【完結】救済版:ずっと好きだった

ユユ

文字の大きさ
69 / 73
ライアン達の子

目撃情報

しおりを挟む
【 ゼインの視点 】


あっけなかった。ヘイゼル王女一行はサッサとバトラーズ公爵邸へ移ってしまった。
いつまで滞在するのか分からず、そのまま公爵邸から帰国するらしい。

エフ殿に聞いても口を割らない。ただ、

「リリアンが受け入れているので」

それだけ。


だが、何か胸騒ぎがする。

もうすぐリリアンの誕生日。呼んだら来てくれるかな。本当は私が行きたいが、今バトラーズ邸に王女がいる以上、誤解を招きかねない。



「あの、ゼイン王子殿下」

「どうした」

「実は昨日の非番で、恋人と街へ出かけたのですが、夕方、庶民の服を来た公女様を見かけました」

「買い物か?」

「それが、見たことのない護衛騎士が…、でもバトラーズ家の私兵を全員知っているわけではないので…」

「はっきり言ってくれ」

「他にも何人か護衛がいて、ゾードの護衛もいる中で公女様ととても近い護衛騎士が一人いたのです」

「どの程度だ」

「髪に触れ、頬に触れ、手を繋ぎ、楽しそうでした」

「……」

「風貌は」

「年齢は若いです。殿下と同じ位ではないでしょうか。服もサイズが合っておらず、顔も少し汚れていて眼帯をしていました。 

ですが立ち振る舞いがかなりの高位貴族だと思います。つまり、目立つから変装させているのだと」

「瞳の色は」

「そこまでは見えませんでした」

「髪の色は」

「茶色ですがカツラかもしれません」

「そういう時は睫毛を見るんだよ」

「すみません。少し遠かったので」

「すまない。ありがとう。
どの店で見かけたんだ?」

「雑貨店です。入って行くところでした」

「追いかけなかったのか」

「デート中で連れがいましたので…」

「そうだった。すまない」

「手は男が握ったと思いますので、公女様が断れない身分か立場か…」

「ありがとう」

「私はこれで失礼いたします」



ガシャーン!

「殿下!」

「何でもない!一人にしてくれ!」



高位貴族!? 誰だ…

リリアンは身分や立場で手を繋ぐことを許す女じゃない。リリアンの心に入り込んでいる証拠だ。良くて友人か親戚……それとも王女の変装か?


王都に戻っているというアンベールを呼んだが、目が泳いでいるし、少し怯えている。
何かあるんだな。

「アンベール。リリアンについて何か隠し事はないか」

「……隠し事とは?」

「リリアンの側に男が現れたとか」

「っ!」

肩が揺れて顔が引き攣ったな。

「誰だ」

「……」

「アンベール」

「お答えできません」

「私が頼んでもか?」

「私には答えることを許されておりません」

アンベールより立場が上?

私と同じ年頃と言ったから公爵ではない。
報告が上がるほどの触れ方をアンベールが妹にするはずがない。

王女が男装をしたのだと結論付けた。

「リリアンの誕生祝いは公爵邸でやるのか」

「はい。誰も呼ばずにやることにしています」

「いつやるんだ?」

「平日の夜です」

「私に知られたくないようだな」

「他国の王族を預かっておりますので、屋敷には誰も近付けず、予定なども口外しないことになっています」

まあ、そうだな。

「リリアンをこっちに寄越してくれないか」

「私に言われましても。父宛に手紙をお願いします」

「今書くから持ち帰ってくれ」

「かしこまりました」


私は間抜けだ。何故最初からあった違和感を放置したのだろう。




翌日には返事があり、土曜日ならと連絡があった。
その時はヘイゼル殿下も同席しますので陛下も同席をと書いてあった。

よく分からないが、父上に話を通した。



木曜日にリリアンの誕生日があり、花を贈った。
ご希望の物は土曜に渡そうと思ってまだ手元にある。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

モブは転生ヒロインを許さない

成行任世
恋愛
死亡ルートを辿った攻略対象者の妹(モブ)が転生ヒロインを断罪します。 .

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。 『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』 『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』 公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。 もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。 屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは…… *表紙絵自作

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

処理中です...