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イーヴ・フェリング
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【 カイゼルの父 イーヴの視点 】
我がフェリング侯爵家は裕福と言える。
1女2男に恵まれ順風満帆だった。
長女は伯爵家へ嫁ぎ、次男は宮廷官僚補佐に。長男は跡継ぎとして育てた。
長男にはラクロワ侯爵令嬢と婚約させた。
事業を結びつける政略的なものだった。
ラクロワ領で採れる湧水を使って酒を作っている。他の水で作った酒と比べたら口当たりが違い二日酔いをしない酒に仕上がった。
お陰で高級酒として販売できている。
他家は知らないがフェリング家の方が頼んでいる立ち位置だ。ラクロワ家にとって湧水は売らなくてもかまわない、売上はおまけ程度のものなのだ。
次期ラクロワ侯爵のロビン殿の事件は私も見ていた。噂で聞くのと実際に見るのとは全く違う。
溺愛する妹を傷付けた令嬢を無表情で殴り続けた。令嬢が泣いたり叫んだりする隙を与えることなく顔面を殴り続け、周囲の人間は時が止まったかのように体が動かない。
席を外していたラクロワ侯爵が、娘が令嬢に突き落とされたと聞いて戻ってきてやっと止められた。
事情を聞くラクロワ侯爵に冷静に事情を話しながらテーブルの上の水で濡らしたハンカチで手に付いた血を拭っていた。
令嬢の両親はロビン殿が怖くてやり過ぎだと抗議できないでいた。令嬢の場合は明らかに死ぬかもしれない行為だったせいもあった。
あの子が次期ラクロワ侯爵か…
屋敷に戻り、妻と長女にしっかりとラクロワ家を敵に回すなと忠告した。
およそ10年後、湧水の件もありアリエル嬢とカイゼルの婚約を打診した。
最初断られたが隣接する領地だからと何度か話をするうちに、婚姻前に見直しをして婚姻するか解消するかのどちらかになっても構わないなら婚約してもいいと返事をもらった。
そして低価格で湧水を提供してもらえるようになった。
なのにカイゼルは浮気をしていた。
その後、親しくなるどころかアリエル嬢からは冷たさを感じて不安になった。
愛人の件もあり、当主同士でアリエル嬢の意見を取り入れて契約書を交わした。
アリエル嬢が恋人を作ることを黙認するのも契約のひとつだった。
婚姻前になり解消かと思ったが、アリエル嬢は敷地内別居で別棟はラクロワ家が建てた。
フェリング家の金はあてにしておらず、全く興味がないことが分かった。
カイゼルが愛人を違う別棟に住まわせようとも。子を成そうとしていようとも。
婚姻後、アリエル嬢は母方の祖母の遺言により子爵位と領地と財産を受け継いだ。
王都の貴族街に2棟店舗用の建物と、王都内に屋敷3軒、貸し部屋5つを持つ資産家になった。
他にも受け継いだものがあるとラクロワ侯爵が話していた。
そんなに裕福な祖母だったのなら金やアクセサリーや調度品なども残されたと容易に想像できた。
そして子爵領で希少石の鉱脈発見ともうひとつ何かを発見してさらに富を得ていると噂を耳にした。何かは知ることができなかった。
幸運なアリエル嬢自身が、ラクロワ家から離れても富豪だ。
息子のことが好きでもないアリエル嬢にとってフェリング家などいつでも捨てていい存在なのだろう。
なのに……
「後2年あるので私は貴方を侯爵と呼び、アリエルの夫はご子息と呼ばせていただきますが構いませんか」
「構いません」
ロビン殿から手紙をもらいラクロワ家に来ている。生きた心地がしない。
「侯爵、わたしも今年中に譲位されます。先行して当主の役目を少しずつ果たしていますので、私の名でお呼び立てしました。
先日、知人が夜会で見聞きしたことを報告したいと訪ねて来たのです。
どうやらご子息が、友人達相手にアリエルを侮蔑した話題を口にしていたそうです。
会場で話していたので偶然側にいた知人の耳に入ったそうです」
「も、申し訳ございません」
「あの婚前契約はご子息の意を汲んで作られたものですよ。それを叶えて差し上げているアリエルに何の不満があるのでしょう」
「えっ?」
「あの時、婚約を解消しろと言ったのですが、無害なら構わないと婚姻したのです。
己の妻を社交場で侮蔑するなど正気ですか?両家に泥を塗る行為ですよ」
「申し訳ございません!」
「アリエルはこの件も関心がないようで放っておいて欲しいと言っていました。こんなにご子息に興味がないのに何故アリエルが嫉妬してご子息の愛人を虐めたことになっているのでしょうね」
「どういうことでしょう。意を汲んだ婚前契約とか虐めとか」
「ご存知ないのですか」
そこから聞かされた話はとんでもないものだった。
我がフェリング侯爵家は裕福と言える。
1女2男に恵まれ順風満帆だった。
長女は伯爵家へ嫁ぎ、次男は宮廷官僚補佐に。長男は跡継ぎとして育てた。
長男にはラクロワ侯爵令嬢と婚約させた。
事業を結びつける政略的なものだった。
ラクロワ領で採れる湧水を使って酒を作っている。他の水で作った酒と比べたら口当たりが違い二日酔いをしない酒に仕上がった。
お陰で高級酒として販売できている。
他家は知らないがフェリング家の方が頼んでいる立ち位置だ。ラクロワ家にとって湧水は売らなくてもかまわない、売上はおまけ程度のものなのだ。
次期ラクロワ侯爵のロビン殿の事件は私も見ていた。噂で聞くのと実際に見るのとは全く違う。
溺愛する妹を傷付けた令嬢を無表情で殴り続けた。令嬢が泣いたり叫んだりする隙を与えることなく顔面を殴り続け、周囲の人間は時が止まったかのように体が動かない。
席を外していたラクロワ侯爵が、娘が令嬢に突き落とされたと聞いて戻ってきてやっと止められた。
事情を聞くラクロワ侯爵に冷静に事情を話しながらテーブルの上の水で濡らしたハンカチで手に付いた血を拭っていた。
令嬢の両親はロビン殿が怖くてやり過ぎだと抗議できないでいた。令嬢の場合は明らかに死ぬかもしれない行為だったせいもあった。
あの子が次期ラクロワ侯爵か…
屋敷に戻り、妻と長女にしっかりとラクロワ家を敵に回すなと忠告した。
およそ10年後、湧水の件もありアリエル嬢とカイゼルの婚約を打診した。
最初断られたが隣接する領地だからと何度か話をするうちに、婚姻前に見直しをして婚姻するか解消するかのどちらかになっても構わないなら婚約してもいいと返事をもらった。
そして低価格で湧水を提供してもらえるようになった。
なのにカイゼルは浮気をしていた。
その後、親しくなるどころかアリエル嬢からは冷たさを感じて不安になった。
愛人の件もあり、当主同士でアリエル嬢の意見を取り入れて契約書を交わした。
アリエル嬢が恋人を作ることを黙認するのも契約のひとつだった。
婚姻前になり解消かと思ったが、アリエル嬢は敷地内別居で別棟はラクロワ家が建てた。
フェリング家の金はあてにしておらず、全く興味がないことが分かった。
カイゼルが愛人を違う別棟に住まわせようとも。子を成そうとしていようとも。
婚姻後、アリエル嬢は母方の祖母の遺言により子爵位と領地と財産を受け継いだ。
王都の貴族街に2棟店舗用の建物と、王都内に屋敷3軒、貸し部屋5つを持つ資産家になった。
他にも受け継いだものがあるとラクロワ侯爵が話していた。
そんなに裕福な祖母だったのなら金やアクセサリーや調度品なども残されたと容易に想像できた。
そして子爵領で希少石の鉱脈発見ともうひとつ何かを発見してさらに富を得ていると噂を耳にした。何かは知ることができなかった。
幸運なアリエル嬢自身が、ラクロワ家から離れても富豪だ。
息子のことが好きでもないアリエル嬢にとってフェリング家などいつでも捨てていい存在なのだろう。
なのに……
「後2年あるので私は貴方を侯爵と呼び、アリエルの夫はご子息と呼ばせていただきますが構いませんか」
「構いません」
ロビン殿から手紙をもらいラクロワ家に来ている。生きた心地がしない。
「侯爵、わたしも今年中に譲位されます。先行して当主の役目を少しずつ果たしていますので、私の名でお呼び立てしました。
先日、知人が夜会で見聞きしたことを報告したいと訪ねて来たのです。
どうやらご子息が、友人達相手にアリエルを侮蔑した話題を口にしていたそうです。
会場で話していたので偶然側にいた知人の耳に入ったそうです」
「も、申し訳ございません」
「あの婚前契約はご子息の意を汲んで作られたものですよ。それを叶えて差し上げているアリエルに何の不満があるのでしょう」
「えっ?」
「あの時、婚約を解消しろと言ったのですが、無害なら構わないと婚姻したのです。
己の妻を社交場で侮蔑するなど正気ですか?両家に泥を塗る行為ですよ」
「申し訳ございません!」
「アリエルはこの件も関心がないようで放っておいて欲しいと言っていました。こんなにご子息に興味がないのに何故アリエルが嫉妬してご子息の愛人を虐めたことになっているのでしょうね」
「どういうことでしょう。意を汲んだ婚前契約とか虐めとか」
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