【完結】もう愛しくないです

ユユ

文字の大きさ
30 / 34

パトリシア 3

帰ってからママと話をした。

『今日聞いたことは全てが事実と思って接しては駄目よ。もしかしたら誤解や誤報があるかもしれないから』

『でも夫人たちは…』

『私達はいわゆる新興貴族なの。間違ったことを口にして他人に広めたら制裁が待っているわ。

同じ爵位でも家格は違って序列があるの。気を抜いては駄目よ。

他の家は許してもらえても、コルベーヌ家は許してもらえない可能性が高い。

そうなると貴女も私も貴女の父や兄も、兄のお嫁さんや婚約者も酷い目にあうのよ。

得た情報は、外に出すなら確信がないと駄目。自分の目で見たとか裏取をしたとか。

話していいのは夫だけ。茶会の噂話で本当かどうか分からないけどと前置きをするの。

そうすれば気になる情報は夫が調べて活用するわ』


『伯爵夫人の教育とは何でしょう』

『ノーディング夫人に教えを乞うしかないわね』




翌日、次の休みはノーディング家に行って夫人にお願いしようと約束を取り付ける手紙を書いていた。

『お嬢様宛の手紙なのですが、差出人の名前が名前が無くて。
旦那様に先に確認をしてもらいますか』

照明に当てると1枚の紙程度のものしか入っていない。紙は上等なものだ。

『私が見るからいいわ』

開封して手紙を読むと手が冷たくなっていった。


“貴女の婚約者が不審な動きをしています。
公にならないうちに手綱を締めてください。

貴女にはその権利があり、婚約者には貴女に誠実である義務があるはずです。

特に17日は監視が必要です。突然伯爵邸に訪ねることをお勧めします。”


17日といえばデビュータント。

食堂の本館で3年生の利用禁止の紙が貼られていた。

休み時間に教室にいない事もあった。

まさか!




17日、突然ノーディング家を訪ねると、パーティー用の服を着たデニスが馬車に乗るところだった。

「デニス!!」

「パトリシアっ!」

仮面が剥がれた。

「どこに行くの」

「友人のパーティに呼ばれている」

「招待状を見せて」

「親しい友人でそんなものはいらない」

「ならご友人の屋敷まで見送るわ」

「…それは契約に無い」

冷たい瞳。笑顔の仮面が外れたらどんな目をしていたのかはっきりとわかった。

「デビュータントに行くのは知ってるわ。
意中の令嬢がいるのね。それは契約違反よ」

「何なんだよお前は!!
まるでお前に囲われた愛人じゃないか!」

「そんなことない! 大事に愛してきたわ!」

「金で縛って言うことを聞かせていただけだろう!好き勝手に振る舞って…私がどんな思いでいたか!

ちょっとの自由も許されないなら結婚契約じゃなくて奴隷契約に書き換えて、借金じゃない金を出せ!

お前がしているのは飼い殺しだ!
私は人形に見えるか?犬に見えるか?奴隷に見えたのか!?」

「ううっ…酷い」

「誰のエスコートもしていないしパートナーになってもいない。セックスもしていない。
貢ぎ物もしていないから不貞ではない。

不満ならお前の有責だ。好きに解消しろ」




それでも行かせたくなくてデニスにしがみついた。

「お願い行かないで!デニスが好きなの!他の女に心が向くなんて耐えられない!」

「心は自由になるわけがないだろう。
書かれたことに違反はしていない。

そもそも借入ってなんだよ。
金貸との違いは利息が有るか無いかの差なのに、なんでこんな束縛をされなくちゃならないんだ!酷いのはどっちだ!

全額返さなくていい援助なら納得できるよ。

私の立場がお前だったらどうだ?
好きでもない男にベタベタされて付き纏われて束縛されて、学園も休みも一緒で、異性と話すと不機嫌になって怒り出す男を我慢して得られるのは利息分だ。他は全額返さないとならない。

そんなんで相手の男を愛せるか?」

「あ…」

「出かける費用も贈り物の代金も全て借金に変わるんだ。こんなの詐欺だろう!

