15 / 73
警告
しおりを挟む
学食に行く途中、人気の無い廊下に連れ出し対峙している。
「ユリス殿下」
「殿下はいらない」
「ユリス様、態度を以前と同じにしてください」
「私に我慢しろと?」
「その通りです」
何を言っているかというと、昨日想いを打ち明けたユリス殿下が私に対して甘いのだ。
大目に見過ぎという甘さではない。愛しい人への甘さだ。
蕩けるような顔をして、何かと触れてくる。
声色も甘い。
エレノア達も少し驚いていた。
「殿下には婚約者がおります。エレノアなら幼馴染という言い訳もあるかもしれませんが、私は学友です。他人からは婚約者のいる王族を惑わす女と見られてしまいますわ」
「ん~、間違っているな。婚約前から魅了されているのだから、割り込んだのは婚約者だな」
「では、私は別に食事をとります」
「私を傷付けるつもりなのか」
「っ!」
「さあ、食事に行こう」
結局食堂でエレノア達と合流し食事を取るが、
「サラ。こっちのデザートも美味しそうだぞ」
そう言って自分のデザートを半分くれる。
お皿に置かれてしまえば断ることは出来ず食べた。
エレノア達は仮面の微笑みで良かったわねと言う。
そして食後は私の分のトレイをさっと取り、片付けてしまった。王族に片付けさせる私はどんな風に映るのだろうか。
午後の授業の前のお花摘みでエレノアが早口で質問攻めだ。
「(何!何があったの!)」
「(あ~)」
「(早く!早く!)」
「(好きなんだって)」
「(やっと言ったのね)」
「(知ってたの!?)」
「(気付かない方がおかしいわよ。
ユリスはいつもサラを特別に扱っていたじゃないの)」
「(そんなはずは)」
「(男子生徒を近寄らせないし、具合が悪そうだとすぐ気付いて医務室に連れて行くし、勉強だって丁寧に教えてくれるじゃない)」
「(勉強は、エレノアだって)」
「(私に教えてくれたことなんか無いわよ)」
「(ええっ!?)」
「(体裁があるから一緒にいただけよ)」
「(そうだったの。ごめんなさい)」
「(サラが謝らなくていいの。ユリスのせいなんだから。
あの日、茶会の後、サラ・ガードナーについて知らないかって聞いてくるし、誕生日の茶会で初めて4人でテーブルに着いて話をした後は、サラの情報をくれって騒いでいたわ。
同じようにしか会っていないから知るわけないのに。ジェニーも苦笑いだったわ。
だから陛下に聞いたらって言ったの。
そうしたら婚約を申し込んだって浮かれていて、すごくご機嫌だったのに、すぐ会わなくなったの。
引きこもってるって。
お父様に聞いたら、ある令嬢が婚約を辞退をしたって言うから驚いちゃって。
しばらくして少しは部屋から出てくるようになったけど、暗い暗い。
もうね、まさに希望を無くした人よ。抜け殻のようだったわ。
だけど学園で同じクラスにいるサラを見つけたら、ずっと見つめていたわ。で、選択科目を一緒にしたくて勇気を振り絞って話しかけたら普通に会話をしてくれたものだから一瞬で復活したわ。笑っちゃったわよ。
貴女がいれはずっとニコニコしているのだもの)」
「(知らなかったわ)」
「(知ってたら婚約した?)」
「(したかもしれないし、分からないわ。
あの時は本当に父の体調が少しずつ悪くなっていて、だいぶ病が進んでいたから。
過酷な王子妃教育や社交なんてガードナー家には難しかったと思うわ。
少なくともお会いして理由を自分の口から説明して、心から謝罪したと思うわ。
政略結婚の申し込みだと思っていたのに好きだっただなんて)」
「(まあ、そうよね。誕生日にちょっと会話しただけで打診がきたら政略結婚だと思っても仕方ないわね)」
そこで予鈴が聞こえて慌てて花を摘んで教室に戻った。
授業中、隣の席のユリス殿下は私の髪を少し手に取るとクルクルと指に絡ませて遊んでいる。
取り上げても、また…。
先生は注意できない。
困ったなぁ。
断ったのにどうしたらいいの。
傷付けることはしたくない。抜け殻になられては困る。
やっと1日が終わった。
そして次の日。
殿下は素早く昼食を済ませると急いで帰ってしまった。公務があるらしい。隣国から王族がやってくるとか。
そしてまだ20分以上時間が余るので外の空気を吸いに出た。
「ガードナー侯爵令嬢」
振り向くとそこには懸念していた人が立っていた。
「シヴィル公爵令嬢……ご機嫌よう」
「ちょっといいかしら」
「はい」
「貴女は婚約者のいる殿方と馴々しくしすぎではなくて?」
「友人です」
「友人の域を超えていると思わない?」
「友人です」
「……今更惜しくなったのかしら。
貴女は辞退したじゃないの」
「狙っておりません」
