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我慢するアンナ
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お父さん、お母さん。ごめんなさい。私は一見神のような悪魔に捕まるのは二度目なんです。
子爵邸に呼ばれただけで緊張している両親は、子爵と大奥様が入室すると硬直し、ルイ様が入室するとポカンと口を開けた。
ラ「呼びたててすまない。実は大事な話があって来てもらった。彼は私の側近でこの領地の主オートウェイル侯爵家の四男で、今や領主の末弟のルイだ」
ル「お義父上、お義母上、ルイ・オートウェイルと申します。お会いできて光栄です」
母「(え?私達のこと?)」
父「(違うだろう。侯爵家のご令息が俺達を“お義父上”などと呼ぶはずがない)」
母「(そ、そうよね。でも子爵様に言ったんじゃないでしょう?私達平民には見えない誰かがいるのかしら)」
父「(かもしれないがどうしたらいいのだろう)」
お父さん、お母さん。聞こえていますよ。分かります。その戸惑い。
ラ「ルイ。ちゃんと打ち合わせ通りにしなさい」
ル「僕はアンナを愛しています。アンナと婚姻をして、この子爵邸に住みます。是非お義父上とお義母上にも賛成していただきたいのです」
長い沈黙の後、お父さんは私を見た。
父「アンナ。貴族というだけで困難なのに侯爵家だぞ?」
私「そうですね」
父「“そうですね”じゃない!」
ル「お義父上、アンナに強く言うのは止めてください」
ラ「気持ちはよく分かる。父親として平民の娘が侯爵家の息子と婚姻など、辛い思いをするのは目に見えていると言いたいのだろう。
アンナはルイを愛していない。だがルイに望まれた以上はもう逃げられないのだよ」
貴族が望んだのに平民が拒否なんて、それこそ普通はできないのだ。
ル「それに、僕はアンナの前の婚約者とは違って、アンナの味方です。もし僕がアンナに刺されても、アンナが刺していないと言えば信じて味方をします。
アンナが他の男に心を寄せたり逃げたりしない限りは」
母「侯爵家の皆様の賛成を得られたらルイ様を歓迎します」
ル「ありがとうございます。捩じ伏せますのでご心配なく」
駄目だ…嵐に突入するのは避けられないのね。
じゃあ、とっておきを話すことにしよう。
私「その前に、皆様に告白しなければならないことがあります。その上でルイ様は私とのことを進めるのか、もう一度考えてみてください」
サンドラに騙され、ブリアックにフラれた後、高熱を出して寝込んだ時に一見神のような悪魔らしき者とのやりとりを話した。
そして私がシスター2人とサンドラとブリアックに何をしたのかも話した。
父「呪いをかけたということか」
私「そうなります」
母「殺してはいないのね?」
私「はい。人の苦痛がお好きらしくて」
ラ「まだそんな能力が?」
私「もう印は消えました。使えないはずです」
ル「やっぱりアンナは選ばれし者なんだ。最高だよ」
私「……」
ラ「ルイの気持ちは逆に高まったようだから、あとは侯爵家次第ということでよろしいか」
父「は、はい」
お父さんは帰り際に、“今度は国を出なきゃいけないかもな”と呟いていた。
侯爵家の許可を取らずに話は進んでいく。
先ず、子爵が別棟を建ててくれると言ったので建築が始まった。
ルイ様が、子爵邸に夫婦部屋をもらった方が私を監視できていいと言ったが、子爵様が“出会いがあるかもしれない屋敷に?心配じゃないのか? 子を作るのだろう?アンナの声を聞かせてもいいのか?”と言われ考え込んだ。
“お言葉に甘えさせていただきます。別棟の使用人は全員三十代後半以上の女性のみ。寝室は防音でお願いします”
私は懸命に“ご勘弁を!”と言ったのだけど、子爵様は微笑んだ。つまり諦めろという意味だった。
侯爵家に反対されて絶対無駄になる。
見取り図を見せてもらったら、私の部屋がなかった。かなり大きな部屋があって、そこで全てを終えられる。浴室もトイレもクローゼットあり、食事をするテーブルもソファも置くことになっていた。そして大きなベッド。
私、顔も芋並みだし、身体も同じなんだけど。
夜、ルイ様の部屋に行き交渉してみることにした。
「ルイ様、私室が欲しいです」
「なぜ?」
「別棟は広いのですから、」
「広くない」
「私には豪邸です」
「駄目だ。夫婦の部屋の中で必要な物を用意させる」
「ルイ様!」
「僕と距離を取りたいというのか?」
「わ、私は平民の中でも平凡です。身体も…魅力的ではありません」
「こっちにおいで」
手を引かれると、ソファの上に座るルイ様の上に座らされた。
「ルイ様っ」
「僕を何だと思っているんだ?
