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乗り越えた痛み
しおりを挟む目覚めると カーテンの隙間から陽の光が部屋に差し込んでいた。
少し下腹部が痛い。ユリウスの圧迫感も脈動も力強さも残っている。
「起きた?」
「うん」
痛いところはない?
「少しお腹が痛いかな」
「え!?」
「大丈夫」
ユリウスはメイドを呼んで朝食と薬湯を用意させた。
“他の男を受け入れられる?”
昨夜のユリウスの問いの答えは明確だ。
他の令息がキスをして舌を入れたり、身体を舐め回したり、あんなふうに私の中に入って動くだなんて、想像しようとしてもできない。
「私の初めてを貰ってくれてありがとう」
「……」
「痛くしてごめん」
「……」
「すごく気持ち良かった」
「……」
「エヴリンにも快楽を与えられるように頑張るよ」
「……」
「何か言って。不安になる」
「ユリウス」
「ん?」
「どうしよう」
「エヴリン?」
「他の人とこんなこと出来そうにない」
「しなくていい」
「でも、跡継ぎだから」
「それは私が何とかする」
「何とかするって?」
「エヴリンは私の恋人として浮気せずに学園を卒業してくれたらいい。後は私と両家で話し合う」
「でも…」
「もう決めたんだ。二度と引き下がるつもりはない」
「二度と?」
「互いが跡継ぎだからと、最愛のエヴリンに気持ちを隠した結果、侯爵家の息子にとられた。エヴリンがあいつを好きだというから引き下がって見守った。
エヴリンと恋人の初夜を迎えた今、絶対にもう引き下がらない。だから諦めて大人しく私の恋人でいてくれ」
「ユリウス」
「必ず妻にする」
昼過ぎに、ユリウスはランドール邸に私を送り届け、そのまま父に 私との交際の許可を乞い、一夜を過ごしたことも告げた。
「ユリウス殿…」
「いくつか選択肢はありますが、いずれにしても私はエヴリンを妻にします。絶対にです。
まだエヴリンは実感が無いかもしれません。ですが恋人として世に公表します。
私以上の相手はいないと自負しています。それを証明し続けるつもりです。今までもそうですが、これからもエヴリンの面倒をみて、彼女の不安を取り去って、彼女の気持ちに寄り添います。両家の未来が繋がるよう全力を尽くします」
「信用はしているが、急展開過ぎやしませんか?」
「ダンスを踊っている最中に、最愛のエヴリンからキスを強請られたら我慢なんか止めますよ」
お父様は私を見た。
もう冗談だったなどと言える雰囲気ではない。
「言いました」
「はぁ~。分かりました。後日公爵も交えて話をしましょう」
「感謝いたします」
「避妊薬は飲ませたのですか?」
「はい.まだ学生ですから」
「分かりました」
「直ぐに婚約をしたいのですが」
え?もう?
「公爵と話し合ってから決めましょう」
「エヴリン。男に誘われたり言い寄られたりしたら“婚約者がいます”とはっきり断るんだよ」
「…はい」
「ドネール嬢にも報告して」
「はい」
翌日、セロー公爵とユリウスが来て話し合いをしていた。
お茶の時間を過ぎてから呼ばれると、テーブルの上には婚約の書類が用意してあった。
「お父様、本当にいいのですか?」
「エヴリンがユリウス殿を好きなら署名しなさい」
ペンを持ち署名をし終えるとユリウスが側に来て跪いた。
「エヴリン・ランドール嬢。あなたが5歳のときからずっと愛してきました。これからも間違いなくあなただけを愛します。どうか私と結婚してください。そして婚約者として、夫としてあなたを守らせてください」
ユリウスは私の左手の薬指に美しい輝きを放つ指輪をはめた。
「よろしくお願いします」
立ち上がったユリウスは私の息の根を止めにかかっているのかと思うほど強く抱きしめた。
「夢みたいだ…ありがとうエヴリン。
ありがとうございます、ランドール伯爵」
「分かったから、解放してやってくれ。エヴリンが苦しがっている」
「ご、ごめん」
「婚約当日に圧死するかと思ったわ」
満面の笑みで帰っていくユリウスを3人で見送った。
「おめでとう、エヴリン」
「ありがとうございます、お母様」
「やっとユリウス様の気持ちが通じたのね」
「ご存知だったのですか!?」
「イヤだわ。みんな気付いていたわよ。執着の貴公子。長かったわぁ」
「エヴリンがゼイン殿と婚約しても、ユリウス殿は誰とも婚約しなかったからな」
「一途よねぇ。一切女性関係の噂を聞かなかったもの。縁談が来ると即日断り、言い寄るときっぱり断るし、ダンスさえ踊らないそうよ。浮気の心配は無さそうね」
「ユリウスが浮気したら刺し殺します」
「「……」」
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