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ライアン達の子
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【 ゼインの視点 】
あっけなかった。ヘイゼル王女一行はサッサとバトラーズ公爵邸へ移ってしまった。
いつまで滞在するのか分からず、そのまま公爵邸から帰国するらしい。
エフ殿に聞いても口を割らない。ただ、
「リリアンが受け入れているので」
それだけ。
だが、何か胸騒ぎがする。
もうすぐリリアンの誕生日。呼んだら来てくれるかな。本当は私が行きたいが、今バトラーズ邸に王女がいる以上、誤解を招きかねない。
「あの、ゼイン王子殿下」
「どうした」
「実は昨日の非番で、恋人と街へ出かけたのですが、夕方、庶民の服を来た公女様を見かけました」
「買い物か?」
「それが、見たことのない護衛騎士が…、でもバトラーズ家の私兵を全員知っているわけではないので…」
「はっきり言ってくれ」
「他にも何人か護衛がいて、ゾードの護衛もいる中で公女様ととても近い護衛騎士が一人いたのです」
「どの程度だ」
「髪に触れ、頬に触れ、手を繋ぎ、楽しそうでした」
「……」
「風貌は」
「年齢は若いです。殿下と同じ位ではないでしょうか。服もサイズが合っておらず、顔も少し汚れていて眼帯をしていました。
ですが立ち振る舞いがかなりの高位貴族だと思います。つまり、目立つから変装させているのだと」
「瞳の色は」
「そこまでは見えませんでした」
「髪の色は」
「茶色ですがカツラかもしれません」
「そういう時は睫毛を見るんだよ」
「すみません。少し遠かったので」
「すまない。ありがとう。
どの店で見かけたんだ?」
「雑貨店です。入って行くところでした」
「追いかけなかったのか」
「デート中で連れがいましたので…」
「そうだった。すまない」
「手は男が握ったと思いますので、公女様が断れない身分か立場か…」
「ありがとう」
「私はこれで失礼いたします」
ガシャーン!
「殿下!」
「何でもない!一人にしてくれ!」
高位貴族!? 誰だ…
リリアンは身分や立場で手を繋ぐことを許す女じゃない。リリアンの心に入り込んでいる証拠だ。良くて友人か親戚……それとも王女の変装か?
王都に戻っているというアンベールを呼んだが、目が泳いでいるし、少し怯えている。
何かあるんだな。
「アンベール。リリアンについて何か隠し事はないか」
「……隠し事とは?」
「リリアンの側に男が現れたとか」
「っ!」
肩が揺れて顔が引き攣ったな。
「誰だ」
「……」
「アンベール」
「お答えできません」
「私が頼んでもか?」
「私には答えることを許されておりません」
アンベールより立場が上?
私と同じ年頃と言ったから公爵ではない。
報告が上がるほどの触れ方をアンベールが妹にするはずがない。
王女が男装をしたのだと結論付けた。
「リリアンの誕生祝いは公爵邸でやるのか」
「はい。誰も呼ばずにやることにしています」
「いつやるんだ?」
「平日の夜です」
「私に知られたくないようだな」
「他国の王族を預かっておりますので、屋敷には誰も近付けず、予定なども口外しないことになっています」
まあ、そうだな。
「リリアンをこっちに寄越してくれないか」
「私に言われましても。父宛に手紙をお願いします」
「今書くから持ち帰ってくれ」
「かしこまりました」
私は間抜けだ。何故最初からあった違和感を放置したのだろう。
翌日には返事があり、土曜日ならと連絡があった。
その時はヘイゼル殿下も同席しますので陛下も同席をと書いてあった。
よく分からないが、父上に話を通した。
木曜日にリリアンの誕生日があり、花を贈った。
ご希望の物は土曜に渡そうと思ってまだ手元にある。
あっけなかった。ヘイゼル王女一行はサッサとバトラーズ公爵邸へ移ってしまった。
いつまで滞在するのか分からず、そのまま公爵邸から帰国するらしい。
エフ殿に聞いても口を割らない。ただ、
「リリアンが受け入れているので」
それだけ。
だが、何か胸騒ぎがする。
もうすぐリリアンの誕生日。呼んだら来てくれるかな。本当は私が行きたいが、今バトラーズ邸に王女がいる以上、誤解を招きかねない。
「あの、ゼイン王子殿下」
「どうした」
「実は昨日の非番で、恋人と街へ出かけたのですが、夕方、庶民の服を来た公女様を見かけました」
「買い物か?」
「それが、見たことのない護衛騎士が…、でもバトラーズ家の私兵を全員知っているわけではないので…」
「はっきり言ってくれ」
「他にも何人か護衛がいて、ゾードの護衛もいる中で公女様ととても近い護衛騎士が一人いたのです」
「どの程度だ」
「髪に触れ、頬に触れ、手を繋ぎ、楽しそうでした」
「……」
「風貌は」
「年齢は若いです。殿下と同じ位ではないでしょうか。服もサイズが合っておらず、顔も少し汚れていて眼帯をしていました。
ですが立ち振る舞いがかなりの高位貴族だと思います。つまり、目立つから変装させているのだと」
「瞳の色は」
「そこまでは見えませんでした」
「髪の色は」
「茶色ですがカツラかもしれません」
「そういう時は睫毛を見るんだよ」
「すみません。少し遠かったので」
「すまない。ありがとう。
どの店で見かけたんだ?」
「雑貨店です。入って行くところでした」
「追いかけなかったのか」
「デート中で連れがいましたので…」
「そうだった。すまない」
「手は男が握ったと思いますので、公女様が断れない身分か立場か…」
「ありがとう」
「私はこれで失礼いたします」
ガシャーン!
「殿下!」
「何でもない!一人にしてくれ!」
高位貴族!? 誰だ…
リリアンは身分や立場で手を繋ぐことを許す女じゃない。リリアンの心に入り込んでいる証拠だ。良くて友人か親戚……それとも王女の変装か?
王都に戻っているというアンベールを呼んだが、目が泳いでいるし、少し怯えている。
何かあるんだな。
「アンベール。リリアンについて何か隠し事はないか」
「……隠し事とは?」
「リリアンの側に男が現れたとか」
「っ!」
肩が揺れて顔が引き攣ったな。
「誰だ」
「……」
「アンベール」
「お答えできません」
「私が頼んでもか?」
「私には答えることを許されておりません」
アンベールより立場が上?
私と同じ年頃と言ったから公爵ではない。
報告が上がるほどの触れ方をアンベールが妹にするはずがない。
王女が男装をしたのだと結論付けた。
「リリアンの誕生祝いは公爵邸でやるのか」
「はい。誰も呼ばずにやることにしています」
「いつやるんだ?」
「平日の夜です」
「私に知られたくないようだな」
「他国の王族を預かっておりますので、屋敷には誰も近付けず、予定なども口外しないことになっています」
まあ、そうだな。
「リリアンをこっちに寄越してくれないか」
「私に言われましても。父宛に手紙をお願いします」
「今書くから持ち帰ってくれ」
「かしこまりました」
私は間抜けだ。何故最初からあった違和感を放置したのだろう。
翌日には返事があり、土曜日ならと連絡があった。
その時はヘイゼル殿下も同席しますので陛下も同席をと書いてあった。
よく分からないが、父上に話を通した。
木曜日にリリアンの誕生日があり、花を贈った。
ご希望の物は土曜に渡そうと思ってまだ手元にある。
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