豊満な胸と引き締まった細い腹の女を好んで抱く男だと言いたいのか?」
「でもっ」
「アンナが僕の上で暴れるから勃ってきた。分かるだろう?」
「っ!!」
「アンナの匂いも大好きだ。それだけで反応してしまう。
例え板のように胸が無くても腹がブヨブヨしていようとかまわない。アンナが健康ならそれでいい」
「でもっ」
「アンナが元婚約と僕を比べたから 自分も他の女と比べられていると思ったのだろう?」
「はい?」
「幼馴染で恋人で婚約者。それに貴族と違って貞操云々は、」
「待ってください。私はブリアックとは白いままです!」
「ああ、この世の全ての“ブリアック”を始末しても足りない。その名は二度と口にしないでくれ」
「んっ」
「はぁっ、アンナ」
「えっ?えっ、えっ!?」
「待てなくなった」
「ルイ様っ!」
そのままルイ様に純潔を奪われた。
ぎこちなかったけど とても優しくしてくれたのは分かった。
“ごめんね、痛いよね。でもコレが小さいと後でアンナがガッカリすることになるから コレのサイズは仕方ないんだ。慣れるまで我慢して”
何故ガッカリすることになるのか疑問だったが、痛過ぎてそれどころではなかった。だけど世の女性はこれに耐えて子を産んでいると思えば、私も耐えるしかない。
ルイ様は翌日と翌々日の私の勤務を休みにして欲しいと子爵様に願い出ると言って部屋を出た。
戻ると書類を抱えていた。
「僕のせいだと言ったら、罰をもらったよ」
とニコニコしていた。
子爵邸に呼ばれただけで緊張している両親は、子爵と大奥様が入室すると硬直し、ルイ様が入室するとポカンと口を開けた。
ラ「呼びたててすまない。実は大事な話があって来てもらった。彼は私の側近でこの領地の主オートウェイル侯爵家の四男で、今や領主の末弟のルイだ」
ル「お義父上、お義母上、ルイ・オートウェイルと申します。お会いできて光栄です」
母「(え?私達のこと?)」
父「(違うだろう。侯爵家のご令息が俺達を“お義父上”などと呼ぶはずがない)」
母「(そ、そうよね。でも子爵様に言ったんじゃないでしょう?私達平民には見えない誰かがいるのかしら)」
父「(かもしれないがどうしたらいいのだろう)」
お父さん、お母さん。聞こえていますよ。分かります。その戸惑い。
ラ「ルイ。ちゃんと打ち合わせ通りにしなさい」
ル「僕はアンナを愛しています。アンナと婚姻をして、この子爵邸に住みます。是非お義父上とお義母上にも賛成していただきたいのです」
長い沈黙の後、お父さんは私を見た。
父「アンナ。貴族というだけで困難なのに侯爵家だぞ?」
私「そうですね」
父「“そうですね”じゃない!」
ル「お義父上、アンナに強く言うのは止めてください」
ラ「気持ちはよく分かる。父親として平民の娘が侯爵家の息子と婚姻など、辛い思いをするのは目に見えていると言いたいのだろう。
アンナはルイを愛していない。だがルイに望まれた以上はもう逃げられないのだよ」
貴族が望んだのに平民が拒否なんて、それこそ普通はできないのだ。
ル「それに、僕はアンナの前の婚約者とは違って、アンナの味方です。もし僕がアンナに刺されても、アンナが刺していないと言えば信じて味方をします。
アンナが他の男に心を寄せたり逃げたりしない限りは」
母「侯爵家の皆様の賛成を得られたらルイ様を歓迎します」
ル「ありがとうございます。捩じ伏せますのでご心配なく」
駄目だ…嵐に突入するのは避けられないのね。
じゃあ、とっておきを話すことにしよう。
私「その前に、皆様に告白しなければならないことがあります。その上でルイ様は私とのことを進めるのか、もう一度考えてみてください」
サンドラに騙され、ブリアックにフラれた後、高熱を出して寝込んだ時に一見神のような悪魔らしき者とのやりとりを話した。