「もしかしたら妾を迎えるかもしれないとは思っているわよ。でも第二妃や愛人は許せないの。
シヴィル家と婚約しておいて、その様なことは許されることではないわ」
「シヴィル公爵令嬢。それを殿下に仰ってくださいませ」
「貴女が引けは済むことでしょう」
「引いてこれなのです」
「卑しい女は嫌ね」
「いくらなんでもガードナー家を卑しいなどと!」
「ガードナー家のことを言ってないわ。貴女よ。
貴女だけを卑しいと言っているの」
「は!?」
「あら、予鈴だわ。
いい?忠告したわよ。
ユリス様から離れないのならシヴィル公爵家がガードナー侯爵家を潰しにかかるからそのつもりでね」
私は教室に戻ると荷物を纏め、教職員室に向かい早退と当面の欠席届を提出して帰った。
「ユリス殿下」
「殿下はいらない」
「ユリス様、態度を以前と同じにしてください」
「私に我慢しろと?」
「その通りです」
何を言っているかというと、昨日想いを打ち明けたユリス殿下が私に対して甘いのだ。
大目に見過ぎという甘さではない。愛しい人への甘さだ。
蕩けるような顔をして、何かと触れてくる。
声色も甘い。
エレノア達も少し驚いていた。
「殿下には婚約者がおります。エレノアなら幼馴染という言い訳もあるかもしれませんが、私は学友です。他人からは婚約者のいる王族を惑わす女と見られてしまいますわ」
「ん~、間違っているな。婚約前から魅了されているのだから、割り込んだのは婚約者だな」
「では、私は別に食事をとります」
「私を傷付けるつもりなのか」
「っ!」
「さあ、食事に行こう」
結局食堂でエレノア達と合流し食事を取るが、
「サラ。こっちのデザートも美味しそうだぞ」
そう言って自分のデザートを半分くれる。
お皿に置かれてしまえば断ることは出来ず食べた。
エレノア達は仮面の微笑みで良かったわねと言う。
そして食後は私の分のトレイをさっと取り、片付けてしまった。王族に片付けさせる私はどんな風に映るのだろうか。
午後の授業の前のお花摘みでエレノアが早口で質問攻めだ。
「(何!何があったの!)」
「(あ~)」
「(早く!早く!)」
「(好きなんだって)」
「(やっと言ったのね)」
「(知ってたの!?)」
「(気付かない方がおかしいわよ。
ユリスはいつもサラを特別に扱っていたじゃないの)」
「(そんなはずは)」
「(男子生徒を近寄らせないし、具合が悪そうだとすぐ気付いて医務室に連れて行くし、勉強だって丁寧に教えてくれるじゃない)」
「(勉強は、エレノアだって)」
「(私に教えてくれたことなんか無いわよ)」
「(ええっ!?)」
「(体裁があるから一緒にいただけよ)」
「(そうだったの。ごめんなさい)」
「(サラが謝らなくていいの。ユリスのせいなんだから。
あの日、茶会の後、サラ・ガードナーについて知らないかって聞いてくるし、誕生日の茶会で初めて4人でテーブルに着いて話をした後は、サラの情報をくれって騒いでいたわ。
同じようにしか会っていないから知るわけないのに。ジェニーも苦笑いだったわ。
だから陛下に聞いたらって言ったの。
そうしたら婚約を申し込んだって浮かれていて、すごくご機嫌だったのに、すぐ会わなくなったの。
引きこもってるって。
お父様に聞いたら、ある令嬢が婚約を辞退をしたって言うから驚いちゃって。
しばらくして少しは部屋から出てくるようになったけど、暗い暗い。
もうね、まさに希望を無くした人よ。抜け殻のようだったわ。
だけど学園で同じクラスにいるサラを見つけたら、ずっと見つめていたわ。で、選択科目を一緒にしたくて勇気を振り絞って話しかけたら普通に会話をしてくれたものだから一瞬で復活したわ。笑っちゃったわよ。
貴女がいれはずっとニコニコしているのだもの)」
「(知らなかったわ)」
「(知ってたら婚約した?)」
「(したかもしれないし、分からないわ。
あの時は本当に父の体調が少しずつ悪くなっていて、だいぶ病が進んでいたから。
過酷な王子妃教育や社交なんてガードナー家には難しかったと思うわ。
少なくともお会いして理由を自分の口から説明して、心から謝罪したと思うわ。
政略結婚の申し込みだと思っていたのに好きだっただなんて)」
「(まあ、そうよね。誕生日にちょっと会話しただけで打診がきたら政略結婚だと思っても仕方ないわね)」
そこで予鈴が聞こえて慌てて花を摘んで教室に戻った。
授業中、隣の席のユリス殿下は私の髪を少し手に取るとクルクルと指に絡ませて遊んでいる。
取り上げても、また…。
先生は注意できない。
困ったなぁ。
断ったのにどうしたらいいの。
傷付けることはしたくない。抜け殻になられては困る。