逆の立場ならどうだ。好きでもない男とのデート代やプレゼント代を借金してお前が支払わなければならないんだぞ」

「っ……ごめんなさい」

「離せ」

「デニス…ううっ」

「離せ!!」

振り払われそのままデニスの手は高く上がった。叩かれる!そう思った。

「デニス!何をしているの!」

「チッ 母上」

「パトリシアさん、デニスがごめんなさい」

「母上、私は契約をしっかり守ってきました。なのに彼女が契約以上のことを求めたのです。

私は限界です。これ以上契約外のことをするつもりはありません」

「デニス!」

「黙って従っていればこうやって付け上がる。最低だ。

これからは、きっちりと契約に書かれた事だけしかしない。

愛想良くなどと書いていないからもう笑顔は止める。纏わりつく事を許容しろなどと書いていないから止めてもらう。

婚約者の義務?お前は果たせてると思っているのか?幼い子供みたいに振る舞って。

貴族の令嬢はお前みたいに腕に絡んでベタベタしない。はしたないと言われる行為だと教わらないのか?

学校は平等とは言いつつもそうではない。ただ私と話しただけでお前が牽制した相手はコルベーヌ家よりも格上の者達ばかりだ。

学校から一歩でも出たら、が待っているのが分からないのか?

令嬢達が笑顔だからって、許されていると思うなよ?顔に出さないだけで、今後社交でどう虐めようか考えてるからな」

「ううっ…」

「親が死んだわけでもないのに泣きすぎだ。貴族令嬢ではあり得ない」

「デニス!いい加減にしなさい!」

「母上、内容は間違っていましたか?
これから伯爵夫人の教育をする時に、今の私の指摘を否定できますか?」

「それは…」

「はぁ。社交に出せるまでに何年かかるだろうか。
言っておくが、婚姻後は伯爵夫人として振る舞える様になるまで必須な社交以外は外に出さないからな。

子供も作らない。
今のままじゃ、パトリシアが2人に増えるだけだ。子に伯爵家の子としての教育ができるようになるまで手は出さない。

初夜だけは義務だから避妊薬を使う」

「デニス…」

「暴言などと思うなよ。お前がしてきた事を話し、貴族として当たり前のことを指摘しているだけだからな。聞いてて暴言だと思うと言うことはお前が聞くに耐えない事をしてきた証拠だ。

事実しか話していないのだからな」




あなたにおすすめの小説

今更ですか?結構です。

みん
恋愛
完結後に、“置き場”に後日談を投稿しています。 エルダイン辺境伯の長女フェリシティは、自国であるコルネリア王国の第一王子メルヴィルの5人居る婚約者候補の1人である。その婚約者候補5人の中でも幼い頃から仲が良かった為、フェリシティが婚約者になると思われていたが──。 え?今更ですか?誰もがそれを望んでいるとは思わないで下さい──と、フェリシティはニッコリ微笑んだ。 相変わらずのゆるふわ設定なので、優しく見てもらえると助かります。

縁の鎖

T T
恋愛
姉と妹 切れる事のない鎖 縁と言うには悲しく残酷な、姉妹の物語 公爵家の敷地内に佇む小さな離れの屋敷で母と私は捨て置かれるように、公爵家の母屋には義妹と義母が優雅に暮らす。 正妻の母は寂しそうに毎夜、父の肖像画を見つめ 「私の罪は私まで。」 と私が眠りに着くと語りかける。 妾の義母も義妹も気にする事なく暮らしていたが、母の死で一変。 父は義母に心酔し、義母は義妹を溺愛し、義妹は私の婚約者を懸想している家に私の居場所など無い。 全てを奪われる。 宝石もドレスもお人形も婚約者も地位も母の命も、何もかも・・・。 全てをあげるから、私の心だけは奪わないで!!

