【完結】婚約破棄された令嬢は、嫌われ後妻を満喫する

ユユ

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娘の動向

【 モーリス・アルミュアの視点 】

「閣下、エリーズお嬢様からお手紙が届きました」

「エリーズから?」

家令オレリオから手渡された手紙を開封した。

“偉大なるお父様

貴方を崇拝する娘エリーズです。
お父様のおかげで幸せに過ごしております。

報告、依頼、相談が一つずつございます。

一つ目はノクタル子爵家についてです。侮辱を受けました。私は10年後に捨てられて、使い古しでも子爵の愛人として数年間過ごし、その間に仲間内で共有するという壮大な夢をお持ちです。
カトリーヌ嬢は婚約破棄が私のせいだと言い、ワインをぶっかけました。

二つ目はブラージェル子爵の元妻についてです。
逃亡離縁した後、社交でブラージェルについて酷いことを言いふらしているようなのです。
おかげで私が嫁いだブラージェルの価値を下げ続けています。義理の子供達にも影響しています。

三つ目は義理の娘セイラが成人の儀を控えております。母親や世間を見返せるような振る舞いができるよう、私に指導して欲しいと頭を下げに来ました。
子爵の許可が下りましたら、アルミュア家からも助けていただきたいのです。

毎夜 就寝前にタウンハウスの方角に跪いて、お父様の健康と幸せを祈っております。

エリーズより”

なんて言葉遣いをエリーズはしないぞ、エリ。

「ハハッ、うちのエリーズはすごいな。便箋に涙のあとをつけているぞ」

「効果覿面ですね、閣下」

「そのようだ。
ノクタル子爵家と、フールス子爵家の商売と弱点を、そしてイライザ・フールスの調査を頼んでおいてくれ」

「かしこまりました」

「子爵の了承を得たら、短期間でレディに育てあげる講師を派遣する。予定を押さえておいてくれ。
あと、場合によってはセイラ・ブラージェルがうちに下宿して学園に通うかもしれない」

「かしこまりました。時期を見てお部屋を準備いたします」


ノクタル子爵が私のエリーズに下劣な言葉を使ったのか。
ブラージェルの隣領だから完全に潰すわけにはいかないな。
その上、子爵の娘のくせにアルミュアの天使にワインをかけた?
ブラージェル子爵は同伴していたのだろう?頼りないな。

まあ、最初から期待などしてはいないがな。



【 クリストファーの視点 】

セイラがエリーズと会う約束をした日、帰ってくると私の元へやってきた。

「ただいま戻りました」

「おかえり」

「エリーズ様とお話しできました」

「…そうか」

「私、エリーズ様のお世話になることにしました」

「は?」

「成人の儀までに淑女教育をして欲しいとお願いしました」

「何故そんなことを」

「王子妃教育を受けたエリーズ様に教わって、私がきちんとできれば、ブラージェル家の印象は変わります。このまま元お母様の吹聴を放置しておけません。私はこれから学園に通います。なのに友人がいません。学園でも出来ないかもしれません。そんな私にまともな縁談など来ません。
ジスランはもっと切実になるでしょう。ブラージェルを背負って立つことになるのですから。

今回はアルミュア家の支援金で領内の修繕や備蓄ができましたし、エリーズ様のご尽力で収益が上がっております。
ですがエリーズ様はいつまで居てくださいますか?
エリーズ様との子をもうけなければアルミュア家の後ろ盾はエリーズ様が居てくださる間だけです。
私達は力を付けなければなりません。

そしてお父様の態度は問題です」

「私がか」

「エリーズ様は10歳の途中からずっと王家に縛り付けられて、プライベートなどありませんでした。
私と違ってたくさんの友人に囲まれていたはずなのに。友人もいなかったそうですし、当然友人との思い出も無いそうです。それほど頑張っていらしたのに浮気されて婚約破棄ですよ!?

エリーズ様はやっと自由になり、この地を選んでくださったのです。お見合い相手や元お母様が嫌がった、田舎のブラージェル領の海辺を。

あれだけ改装をなさっているのは、あそこに根を張るおつもりだからです。

波の音を聴きながら、穏やかで自由な暮らしを望んでいます。なのにお父様の機嫌がエリーズ様にいい感情を与えていません」

「エリーズが私の文句を言っていたのか」

「言うわけないじゃない!あの人じゃないんだから!
お父様は気付かれていないつもりでしょうけど、ダダ漏れなの!エリーズ様の話になるとソワソワしているし、ノクタル領への旅も浮かれていたじゃない!そんなつもりはないなんて言わないで。認めないのはお父様だけよ!」

「セイラ!」

「はぁ……エリーズ様は小さな頃から大人達の中に放り込まれました。相手の感情を察することができるはずです。特に機嫌が悪い人をかわすために。
私もそうです。まだよく分からない頃から あの人の顔色をうかがっていました。お父様の顔色もです。今日は話しかけても大丈夫か、姿さえ見せてはダメなのか。私は大人しい子なんかじゃありません。親の機嫌を損ねたり当たられないために ほとんど部屋から出なかっただけなのです。

だから分かるのです。お父様の機嫌の左右も、エリーズ様の葛藤も。変な態度を取られるくらいなら関わらないでおこうと、エリーズ様も同じ決断をしてブラージェル邸に近寄ろうとしません。

教育は構わないけど、ブラージェル邸ではできないことと、お父様の許可が必要だと言われました。

何かあるのなら、隠しきれない機嫌の悪さを漏らしていないでエリーズ様と話し合ってください。
もし否定をして、心から政略結婚だから関係ないと仰るのなら もう エリーズ様に会いに行かないでください。王家主催の行事だって、日程をずらして別々に移動なさって、当日のその時間だけ夫婦のフリをなればいいのです。催しが終わったら“ありがとう”と言って帰るだけにしてください。

教会でしたキスみたいなことも してはいけないことです。エリーズ様はお父様と違ってまだ交際歴の無い19歳なのですよ!?
いくら外見がエリーズ様の好みにそこそこ当てはまっているからって、」

「待て。好みの話を聞かせてくれ」

「……ローズ、聞いた?」

「重症でございますね」

長年勤めるメイド長のローズまでセイラと同意見らしい。

そのあと、エリーズの好みのタイプを教えてもらった。

セイラの苦悩を初めて聞いたな。
元妻イライザが居た間のことだから、まだまだ幼い頃の話だ。

5歳辺りまでずっと。

私とイライザの顔色をうかがって部屋に閉じこもっていたとは。

「セイラ。私が悪かった。申し訳なかった」

「……」

「セイラのことをよろしく頼むと言いに行くよ。
ちゃんと謝罪もする」

「本当ですか?」

「この歳になってエリーズの存在に戸惑っているんだ。政略結婚だと割り切ろうとしても、どうしても感情を揺さぶられてしまう。どうしていいのかわからなくて迷惑をかけてしまった。
隠せていないのなら言葉にして伝えてみる。
それでも駄目ならセイラの言う通り、エリーズに関わらない」

「約束ですよ」

「約束だ」

「そういえば、エリーズ様ははしゃいでいました」

「何かあったのか?」

「外の渡り廊下やビーチテラスが完成したから明日泳ぐと仰っていました」

「泳ぐ?」

「特注の水着を見せていただきましたが、勇気がいる仕上がりです。
他の殿方が見たら瞬殺ですね」

「明日行ってくる」

あのドレスを作ったエリーズのことだ、水着もきっと…

翌日、先触れも出さずにエリーズの屋敷を訪ねた。

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