やっと1日が終わった。
そして次の日。
殿下は素早く昼食を済ませると急いで帰ってしまった。公務があるらしい。隣国から王族がやってくるとか。
そしてまだ20分以上時間が余るので外の空気を吸いに出た。
「ガードナー侯爵令嬢」
振り向くとそこには懸念していた人が立っていた。
「シヴィル公爵令嬢……ご機嫌よう」
「ちょっといいかしら」
「はい」
「貴女は婚約者のいる殿方と馴々しくしすぎではなくて?」
「友人です」
「友人の域を超えていると思わない?」
「友人です」
「……今更惜しくなったのかしら。
貴女は辞退したじゃないの」
「狙っておりません」
「もしかしたら妾を迎えるかもしれないとは思っているわよ。でも第二妃や愛人は許せないの。
シヴィル家と婚約しておいて、その様なことは許されることではないわ」
「シヴィル公爵令嬢。それを殿下に仰ってくださいませ」
「貴女が引けは済むことでしょう」
「引いてこれなのです」
「卑しい女は嫌ね」
「いくらなんでもガードナー家を卑しいなどと!」
「ガードナー家のことを言ってないわ。貴女よ。
貴女だけを卑しいと言っているの」
「は!?」
「あら、予鈴だわ。
いい?忠告したわよ。
ユリス様から離れないのならシヴィル公爵家がガードナー侯爵家を潰しにかかるからそのつもりでね」
私は教室に戻ると荷物を纏め、教職員室に向かい早退と当面の欠席届を提出して帰った。
954
あなたにおすすめの小説
【完結】 メイドをお手つきにした夫に、「お前妻として、クビな」で実の子供と追い出され、婚約破棄です。
BBやっこ
恋愛
侯爵家で、当時の当主様から見出され婚約。結婚したメイヤー・クルール。子爵令嬢次女にしては、玉の輿だろう。まあ、肝心のお相手とは心が通ったことはなかったけど。
父親に決められた婚約者が気に入らない。その奔放な性格と評された男は、私と子供を追い出した!
メイドに手を出す当主なんて、要らないですよ!
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
お父様、お母様、わたくしが妖精姫だとお忘れですか?
サイコちゃん
恋愛
リジューレ伯爵家のリリウムは養女を理由に家を追い出されることになった。姉リリウムの婚約者は妹ロサへ譲り、家督もロサが継ぐらしい。
「お父様も、お母様も、わたくしが妖精姫だとすっかりお忘れなのですね? 今まで莫大な幸運を与えてきたことに気づいていなかったのですね? それなら、もういいです。わたくしはわたくしで自由に生きますから」
リリウムは家を出て、新たな人生を歩む。一方、リジューレ伯爵家は幸運を失い、急速に傾いていった。
廃妃の再婚
束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの
父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。
ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。
それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。
身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。
あの時助けた青年は、国王になっていたのである。
「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは
結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。
帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。
カトルはイルサナを寵愛しはじめる。
王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。
ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。
引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。
ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。
だがユリシアスは何かを隠しているようだ。
それはカトルの抱える、真実だった──。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる