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メイド希望なのに何で?

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あの…私、メイド希望なんですけど。

「さあ、次は歴史の授業を始めます。教科書の12頁を開きましょう」

侯爵様が帰ってきて、今までの授業はダンス以外終了し、代わりに学園で習うような授業が始まった。

必要無いのでは?と聞いてはみたが、ルセール侯爵家では役割によって学歴を求めていると説明を受けた。
侯爵や来客に接するようなメイドは王立学園じゃなくても二年制以上の学校で卒業していないと就けないようで、今のままでは主人やお客様が使う部屋以外の部屋や廊下水回りや建物の外の掃除、洗濯、繕い物、調理の下準備や皿洗いなどしか任せてもらえないと言われた。
それでは一生 預かった毒薬を使えない。

長引けば長引くほど監禁は長くなるし、お祖父様達は堪えるだろう。

それに任務をやり遂げたなら私には必要の無い知識になる。


ティータイムにお願いをしてみることにした。

「侯爵様」

「“アレン”」

「…アレン様」

「どうした」

「やっぱり、今受けている授業は必要ありません。
私には働いて稼ぐという目的がある以上、何も生み出さない日をおくるわけにはまいりません。
お願いです。仕事に就かせてください」

「駄目だ」

「……」

「お父上から手紙が届いているぞ」

「父からですか!?」

「ここで読みなさい」

侯爵から手紙を受け取り開封した。

“私達の可愛いクレア

クレアには辛い思いをさせてすまない。
こちらは信頼が築けたせいか、監禁から
軟禁に変わったんだ。

使用人達は外出可能で、
私達4人も敷地内なら今まで通り
自由にさせてもらえるようになった。
食事も何もかもいつも通り。

任務が長期戦とは知らなかった。

ソレは一度きりしか使えないのだから
最良のチャンスを掴むために
クレアもゆっくり信頼を得なさい。
ついでに勉強もするように。

父より”

……え? 長期戦? 勉強?
そうなの!?

「なんて書いてあったんだ」

「元気だということと、しっかり勉強もしなさいと」

「じゃあ問題ないな。しっかり勉強しなさい」

「でも、必要でしょうか」

「必要に決まっている。
私や客人が思い出せなかった時や間違えていたときに、そっと耳打ちなどで教えたりもするからだ」

そうなのね。

「分かりました。ありがとうございます」


そしてやっと制服が届いた。

「え? これが制服ですか?」

「そうだ」

「侯…アレン様、この袖の無いドレスのようなものは…」

「マッサージをすると言っていたじゃないか。
袖があると不便だろう」

メイド服の袖を捲るだけなのに…

「何故ドレスに?」

「メイド服に袖無しは変だから、変じゃなさそうなデザインに変えた」

…もう受け入れるしかない。

「他のワンピースドレスは」

「屋敷で着るといい」

そうじゃなくて!

「ありがとうございます。ですが私はメイド採用ですから」

「だけど授業もある。ダンスもあるから作らせた。
……そうか。気に入らなかったか」

「私にはもったいないくらいに素敵でした」

「じゃあ、問題ないな」

負けた。
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