【完結】婚約破棄された令嬢は、嫌われ後妻を満喫する

ユユ

文字の大きさ
4 / 35

海の香り

しおりを挟む
ブラージェル邸が見えてきた。潮の香りは強くない。屋敷は海から離れた場所にある。

地図を見ると私の屋敷は小さなプライベートビーチが付いていた。屋敷からビーチまで通路を作りたいので直ぐに職人を呼ぶつもりだ。
そして裏庭テラスを大きく作り、ピザ窯や炭火グリルテーブルも作りたい。

護衛騎士が門番と揉めている。

「どうしたの?」

「来客の予定が無いとかで確認を取ると…」

「どちらの不手際か分からないから待ちましょう。
暑いのにごめんなさいね」

「このくらい大丈夫です」

30分くらい待たされて、ようやく通してもらえた。これは挨拶だけして向こうの屋敷に向かった方が良さそうね。

馬車を降りてすぐ、使用人に荷物を下ろすなと告げた。

「アルミュア公女様、私は家令のオレリオと申します。ようこそブラージェル邸へ。
お越しになる日を把握しておらず申し訳ございません」

「いいわ。急なことだったものね。
私はエリーズよ。先ずは子爵様に会わせていただきたいわ。騎士達には日陰で飲み物をあげていただけるかしら」

「かしこまりました」

ふと上を見ると窓から子供が見下ろしていた。
姉のソニアと弟のジスランね。


後について行くと、ある部屋の前で止まりオレリオがノックをした。

「誰だ」

「オレリオでございます。旦那様、アルミュア公女様が到着なさいました」

「はぁ…今日だったのか。通してくれ」

溜息かぁ。この人にとっては押し付けられたのだから仕方ないか。

「申し訳ございません、公女様。
当主のクリストファーと申します」

「初めまして子爵様。エリーズ・アルミュアと申します」

「…どうぞお掛けになってください」

「子爵様、私は妻になる身ですので敬語は結構ですわ」

「…分かった。
エリーズ嬢と騎士達の部屋はこれから準備する。
婚姻に承諾したが揉め事は困る。
エリーズ嬢を受け入れる代わりにアルミュア公爵家から支援金を貰ったが、領地のために使うつもりだ。今までのような贅沢はさせられない。うちは裕福ではないからな。使用人も最低限しかいない。
是非 慎ましく暮らして欲しい」

「…ご心配なく」

「お父様!」

「ソニア、勝手に入ってくるな」

「私は反対よ!下位貴族を虐めて王子様の婚約者をクビになった人が母親になるなんて……」

目を吊り上げて入室して拒否の言葉を口にして私を見ると、口をポカンと開き唖然としていた。

「父上!」

「お前もか。ジスラン」

「母上というより僕達の姉と言った方がいい年齢じゃないですか!それに……」

下の子も私を見ると言葉は止まり唖然としていた。

「分かってはいましたが、歓迎されておりませんわね。
私は海に近い場所に屋敷を確保しております。そちらで暮らしますわ。
3日後に教会でサッと署名だけしましょう。これ以上のご迷惑はかけませんわ。
子爵様、ソニア様、ジスラン様、失礼しますわね。ご用があればお手紙でも送ってください。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」

それだけ言ってカーテシーをして外に出た。

御者や騎士達に合図を送り、私の屋敷に向けて出発した。


2時間ほど走らせると白い屋敷が見えてきた。
ごちゃごちゃした作りではなさそうだ。

門がサッと開き、使用人達がゾロゾロと出迎えてくれた。

「エリーズよ。お出迎えありがとう。今日からよろしくね。みんなで楽しく暮らしましょう。
辞めたくなったら遠慮なく言ってね」

「執事のサリオンと申します」

「メイド長のミランダと申します」

「エリーズ様、中へどうぞ。騎士様達もどうぞ中へ。お部屋の準備も整っております。
荷物は私どもでお運びいたします」

「ありがとう」

「我々は厩舎で馬に水をやってから参ります」

「そうね。ご苦労様」


屋敷の中に入るとシンプルな内装で、さすが公爵様お父さまだと思った。エリの好みを把握しているわ。お母様のほとんどのことを決めているだけあるわね。
今頃、お母様と揉めてないといいけど。

