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5日前
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【3日前のリディアーヌ】
アロンジェ王国の第一王子と婚約して12年。
学園を卒業し王子妃教育も済ませ、1年後に行われる婚姻の儀を待つ身の私は王子の執務を手伝っていた。
今日はいつもと違う。
侯爵家から従者を連れてきて荷物を纏めさせた。
客室にはメイドを向かわせ荷造りさせている。
多分ここには戻れないだろうから。
執務も滞りがちな第一王子を助ける為に始めた。
本来ならそのようなことは婚前にする必要はないのだけど見かねて始めてしまった。
簡単なことしかしていなかったが次第に彼は大半を私に任せてしまった。
学園が終わると登城し王子妃教育。
休日の2日は早朝から夜まで第一王子の執務代行。
3年間はそんな生活だった。
その間、同い年の第一王子は令嬢達と親密になった。
最初の頃は婚姻後の跡継ぎ問題で、別の令嬢を娶るのは仕方ないとしても婚約期間中からそれはないのではと抗議した。
「私の勝手だ」
王族主催の夜会や茶会、国の催しだけは婚約者の務めとしてエスコートをするしダンスも踊るがそれだけ。
すぐに別の令嬢の所へ行ってしまうし、他の夜会には別の令嬢をパートナーにしてエスコートしてしまう。
哀れみの目で見る者もいれは、軽んじられた令嬢として絡んでくる令嬢達もいる。
だけどリュフードゥル侯爵家は力のある家門なので大した絡みではない。
だけど傷つかないわけではない。
そもそも、6歳の茶会の後に婚約の打診があったが断ったのに王命を使って無理に婚約させたはずなのにどういうつもりなのだろう。
婚約以降、第一王子は不器用ながらにも私に優しくしてくれていた。
週に一度2人だけの茶会をして本の話をしたりしてお菓子を食べた。
ロドルフ様と呼び、段々と絆されていった。
王子妃教育が始まると王族への礼儀として馴々しくしないよう注意を受けた。
第一王子も私に不満をぶつけてきた。
そして浮気に執務の押し付け。
無理矢理婚約させられたけど、もう好きになっていた。
だから何故なのか、私が何か気に触ることをしてしまったのか自問自答しながら王子妃教育で養った微笑みの仮面を付け続けた。
1年前にはとっくに令嬢達と体の関係があることが分かった。王宮メイド達の噂話を耳にしてしまったのだ。
数ヶ月前、時々王城に呼び寄せていた令嬢の家で夜会があった。私は父や母と来ていた。
ロドルフ様も来ていて父と母に挨拶だけして令嬢と消えた。
こっそりメイドにお金を渡して部屋を教えてもらい30分後に扉を開けた。
そこには一糸纏わず絡み合うロドルフ様と令嬢がベッドにいた。
ロドルフ様はショックで声が出せない私を一目見ると無視をして令嬢との情事を再開させた。
父と母は青褪めた私を直ぐに連れ帰った。
私は見たことを話し結婚したくないと泣いた。
父は翌日、陛下に婚約の解消を願い出たが、陛下は息子にやり直すチャンスを与えてくれと解消を了承しなかった。
だけどその後もロドルフ様は執務を私に押し付けたまま令嬢達と逢瀬を重ねた。
もう私は彼を名前で呼ぶことを止めた。
1週間程前に彼の今の相手が私の友人だと知った。
5日前、彼に抗議した。
「殿下、せめて私の友人や親族は止めてください」
「知らない女だろうが知った女だろうが大して変わりないだろう」
「でしたら婚約を解消してください」
「今更するわけないだろう。王子妃教育が終わり学園も今日卒業して婚姻の義は1年後。
ここまできて解消など許されない。
そもそもお前は気にも止めないだろう。
お前も遊べばいい」
この時、彼への想い出は封印した。
そのまま執務室へ行き3日前まで引継ぎ書を作った。
その間に隣国で隣の領地にいる叔母に手紙を出した。
これまでの第一王子との事を書いて滞在したいとお願いした。
直ぐに来なさいと返事が来た。
彼の執務は私の義務ではない。
王子妃教育も学園も完了している。
登城する理由などない。
3日前、書き終えた引継ぎ書を第一王子の机に置いた。その下にはメッセージカード。
「お嬢様、全ての荷物を馬車に積みました」
「ありがとう。私も終わったから帰りましょう」
その夜、父と母に彼の言動と荷物を引き上げてきた事を報告し叔母の屋敷に長期滞在する事を伝えた。
「前々から遊びに来いと誘われていたからな」
「こちらのことは気にせずに自由になさい。
話が進むようなら解消、駄目なら破棄でいいのね」
「はい。ご迷惑をおかけいたします」
「貴女のせいじゃないわ」
「ありがとうございます。荷造りはもうしましたので明日の早朝に出発します」