殺された伯爵夫人の六年と七時間のやりなおし

さき
恋愛
愛のない結婚と冷遇生活の末、六年目の結婚記念日に夫に殺されたプリシラ。 だが目を覚ました彼女は結婚した日の夜に戻っていた。 魔女が行った『六年間の時戻し』、それに巻き込まれたプリシラは、同じ人生は歩まないと決めて再び六年間に挑む。 変わらず横暴な夫、今度の人生では慕ってくれる継子。前回の人生では得られなかった味方。 二度目の人生を少しずつ変えていく中、プリシラは前回の人生では現れなかった青年オリバーと出会い……。

「最高の縁談なのでしょう?なら、かわってあげたら喜んでくれますよね!」

みっちぇる。
恋愛
侯爵令嬢のラリアは20歳。立派な嫁きおくれである。 というのも、義母がなかなかデビューさせてくれないのだ。 なにか意図を感じつつも、周りは義母の味方ばかり。 そん中、急にデビュタントの許可と婚約を告げられる。 何か裏がある―― 相手の家がどういうものかを知り、何とかしようとするが、非力なラリアには何も手段がない。 しかし、そんな彼女にも救いの手が……?

王女殿下のモラトリアム

あとさん♪
恋愛
「君は彼の気持ちを弄んで、どういうつもりなんだ?!この悪女が!」 突然、怒鳴られたの。 見知らぬ男子生徒から。 それが余りにも突然で反応できなかったの。 この方、まさかと思うけど、わたくしに言ってるの? わたくし、アンネローゼ・フォン・ローリンゲン。花も恥じらう16歳。この国の王女よ。 先日、学園内で突然無礼者に絡まれたの。 お義姉様が仰るに、学園には色んな人が来るから、何が起こるか分からないんですって! 婚約者も居ない、この先どうなるのか未定の王女などつまらないと思っていたけれど、それ以来、俄然楽しみが増したわ♪ お義姉様が仰るにはピンクブロンドのライバルが現れるそうなのだけど。 え? 違うの? ライバルって縦ロールなの? 世間というものは、なかなか複雑で一筋縄ではいかない物なのですね。 わたくしの婚約者も学園で捕まえる事が出来るかしら? この話は、自分は平凡な人間だと思っている王女が、自分のしたい事や好きな人を見つける迄のお話。 ※設定はゆるんゆるん ※ざまぁは無いけど、水戸○門的なモノはある。 ※明るいラブコメが書きたくて。 ※シャティエル王国シリーズ3作目! ※過去拙作『相互理解は難しい(略)』の12年後、 『王宮勤めにも色々ありまして』の10年後の話になります。 上記未読でも話は分かるとは思いますが、お読みいただくともっと面白いかも。 ※ちょいちょい修正が入ると思います。誤字撲滅! ※小説家になろうにも投稿しました。

婚約者は妹のような幼馴染みを何より大切にしているので、お飾り妻予定な令嬢は幸せになることを諦めた……はずでした。

待鳥園子
恋愛
伯爵令嬢アイリーンの婚約者であるセシルの隣には『妹のような幼馴染み』愛らしい容姿のデイジーが居て、身分差で結婚出来ない二人が結ばれるためのお飾り妻にされてしまうことが耐えられなかった。 そして、二人がふざけて婚姻届を書いている光景を見て、アイリーンは自分の我慢が限界に達そうとしているのを感じていた……のだけど!?

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

夏の眼差し

通木遼平
恋愛
 伯爵令嬢であるティナの婚約者とティナの妹が恋仲になり、ティナは婚約を解消することになる。婚約者に対して特に思い入れはなかったが、姉妹の婚約のすげ替えについての噂と勝手なことばかり言う妹に気疲れしたティナは、昔から彼女を気にかけてくれていたイライザ夫人の紹介で夫人の孫娘リネットの話し相手として雇われることになった。  家から離れ、リネット共に穏やかな日々を過ごすティナは、リネットの従兄であるセオドアと出会う。 ※他サイトにも掲載しています