【完結】双子の公子様に執着された貧乏モブ令嬢になりました

ユユ

文字の大きさ
3 / 42

面接

しおりを挟む
コンコンコンコン

「クレアです。新しいメイドをお連れしました」

「「入れ」」

「失礼します」

入室するとソファに眩い金髪に濃いめの青い瞳の男の子が二人座っていた。ここまでそっくりなら双子だろう。

〈天使!〉

「…私はアレン」

「僕はエヴァン。君の名前と歳は?」

「モヴィー男爵家の三女メイと申します。歳は15歳です」

「2、3歳誤魔化していないか?」

「後2ヶ月で16歳です」

「学園へは通わないのか?」

「モヴィー家はとても貧しいので余裕がありません〈それにめちゃくちゃ男尊女卑だし。6日前に初めてお肉食べて、食べ方が分からなくて喉に詰まらせて一度死んだくらいなんだから〉」

「「は!?」」

「何か?」

双子は顔を見合わせた。

「…何故カルデック公爵家で働きたいんだ?」

「父が選びましたので私にはわかりません〈公爵家なの!?きっとクビね。せめてご飯を恵んでくれないかな。おんぼろ馬車で6日間も車中泊して、途中の川で身体を拭いて髪を洗ったんだから。それをもう一度やる前にお腹を満たしたいな〉」

また双子は顔を見合わせた。

「クレア。食堂で食事を与えてやってくれ。続きはそれからだ」

「かしこまりました」

〈やった!〉


部屋を出て食堂で食事を与えてくれた。
メイにとってはご馳走だ。多彩な美食の国から来た実香わたしには物足りない味付けだ。
この身体は肉を食べ慣れていない。慌てずよく噛まないと。
散々モグモグした後、飲み込んだ。

食べ終えて席を立つと足元に金貨が落ちていた。拾ってポケットにしまった。

またさっきの部屋に連れて行かれた。

「食事は済んだか?」

「はい、ありがとうございました」

「君の書類を見たのだけど、給金の9割も実家に仕送りを希望すると書いてあったが、本気か?」

「え!?」

「君の手元には1割しか残らない」

「〈は?あんな暮らしをさせておいて冗談でしょ!?そんなにお金が欲しければ自分が出稼ぎに出ればいいのよ。いつも偉くないのに偉そうにしてハラスメントのオンパレードじゃない!卑下しているメイに食べさせてもらおうって訳!?〉
給金は満額私が受け取ります。枯葉一枚渡さないでください」

ポカンとした双子はまた顔を見合わせた。

「〈そうだ〉あの」

ポケットから金貨を取り出した。

「アレン様、食堂に金貨が落ちていました。〈普通 金貨なんて落とすかなぁ。こんな無駄に豪華な屋敷を建てるほどお金持ちだから ここの人たちにとって金貨は小銅貨みたいなものなのね。紙幣で顔を拭くみたいなやつ?〉」

「……何故私がエヴァンではなくアレンだと分かった?」

「髪型は変わっても顔を変えたわけではないので」

「つまり顔でどちらがアレンでどちらがエヴァンか見分けられると?」

「はい。似てはいますが違いもあります。それに…後は秘密です〈性格まで丸々同じではない。反応の仕方も違えば表情も微妙に違う。同じ笑顔のようで同じではないからね〉」

「「ふうん」」

「どうする?アレン」

「どうする?エヴァン」

二人は見つめ合うと声を揃えた。

「「採用」」

〈良かった~!……良かったのかな?公爵家のメイドだよ?私なんて直ぐに“無礼者め!成敗してくれる!”とか言って始末されちゃうかも〉

また双子は顔を見合わせた。

〈良く見つめ合うな。テレパシストだったりして〉

ビクッ

一瞬双子の肩が揺れたような気がした。

「…成人するまでは預かりという形になる。成人前の貴族の子を雇うのは違法だからね」

「何をしていればよろしいでしょうか」

「屋敷の中や外を歩き回って熟知するというのもいいだろう」

「かしこまりました〈きっと迷子になって発見される時は枯れ木のようなミイラになっているわね。享年15歳。あの実家じゃ引き取り拒否しそう。そうだ。これだけ広ければ死んだ後に埋めてもらえるかもしれないわね。墓石は要らないから、果実のなる木の側に埋めてもらって木漏れ日が当たる場所がいいな。程よく暖かくて、果実が落ちてくる。香りも楽しめそう〉」

「…メイド長、彼女に部屋を用意してやってくれ。今日明日は何もさせずに休ませ、明後日から少しずつ屋敷内や敷地内を案内してやってくれ。食事は私達と食堂で。いいね?」

「かしこまりました。さあ、モヴィー様、ついて来てください」

私は頭を下げて部屋を出た。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します

ちより
恋愛
 侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。  愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。  頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。  公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。

「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。

海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。 アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。 しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。 「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」 聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。 ※本編は全7話で完結します。 ※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。

婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました

春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。 名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。 姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。 ――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。 相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。 40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。 (……なぜ私が?) けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

【完結】記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。

ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。 毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。

公爵夫人の気ままな家出冒険記〜「自由」を真に受けた妻を、夫は今日も追いかける〜

平山和人
恋愛
王国宰相の地位を持つ公爵ルカと結婚して五年。元子爵令嬢のフィリアは、多忙な夫の言葉「君は自由に生きていい」を真に受け、家事に専々と引きこもる生活を卒業し、突如として身一つで冒険者になることを決意する。 レベル1の治癒士として街のギルドに登録し、初めての冒険に胸を躍らせるフィリアだったが、その背後では、妻の「自由」が離婚と誤解したルカが激怒。「私から逃げられると思うな!」と誤解と執着にまみれた激情を露わにし、国政を放り出し、精鋭を率いて妻を連れ戻すための追跡を開始する。 冒険者として順調に(時に波乱万丈に)依頼をこなすフィリアと、彼女が起こした騒動の後始末をしつつ、鬼のような形相で迫るルカ。これは、「自由」を巡る夫婦のすれ違いを描いた、異世界溺愛追跡ファンタジーである。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。

あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。 「君の為の時間は取れない」と。 それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。 そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。 旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。 あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。 そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。 ※35〜37話くらいで終わります。

処理中です...