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記憶は何処へ
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ん?首が痛い。
枕が硬いし高い。
目を開けると見知らぬ部屋にいた。
「リック、マックス」
二人の姿を見つけて呼んだ。
「ご気分は?」
「お水飲みたい」
渡されたグラスの中身はレモン水だった。
空になったグラスを受け取ったのはカーラだった。
「おはよう、ララ」
パッと至近距離の声の先を見るとリュシアンだった。
「え?ええ!?」
自分がリュシアンの膝枕で眠っていたようだと悟った瞬間、ソファに正座をして額を付けた。
「も、申し訳ございませんっ!殿下!」
「どうなるか試しに飲ませたんだ。謝らなくていい。気分はどうだ?吐き気や頭痛は無いか?」
「ちょっと寝違えたのか首が痛むだけです。
殿下にご迷惑をお掛けするなんて」
「なんだ余所余所しい。私のことは“リューちゃん”と呼ぶことになったのを忘れたのか?」
「冗談ですよね?」
「散々リューちゃんと呼んで私の頬をツンツンしていたではないか」
「ヒェッ!」
周りを見渡すと皆、目を逸らした。
マジで?
「帰ります」
「では夕食を食べて帰ってくれ。
酒臭い生き餌は止めておいた方がいい」
「兄様は?」
「ディオスも一緒に食べるよ」
「カーラ、ジェシカさん」
「ララ様に従います」
「では、今日はお言葉に甘えさせていただきます」
【 ウィリアムの視点 】
三ヶ月前、学園を卒業して婚約者選定に入った。
この国は、この時期に婚約をする。
昔、子供の頃から婚約していたが、学園に通う間に心が変わったり、婚約者以外と交わり子種を芽吹かせてしまう者が続出し、揉めて大変だったようだ。
そこで今のように学園を卒業しないと婚約を結べない。通わない場合女だけは16歳から婚約が可能と決められている。
いずれも婚約期間は1年。孕むと即。
カルヴァロス公爵家に相応しい令嬢を探させてコナー公爵令嬢とモンティ侯爵令嬢に絞ったが、もう一人いた方がいいという話になった。
調査書を見ていると一人に目が止まった。
プルシア侯爵令嬢 ララ。
プルシア家は侯爵位で豊かだが、王都に屋敷を構えない珍しい家門だった。
王都からそう遠くないが自然豊かな土地だ。
兄ディオスは優秀で、卒業後に第二王子の側近となった。
妹のララは学園に通わなかった。
そして16歳。
侯爵夫妻に甘やかされ贅沢に暮らしているようだ。
学園にも行かずに甘やかされて贅沢に育った女なら、婚約者候補にしてもクビにできる問題を自ら起こしてくれるだろう。
そして本命の二人の良い的になると踏んで釣書を送ったらすぐに了承の返事が来た。
3名を王都の屋敷に1ヶ月滞在させて、その間に品定めをすべく母が中心となり様々なことをさせ篩にかける。
『部屋割りはいかがいたしますか』
『コナー家とモンティ家は二階の良い客間に。プルシア家は一階の池の前にしてくれ』
普通一階は嫌がる。目の前に花が植えてあり景観が良ければ別だ。
しかも池は鯉を飼っていることもあり、少し臭いがある為、嫌がられる。
しかもかなり質素な部屋だ。普通の貴族をあの部屋には通さない。
『メイドは一人、部屋食も質素でいい』
『かしこまりました』
普通はメイドを二人付けるし、本命には豪華な食事を提供するようにした。
迎えてみると、思った反応は得られなかった。部屋にも文句を言わない。
出迎えをしなくても、挨拶は3名揃ってからと言っても、行動制限も文句を言わない。
本命二人には居れば両親と私が出迎えたし、挨拶もすぐにした。
本命二人は私と両親に贈り物を用意してきた。あの子は逆に使用人にだけ土産を買ってきた。
食事も文句を言わない。
かなり荷物が少なかったらしい。
カルヴァロス家に買わせるためかと思ったらそうではなかった。
何故か平民向けのワンピースを着ているという。
買ってやると言わせようとしているのか?
あの子に付けたメイドと連れてきた3人と出かけて昼食を食べているようで、メイドのジェシカがすっかりあの子に懐いたようだ。
まあ、私や本命2人と顔を合わせれば本性が出てくるだろう。
そう思ったが、意外な本性だった。
平民が着るようなワンピースを着て食堂に現れたララ嬢は小柄で可愛い容姿をしていた。
少し垂れ目の大きな瞳は薄紫なのか薄桃色なのか判断がつかない色でキラキラと輝いていた。
摘みたくなりそうな小さな鼻、子供用のカトラリーに変えさせなくてはならないかと思うような小さな口。手も小さい。
ストロベリーブロンドの髪を後ろで一つに纏めている。飾り気も化粧っ気も無いのに可愛い。
マナーは完璧。所作も本命二人よりも美しく優雅だ。
私達にはほぼ無表情だが、給仕の使用人には愛想笑いを浮かべる。
酒も飲まないようだ。
特技も無いと堂々と言って何のアピールもしてこない。
デザートに移ると、コナー公爵令嬢が先制攻撃をしたが撃沈。
モンティ侯爵令嬢も続いて撃沈。
これには両親も私も使用人達も驚いた。
明日剣術大会を見に行く!?
何をしに行くんだ!あそこは出会いの場でもある。婚約者候補の其方が行く場所ではない!
どうしても行きたいなら仕方ない。行くつもりはなかったが2枚押さえていたチケットがある。連れて行ってやろう。まだ16歳だから仕方ない。
なのに断られた。
私の誘いを断った!?
