
「え?」
「僕より一つ上ですよね?」
「はい」
どうしたらいいんだ?
ゼイン殿下もリリアンのことを諦めていないだろうし。
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