「シルビー、リディアーヌをよろしくお願いね」
「かしこまりました」
アロンジェ王国の第一王子と婚約して12年。
学園を卒業し王子妃教育も済ませ、1年後に行われる婚姻の儀を待つ身の私は王子の執務を手伝っていた。
今日はいつもと違う。
侯爵家から従者を連れてきて荷物を纏めさせた。
客室にはメイドを向かわせ荷造りさせている。
多分ここには戻れないだろうから。
執務も滞りがちな第一王子を助ける為に始めた。
本来ならそのようなことは婚前にする必要はないのだけど見かねて始めてしまった。
簡単なことしかしていなかったが次第に彼は大半を私に任せてしまった。
学園が終わると登城し王子妃教育。
休日の2日は早朝から夜まで第一王子の執務代行。
3年間はそんな生活だった。
その間、同い年の第一王子は令嬢達と親密になった。
最初の頃は婚姻後の跡継ぎ問題で、別の令嬢を娶るのは仕方ないとしても婚約期間中からそれはないのではと抗議した。
「私の勝手だ」
王族主催の夜会や茶会、国の催しだけは婚約者の務めとしてエスコートをするしダンスも踊るがそれだけ。
すぐに別の令嬢の所へ行ってしまうし、他の夜会には別の令嬢をパートナーにしてエスコートしてしまう。
哀れみの目で見る者もいれは、軽んじられた令嬢として絡んでくる令嬢達もいる。
だけどリュフードゥル侯爵家は力のある家門なので大した絡みではない。
だけど傷つかないわけではない。
そもそも、6歳の茶会の後に婚約の打診があったが断ったのに王命を使って無理に婚約させたはずなのにどういうつもりなのだろう。
婚約以降、第一王子は不器用ながらにも私に優しくしてくれていた。
週に一度2人だけの茶会をして本の話をしたりしてお菓子を食べた。
ロドルフ様と呼び、段々と絆されていった。
王子妃教育が始まると王族への礼儀として馴々しくしないよう注意を受けた。
第一王子も私に不満をぶつけてきた。
そして浮気に執務の押し付け。
無理矢理婚約させられたけど、もう好きになっていた。
だから何故なのか、私が何か気に触ることをしてしまったのか自問自答しながら王子妃教育で養った微笑みの仮面を付け続けた。
1年前にはとっくに令嬢達と体の関係があることが分かった。王宮メイド達の噂話を耳にしてしまったのだ。
数ヶ月前、時々王城に呼び寄せていた令嬢の家で夜会があった。私は父や母と来ていた。
ロドルフ様も来ていて父と母に挨拶だけして令嬢と消えた。
こっそりメイドにお金を渡して部屋を教えてもらい30分後に扉を開けた。
そこには一糸纏わず絡み合うロドルフ様と令嬢がベッドにいた。
ロドルフ様はショックで声が出せない私を一目見ると無視をして令嬢との情事を再開させた。
父と母は青褪めた私を直ぐに連れ帰った。
私は見たことを話し結婚したくないと泣いた。
父は翌日、陛下に婚約の解消を願い出たが、陛下は息子にやり直すチャンスを与えてくれと解消を了承しなかった。
だけどその後もロドルフ様は執務を私に押し付けたまま令嬢達と逢瀬を重ねた。
もう私は彼を名前で呼ぶことを止めた。
1週間程前に彼の今の相手が私の友人だと知った。
5日前、彼に抗議した。
「殿下、せめて私の友人や親族は止めてください」
「知らない女だろうが知った女だろうが大して変わりないだろう」
「でしたら婚約を解消してください」
「今更するわけないだろう。王子妃教育が終わり学園も今日卒業して婚姻の義は1年後。
ここまできて解消など許されない。
そもそもお前は気にも止めないだろう。
お前も遊べばいい」
この時、彼への想い出は封印した。
そのまま執務室へ行き3日前まで引継ぎ書を作った。
その間に隣国で隣の領地にいる叔母に手紙を出した。
これまでの第一王子との事を書いて滞在したいとお願いした。
直ぐに来なさいと返事が来た。
彼の執務は私の義務ではない。
王子妃教育も学園も完了している。
登城する理由などない。
3日前、書き終えた引継ぎ書を第一王子の机に置いた。その下にはメッセージカード。
「お嬢様、全ての荷物を馬車に積みました」
「ありがとう。私も終わったから帰りましょう」
その夜、父と母に彼の言動と荷物を引き上げてきた事を報告し叔母の屋敷に長期滞在する事を伝えた。
「前々から遊びに来いと誘われていたからな」
「こちらのことは気にせずに自由になさい。
話が進むようなら解消、駄目なら破棄でいいのね」
「はい。ご迷惑をおかけいたします」
「貴女のせいじゃないわ」
「ありがとうございます。荷造りはもうしましたので明日の早朝に出発します」
「シルビー、リディアーヌをよろしくお願いね」
「かしこまりました」
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