枕が硬いし高い。
目を開けると見知らぬ部屋にいた。
「リック、マックス」
二人の姿を見つけて呼んだ。
「ご気分は?」
「お水飲みたい」
渡されたグラスの中身はレモン水だった。
空になったグラスを受け取ったのはカーラだった。
「おはよう、ララ」
パッと至近距離の声の先を見るとリュシアンだった。
「え?ええ!?」
自分がリュシアンの膝枕で眠っていたようだと悟った瞬間、ソファに正座をして額を付けた。
「も、申し訳ございませんっ!殿下!」
「どうなるか試しに飲ませたんだ。謝らなくていい。気分はどうだ?吐き気や頭痛は無いか?」
「ちょっと寝違えたのか首が痛むだけです。
殿下にご迷惑をお掛けするなんて」
「なんだ余所余所しい。私のことは“リューちゃん”と呼ぶことになったのを忘れたのか?」
「冗談ですよね?」
「散々リューちゃんと呼んで私の頬をツンツンしていたではないか」
「ヒェッ!」
周りを見渡すと皆、目を逸らした。
マジで?
「帰ります」
「では夕食を食べて帰ってくれ。
酒臭い生き餌は止めておいた方がいい」
「兄様は?」
「ディオスも一緒に食べるよ」
「カーラ、ジェシカさん」
「ララ様に従います」
「では、今日はお言葉に甘えさせていただきます」
【 ウィリアムの視点 】
三ヶ月前、学園を卒業して婚約者選定に入った。
この国は、この時期に婚約をする。
昔、子供の頃から婚約していたが、学園に通う間に心が変わったり、婚約者以外と交わり子種を芽吹かせてしまう者が続出し、揉めて大変だったようだ。
そこで今のように学園を卒業しないと婚約を結べない。通わない場合女だけは16歳から婚約が可能と決められている。
いずれも婚約期間は1年。孕むと即。
カルヴァロス公爵家に相応しい令嬢を探させてコナー公爵令嬢とモンティ侯爵令嬢に絞ったが、もう一人いた方がいいという話になった。
調査書を見ていると一人に目が止まった。
プルシア侯爵令嬢 ララ。
プルシア家は侯爵位で豊かだが、王都に屋敷を構えない珍しい家門だった。
王都からそう遠くないが自然豊かな土地だ。
兄ディオスは優秀で、卒業後に第二王子の側近となった。
妹のララは学園に通わなかった。
そして16歳。
侯爵夫妻に甘やかされ贅沢に暮らしているようだ。
学園にも行かずに甘やかされて贅沢に育った女なら、婚約者候補にしてもクビにできる問題を自ら起こしてくれるだろう。
そして本命の二人の良い的になると踏んで釣書を送ったらすぐに了承の返事が来た。
3名を王都の屋敷に1ヶ月滞在させて、その間に品定めをすべく母が中心となり様々なことをさせ篩にかける。
『部屋割りはいかがいたしますか』
『コナー家とモンティ家は二階の良い客間に。プルシア家は一階の池の前にしてくれ』
普通一階は嫌がる。目の前に花が植えてあり景観が良ければ別だ。
しかも池は鯉を飼っていることもあり、少し臭いがある為、嫌がられる。
しかもかなり質素な部屋だ。普通の貴族をあの部屋には通さない。
『メイドは一人、部屋食も質素でいい』
『かしこまりました』
普通はメイドを二人付けるし、本命には豪華な食事を提供するようにした。
迎えてみると、思った反応は得られなかった。部屋にも文句を言わない。
出迎えをしなくても、挨拶は3名揃ってからと言っても、行動制限も文句を言わない。
本命二人には居れば両親と私が出迎えたし、挨拶もすぐにした。
本命二人は私と両親に贈り物を用意してきた。あの子は逆に使用人にだけ土産を買ってきた。
食事も文句を言わない。
かなり荷物が少なかったらしい。
カルヴァロス家に買わせるためかと思ったらそうではなかった。
何故か平民向けのワンピースを着ているという。
買ってやると言わせようとしているのか?
あの子に付けたメイドと連れてきた3人と出かけて昼食を食べているようで、メイドのジェシカがすっかりあの子に懐いたようだ。
まあ、私や本命2人と顔を合わせれば本性が出てくるだろう。
そう思ったが、意外な本性だった。
平民が着るようなワンピースを着て食堂に現れたララ嬢は小柄で可愛い容姿をしていた。
少し垂れ目の大きな瞳は薄紫なのか薄桃色なのか判断がつかない色でキラキラと輝いていた。
摘みたくなりそうな小さな鼻、子供用のカトラリーに変えさせなくてはならないかと思うような小さな口。手も小さい。
ストロベリーブロンドの髪を後ろで一つに纏めている。飾り気も化粧っ気も無いのに可愛い。
マナーは完璧。所作も本命二人よりも美しく優雅だ。
私達にはほぼ無表情だが、給仕の使用人には愛想笑いを浮かべる。
酒も飲まないようだ。
特技も無いと堂々と言って何のアピールもしてこない。
デザートに移ると、コナー公爵令嬢が先制攻撃をしたが撃沈。
モンティ侯爵令嬢も続いて撃沈。
これには両親も私も使用人達も驚いた。
明日剣術大会を見に行く!?
何をしに行くんだ!あそこは出会いの場でもある。婚約者候補の其方が行く場所ではない!
どうしても行きたいなら仕方ない。行くつもりはなかったが2枚押さえていたチケットがある。連れて行ってやろう。まだ16歳だから仕方ない。
なのに断られた。
私の誘いを断った!?
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