そして私がシスター2人とサンドラとブリアックに何をしたのかも話した。
父「呪いをかけたということか」
私「そうなります」
母「殺してはいないのね?」
私「はい。人の苦痛がお好きらしくて」
ラ「まだそんな能力が?」
私「もう印は消えました。使えないはずです」
ル「やっぱりアンナは選ばれし者なんだ。最高だよ」
私「……」
ラ「ルイの気持ちは逆に高まったようだから、あとは侯爵家次第ということでよろしいか」
父「は、はい」
お父さんは帰り際に、“今度は国を出なきゃいけないかもな”と呟いていた。
侯爵家の許可を取らずに話は進んでいく。
先ず、子爵が別棟を建ててくれると言ったので建築が始まった。
ルイ様が、子爵邸に夫婦部屋をもらった方が私を監視できていいと言ったが、子爵様が“出会いがあるかもしれない屋敷に?心配じゃないのか? 子を作るのだろう?アンナの声を聞かせてもいいのか?”と言われ考え込んだ。
“お言葉に甘えさせていただきます。別棟の使用人は全員三十代後半以上の女性のみ。寝室は防音でお願いします”
私は懸命に“ご勘弁を!”と言ったのだけど、子爵様は微笑んだ。つまり諦めろという意味だった。
侯爵家に反対されて絶対無駄になる。
見取り図を見せてもらったら、私の部屋がなかった。かなり大きな部屋があって、そこで全てを終えられる。浴室もトイレもクローゼットあり、食事をするテーブルもソファも置くことになっていた。そして大きなベッド。
私、顔も芋並みだし、身体も同じなんだけど。
夜、ルイ様の部屋に行き交渉してみることにした。
「ルイ様、私室が欲しいです」
「なぜ?」
「別棟は広いのですから、」
「広くない」
「私には豪邸です」
「駄目だ。夫婦の部屋の中で必要な物を用意させる」
「ルイ様!」
「僕と距離を取りたいというのか?」
「わ、私は平民の中でも平凡です。身体も…魅力的ではありません」
「こっちにおいで」
手を引かれると、ソファの上に座るルイ様の上に座らされた。
「ルイ様っ」
「僕を何だと思っているんだ?
豊満な胸と引き締まった細い腹の女を好んで抱く男だと言いたいのか?」
「でもっ」
「アンナが僕の上で暴れるから勃ってきた。分かるだろう?」
「っ!!」
「アンナの匂いも大好きだ。それだけで反応してしまう。
例え板のように胸が無くても腹がブヨブヨしていようとかまわない。アンナが健康ならそれでいい」
「でもっ」
「アンナが元婚約と僕を比べたから 自分も他の女と比べられていると思ったのだろう?」
「はい?」
「幼馴染で恋人で婚約者。それに貴族と違って貞操云々は、」
「待ってください。私はブリアックとは白いままです!」
「ああ、この世の全ての“ブリアック”を始末しても足りない。その名は二度と口にしないでくれ」
「んっ」
「はぁっ、アンナ」
「えっ?えっ、えっ!?」
「待てなくなった」
「ルイ様っ!」
そのままルイ様に純潔を奪われた。
ぎこちなかったけど とても優しくしてくれたのは分かった。
“ごめんね、痛いよね。でもコレが小さいと後でアンナがガッカリすることになるから コレのサイズは仕方ないんだ。慣れるまで我慢して”
何故ガッカリすることになるのか疑問だったが、痛過ぎてそれどころではなかった。だけど世の女性はこれに耐えて子を産んでいると思えば、私も耐えるしかない。
ルイ様は翌日と翌々日の私の勤務を休みにして欲しいと子爵様に願い出ると言って部屋を出た。
戻ると書類を抱えていた。
「僕のせいだと言ったら、罰をもらったよ」
とニコニコしていた。
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