居間に通されると使用人達が次々と自己紹介に来てくれた。終わってサリオンとミランダの3人だけになった。

「お嬢様、お久しぶりでございます。私はお嬢様が4歳の時まで乳母としておそばにおりました」

「そうなの!?
ごめんなさい、覚えていなくて」

「4歳まででしたら覚えていなくても不思議はありませんわ」

「一度辞めたのよね?」

「はい。母の介護が必要で、お暇をいただきました。5年間看病して無事に看取ることができました。公爵様がお薬代を負担してくださったおかげです。感謝しております」

「でも、大丈夫なの?こんな遠くまで来て。近場で再就職すれば良かったのに」

「父は既に他界しておりましたし、夫は5ヶ月前に女を作って家を出て行きました。
それで図々しくも何か職はないかと公爵様にお伺いを立てましたら、お嬢様がこちらで暮らすと教えていただきましたのでお願いしました」

「そうなのね。有難いわ」

「誠心誠意、お嬢様をお支えいたします」

「よろしくね。

サリオン、明日にでも建築業者を呼んで欲しいの。外の改装をしたいのよ」

「かしこまりました。
ところで、ブラージェル邸にはお寄りになりましたか?」

「ええ。歓迎されなかったわ。気にしなくていいの。教会で誓いを立てて署名だけすれば自由だから。
ここは私のお城よ。私もみんなも過ごしやすくしたいわ。お金はあるから安心してね」

「それは頼もしいことです」

「出来るなら、今夜はみんなで食事をしたいわ。
全員が食堂に入れるかしら」

「広間がありますので、そこで宜しければ」

「そうしてちょうだい。食事は作っても港町で料理を買ってきても構わないわ。みんなで気楽につまめて美味しいものがいいわね」

「調理場に伝えます」


じゃあ 私は荷解きでもしようかな。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

白い結婚を告げようとした王子は、冷遇していた妻に恋をする

夏生 羽都
恋愛
ランゲル王国の王太子ヘンリックは結婚式を挙げた夜の寝室で、妻となったローゼリアに白い結婚を宣言する、 ……つもりだった。 夫婦の寝室に姿を見せたヘンリックを待っていたのは、妻と同じ髪と瞳の色を持った見知らぬ美しい女性だった。 「『愛するマリーナのために、私はキミとは白い結婚とする』でしたか? 早くおっしゃってくださいな」 そう言って椅子に座っていた美しい女性は悠然と立ち上がる。 「そ、その声はっ、ローゼリア……なのか?」 女性の声を聞いた事で、ヘンリックはやっと彼女が自分の妻となったローゼリアなのだと気付いたのだが、驚きのあまり白い結婚を宣言する事も出来ずに逃げるように自分の部屋へと戻ってしまうのだった。 ※こちらは「裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。」のIFストーリーです。 ヘンリック(王太子)が主役となります。 また、上記作品をお読みにならなくてもお楽しみ頂ける内容となっております。

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

愛してしまって、ごめんなさい

oro
恋愛
「貴様とは白い結婚を貫く。必要が無い限り、私の前に姿を現すな。」 初夜に言われたその言葉を、私は忠実に守っていました。 けれど私は赦されない人間です。 最期に貴方の視界に写ってしまうなんて。 ※全9話。 毎朝7時に更新致します。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。 国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。 溺愛する女性がいるとの噂も! それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。 それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから! そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー 最後まで書きあがっていますので、随時更新します。 表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました

ぺきぺき
恋愛
王家の次男として生まれたヨーゼフには幼い頃から決められていた婚約者がいた。兄の補佐として育てられ、兄の息子が立太子した後には臣籍降下し大公になるよていだった。 このヨーゼフ、優秀な頭脳を持ち、立派な大公となることが期待されていたが、幼い頃に見た絵本のお姫様を理想の女性として探し続けているという残念なところがあった。 そしてついに貴族学園で絵本のお姫様とそっくりな令嬢に出会う。 ーーーー 若気の至りでやらかしたことに苦しめられる主人公が最後になんとか幸せになる話。 作者別作品『二人のエリーと遅れてあらわれるヒーローたち』のスピンオフになっていますが、単体でも読めます。 完結まで執筆済み。毎日四話更新で4/24に完結予定。 第一章 無計画な婚約破棄 第二章 無計画な白い結婚 第三章 無計画な告白 第四章 無計画なプロポーズ 第五章 無計画な真実の愛 エピローグ

処理中です...